スヴェアはスケルトンの2人を連れ、浮浪忍者の里へと帰る。
シェク領を抜け……
ホーリーネーション領を抜け……
エレマイアの旧知の友人を連れ……
浮浪忍者の里へ。
これより先、クロト達の物語より、時計の針はやや先へと進む。
第二章:スワンプ編⑥ 番外編・浮浪忍者の里
ロット:浮浪忍者・ハウンズ間の会合
「交代要員は上手く潜り込めた?」
「ああ。新人が2人な。
ハモ姐んトコのスヴェアってのは入れ替わりで里に報告に戻ったみてーだ」
後は姉御に任せて、俺達は挨拶回りを続けるぞ」
「んもー、姉さんだけでクロトくん追いかけ回すとか、ズルいー!」
「そんなだから追跡任務から外されるんだろ……」
「ほら、さっさと片付けて会合の続きな!」
「はぁい」
パスクリとカイネンは、浮浪忍者の使者としてスワンプを訪れ、対ゾンビ同盟を組む打ち合わせを開始していた。
ハウンズとの会合の途中、ある家屋に泊まる事になるが……
(ま、これは……)
(こっそり持ち帰っちゃいますか!)
マッドタウン:浮浪忍者・ツインブレード間の会合
パスクリとカイネンが次に訪れたのは、マッドタウン。
引き続き、ツインブレード首領との会合を行っていた。
「異存はない。
ホーリーネーションが同盟を拒絶している以上、今まで通り、お前達との関係は維持して行くつもりだ」
「ありがとうございます。では、ステイヤー部隊の編成も進めていく、という事で」
「ああ、それがな……
少々面白い事になってな」
「と、言いますと?」
「シャークの町で、同盟とは無関係にステイヤー部隊が既に組織されつつある。
ビッグ・グリムの新しい子分が、勝手に食い詰め者を組織化してハウンズの下部組織を作りやがった」
「まあ! その方は特務隊を潰すつもりですの?!」
「いや、それがまぁ、なんというか……
そのグリームって女、件のクロト隊の一員らしくてな」
「まあ! もしかして、若い女性ですか!?」
「え? ああ、そうだが……」
「くっ!!」
「このグリームってのがまた、実に度胸のいい面白いヤツでな。
こいつ自身は感染者でもゾムネジア患者でも無いただの一般人でしか無いんだが……
感染も恐れず自らゾンビの処理を部下に指導し、一週間やそこらであっという間にシャークに始末屋稼業を定着させやがった。
今では部下を走り回らせ、自分は感染しないまま生き延び、悠々自適で管理職に徹して楽に儲けてるとか……
まったく、頭のいい女だ」
「まあ! 耐性の無い方がゾンビの臓物の処理をしていて……
よく今まで持っていましたわね!」
「ああ、本当に運のいい女だ」
浮浪忍者の里:修行中のスヴェア達
そんなある日の事……
「なっ!? おい!敵が建物ノナカニ!!」
「はぁっ?! い、いつの間に入り込まれた?!」
「敵襲! 敵襲ッ!! 警笛を鳴ら……ぐはっ!!」
「衛兵は何をしていた!? まさか……!」
里の衛士は壁外でとっくに戦闘中。
それでも尚防ぎきれない、途方も無い数のゾンビが里の中に雪崩込んでいた。
訓練設備で修練中だったスヴェア達は完全に包囲されてしまっていた。
「兄者!」
「むっ!? 出番でござるか!?」
忍者兄弟アイメルト&トゼッリが、一早く迎撃に飛び出して行く。
「我々がフロントラインを形成しよう」
「シンパイナイ、頑丈な私達なら、盾役として機能します」
「少しでも時間をカセグ。 倒れたゾンビの始末ヲタノム」
エレマイア、ベッカム、そして、2人の旧知の友人、バーン。
三人のスケルトンが前線へと駆け出していく。
「ああ! 頼む!
私は特務隊の指揮を執る!」
敵の群れの中を駆け抜け、スヴェアが酒場に駆け込む。
「武器を取れ! 装備を整えろ! 里のステイヤー部隊の初仕事だ!」
レヴァ ナイフ ピア ディグナ レッパ ヘルザー
6人の「なり損ない」達がスヴェアの部下として、何の訓練も受けないまま実戦に駆り出される事となる。
否も応もない。
逃げ場は無い。
戦わなければ生き残れない。
「クロト殿の戦い方を思い出すのだ! 忍ッ!!」
「おお! 孤立した弱兵を狙って各個撃破でござるよニンニン!」
「わ、私達でも、トドメを刺すくらいは!」
地獄の夜が始まった。
里の中も、外も、ゾンビで埋め尽くされた。
「このような肉人形、何体来た所で……!!」
浮浪忍者首領のモールだけは敵を切り倒し続けていたが、気付けば周囲の上忍達は次々倒れ、数える程しか残っていない。
「ダメです! どこも敵だらけ…… トドメを刺す事も……!!」
「ひいっ!? あああぁっ!!」
「下がれ! このままだと全滅する!!」
「でも、どこに逃げるって言うんです!?」
「クッ……!!」
「カズガ多すぎる! コノママデハ、押し切られますよ!」
「大丈夫か、忍者キョウダイ!」
「せ、拙者らは断じて忍者などでは無いのでござるよニンニン……」
「お、弟よ…… ま、まだ生きておるか……」
トゼッリは片足を失い、大量の血を流していた。
一人、また一人と倒れていく、設立されたばかりのスヴェア隊。
「ガガガガガピー! アアア、アトハ頼み、ます……」
「スケルトン、ツーダウン。後は私が残るのみか……」
バーンは隙を見て攻撃を仕掛けつつ、倒れたゾンビにとどめを刺して回る。
スヴェアは新人達の盾になりつつ、じわりじわりと後退を余儀なくされていた。
「砲座だ! 砲座に走れ! 味方が壊滅し、砲手が一人もいない!」
「で、でも隊長! 私達、あんなの使った事が……」
「ぐっ!! がはっ!!」
「隊長!!」
「このザマだ! 近接戦闘ではどうしようもない!
私達三人で防壁上のクロスボウ砲座を使う!
誤射を恐れるな! 今私達が役立てるのは、あれくらいしか……!」
「ご、ごめんなさい!! ごめんなさいーーーー!!」
「息はある! いいから続けな、レヴァ! 敵をここに近付けさせたら終わりだろ!?
あたし達の弾幕で、外の敵を食い止めるんだ!」
「分かったよナイフぅ!」
隊長であるスヴェアが誤射により倒れてしまったが……
残った新人2人は懸命に射撃を続ける。
「なんという事だ…… サバイブリポート!
動けるのはもう、私と、後、何人残っている……!」
「こっち、まだ二名、生きてるよー!」
「は、はひぃ! なんとか、こっちも!」
防壁上の砲台から、レヴァとナイフがバーンに手を振る。
本部入り口の砲座では、レッパがハープーンを構えている。
後は、足をやられ、這いずり回りながらゾンビの臓物を抜いて回るバーンしか残っていない。
(犠牲は出るが、インサイドの敵はいずれモール殿が片付けてくれよう……
ならば、私はアウトサイドで気絶者の治療しつつ、弱った敵を……)
治療しようと這いよってみたものの、既に息絶えている浮浪忍者もいた。
限界が近付いている。
(ぐ…… 機械のボディであれ、ここまでか……)
「えー ヤギィ~~~ ヤギはいらんかねぇ~~~~~」
(救世主・メシア・降臨!?)
遊牧民が応援に現れ、ついに形勢は逆転した。
新人達の弾幕も十分に効果を発揮。
死屍累々、ゾンビで埋め尽くされた地獄の夜が、ついに明けた。
気絶から立ち上がる者がちらほらと増え始め、ようやく……
戦闘終了後の処理が始まる。
重傷者をベッドに運び、ボロボロの里の立て直しが始まる。
誤射をしてしまったレヴァは、失態を挽回すべく懸命に働き続けた。
手足を失くした者、命を落とした者……
里の戦力は、大きく損なわれる事となった。
浮浪忍者の里:数日後
「やーっと帰ってこれたぜ……」
「あーもー、中年男性の相手はもううんざりよー!」
「って、待てよ姉貴、なんか様子がおかしいぜ」
「酷い有様だけど……」
「ああ、新人達の顔付き、しっかりして来たんじゃねーか?」
歴戦の忍達に犠牲を強いてしまった。
このまま彼らに頼ってばかりもいられない。
個々の鍛錬が始まっていた。
里から東へ:買い出し班の旅
「では、同盟の良き始まりとすべく、我々は手土産を持ちカエロウ」
「北海岸の案内なら、我ら兄弟にお任せあれ! 忍!」
アイメルトとトゼッリはスケルトン三人組を連れ、北海岸を東へと走る。
故郷のポグ村に立ち寄り……
ハイブ村へ。
以前のゾンビの襲撃をなんとか乗り切り、持ちこたえ、村は無事存続できていたようだ。
何本かの義肢を買い、里へと戻った。
里に戻り、負傷者に義肢を手渡す。
「ありがとう…… スケルトンには情など無いと思っていたが……
すまない。 私達は、どうしてもお前達を恐れずにはいられないのだ」
「イエイエ、お気になさらず。
ワレワレモ基本的な思考を再設定する事は難しいものですから」
「重ねて、すまないアイメルト。 生死不明だった者が生還してな……
確認漏れがあった。 あと2人分必要だ。 頼めるか?」
「勿論だ! 忍!」
「イエ、イマの里には人手が必要でしょう?
コンドハ我らスケルトンだけで行ってきましょう」
「これもアライアンスのため……」
「また足りなくなるとイカン。
予備も含めて少し多めに買ってくるとシヨウ」
スケルトンの三人は、義肢の買い足しのため、再びハイブ村を目指して出発した。
里から東へ:漁村 ポグ村
「クルゾ、ゾンビだ!」
「あの数なら、戦って切り抜けルカ?」
「いいだろう、我々はもっとヘビーなバトルを繰り返さねばならない」
三人は漁村に近付きつつあった少数のゾンビの群れに、正面から戦いを挑んだ。
先の浮浪忍者の里での戦いで、自分達がちょっとやそっとでは死に至らない事に気付き、修行を楽しむ余裕が生まれていたためだった。
が、しかし。
「なぜ人間の味方をする!」
「オマエ達こそ、なぜこんな事をしている?
ホウッテおいても人類など滅んで行くだろうに」
「問答無用! 死ね、裏切り者め!」
少数の弱小ゾンビ相手に互角の戦いを夜明けになるまで続けた後、ゾンビと同時に襲いかかって来たのは……
仲間であるはずのスケルトン達だった。
実力差は歴然。
ゾンビとの戦いで疲れ果てていた三人は瞬く間に全滅してしまう。
「クッ…… ステータスの違いが戦いの全てでは無い事を見せてやろうデハナイカ」
「そう、戦いはソルジャー! 兵の頭数で決まるのだ!」
敵スケルトンはまっすぐにポグ村を攻撃に向かう。
バーン達はなんとか意識を知り戻し、デッドキャット村民との共闘を開始する。
デッドキャットの衛士達は個々の戦闘力が並の侍より高い。
バーン達が手伝うまでもなく、頑強なスケルトン相手に戦いを優位に進めていく。
が……
「おい、その頭数が、さらに追加でクルゾ……」
「ナント言う事だ……! カッコウツケテ見栄を切った以上、我々で少しでも数を減らして行きますよ!」
「まあ、我々のボディはスチール。そう容易く死にはすまいが……
そこまでデッドラインに立つ義理があるか?」
「我らは人類の滅びを見るために旅ニデタ。
それは何のタメカネ?」
「無論、アドベンチャーのためだ!」
「ソノトウリ! タダホロビを待つだけなんてつまらないでしょう!
ナラバ!」
「ああ、そうだな!
この滅びを目いっぱいにエンジョイしなければ損という物だ!」
倒されても倒されても起き上がり、戦闘を続けるバーン達。
彼らは、死の蔓延するこの混沌とした新世界を満喫していた。
それは、決して正義ではない。
ただの…… 趣味でしかなかった。
いかに屈強なデッドキャットの村民と言えど、あまりにもの多勢に無勢。
犠牲者が出始める。
前線は崩壊。
戦いは村内へと雪崩込んで行く。
が、しかし……
幸運にもカニバルハンターの一団が駆けつけ、救援を開始。
絶体絶命の危機を無事乗り切り、ピカリングの旧知の人物達も生き残る事が出来た。
そして、ハイブ村へ。
「オオ、スケルトンベッド!
ヤット、損耗箇所の修復に入れます……」
「普通等級の義肢、両手足分・4本セットでイタダコウ」
「毎度あり!」
ようやく、くつろぎながらスケルトンベッドでの修理を開始出来ると彼らが安心していた、その時。
再び、地獄の蓋が開く。
以前クロト達が出くわした襲撃の際と同様、過去に遺体を埋めていた地中深くから、ゾロゾロと死体が湧き出し、行進を始める。
と、同時に、海からも死者の群れが出現。 村は挟撃を受ける形となった。
「ハハハ、コレハ何の冗談だ」
「滅び、滅びがクル。 世界は滅びへムカッテイル!」
「さあ、ご両名、このバトルアドベンチャーを楽しもうではないか」
<半日後>
「勝ったナ」
「予想外のバイタリティ。ハイブ種、侮りがたし」
「コノ村にスケルトンベッドがあって本当に良かった……」
「サア、終わる世界を楽しむためには、忍者さんとの同盟の仕事もちゃんと果たさないと!
ソロソロ義肢を持ち帰りましょう」
三人のスケルトンが村を旅立った次の瞬間、敵の第三波が襲来。
「セカイノ滅びの加速と、セカイノ持つ耐久性。
ドチラガ勝つのか……」
戦いという娯楽にも疲れ果てていた三人は、義肢を持ち帰る事を優先。
背を向け、帰路に着いた。
浮浪忍者の里:数日後
「今帰ったよー!」
「おかえりなさーい!」
「あ、お、お疲れ様です!」
「よしよし、新入りも頑張ってるねぇ その調子だよ」
「はい!」「うっす!」
「よっし、怯んだ! 姉貴」
「はいはーい! いただきまーす!」
「久々に三人揃ったね!」
「下の連中も少しは戦力になるようになってきたし……
俺達もちったぁマシになって来たか?」
「この里も、代替わりが進みつつある。
これならしばらく留守にしてても問題は無さそうだ。
また、あの女と話をつけに行かないとね……」
ピカリングが帰還し、今や義兄弟の誓いを交わした三姉妹が揃った。
目指す先は遥か遠いが……
この世界を救うには、無謀な旅を続けなければならない。
来たる決戦の時が来るまでに、どれだけの派閥を味方に付ける事が出来るか……
「諸悪の根源ってのが、ちょっとずつ見えてきた、かもね……
待ってな、クロト」
<続く>
注意:当ブログの記事内の設定はKenshiの公式設定とは異なります