気刊くろみつタイムス

主にゲームプレイ日記。過去記事一気読みは「目次」からどうぞ! ※他ブログからのインポート引っ越し時に改行崩れ&画像消滅が発生しています。

#Kenshi ZA-20:スワンプ編⑤

形成外科・ドクターチュン 
元逃亡犯・シルバーシェイド 
ケルトン・コスチュニン 
農民・マクフィー 
新たに4名を加え、クロト達はマッドタウンを出発した。
シルバーシェイドが雇った傭兵との契約はまだ切れていない。
彼らと共に南下し、シャークの町を目指す。

「悲鳴!?」

「偵察、行きます!」
「我が主! そういう仕事はオレに任せればいい!」
クロトが素早く慣れた仕草で走り出し、デーリアがそれを追う。
一番足が速いのがクロトであるため、いつも隊長が飛び出していく事になってしまっている。
ゾンビに襲われているのは、レッドサーベルと呼ばれる、スワンプに巣食う野盗の一人だった。

「どこにも属さない野盗の類だ! 放って置いた方がいい!」
スヴェアはそう進言するが……
レッドサーベルを救い出すため、クロトはゾンビへの攻撃を指示。
戦闘が始まる。

傭兵達と共に数体のゾンビを倒すが、起き上がったレッドサーベルは見境なくこちらにも斬りかかって来る。
世界に味方などいない。慈悲など乞わない。
それが野盗の流儀か。
傭兵に斬られたレッドサーベルは力尽き、再び地面に倒れる。

「だから言っただろう。 こいつらに恩義など……」
「先生、お願いします」
「任せてくれ」

チュンが手早くレッドサーベルの治療を行う。
「ケケケ、アタイらとは育ちが違うのよん、スヴェアちゃん」
「やれやれ、だ……」
「フフ、いいじゃないか。
 オレの主は忠誠を尽くすに相応しい快男児と言う事よ」
一行は小さな遭遇戦を終え、到着した。

スワンプ地方最大都市、言わば犯罪帝国の首都。
ここが、シャークだ。

第二部:スワンプ編⑤ シャーク(前編)

暗闇の向こうに、チカチカと灯火が見えてくる。
街の灯だ。

「やっと着いたわい! 酒! 酒! 噂のダンシングスケルトン! はよぅ行こう!」
「アタイはまずハウンズに挨拶に行きたいねぇ」
「ほう、ここでお前とはお別れか」
「寂しいかい? スヴェアちゃん?」
「さっさと行ってこい。止めはせん」
「ケケケ!」
櫓を組み、高所から砲台を構える屈強なスワンパー衛兵。
筋骨隆々としたハウンズの男達。

この町は強い。
チラリと見ただけでもそれが分かる。
「・・・・・・・・」
クロトは内心忸怩たる思いを抱えていた。
彼女がここに定住し、ハウンズに加わりたいと願うのも無理は無い。
こんな弱者の集まりがフラフラと遥か彼方を目指す無謀な旅。命が幾つあっても足りない。
あの大群を綺麗に片付けてしまったスワンパーの力は本物だ。
この町で暮らしたいと願うのも当然の事だ。

「僕達の事は気にしないで下さい。どこで別れようと、それは皆さんの自由ですから」
本当は、気にして欲しい。
トゥルブレ、三姉妹、ソマン、グリーンフィンガー、そしてエリス達……
他にも、多くの旅の仲間と別れて来た。
彼らに、行動を共にしたいと思わせるだけの力が、僕には無かった。
そして、今も無い。
これからも、きっと……
「何はともあれ、まずは酒場で一休み、それでええじゃろ?」
「そうですね。食料も底を尽きかけていますし」

「ダンシングスケルトンからじゃなくて良かったのか?」
「ふぉふぉふぉ、お楽しみは後から、じゃよ! 飲み比べ飲み比べ!」
「いらっしゃい! ささ、座って一杯やりながら、ゲームを楽しみませんか?」

この酒場はハウンズやスワンパーではなく、賭博業を取り仕切る「ブラックシフター」の店か。
酒も料理も悪くなさそうだ。
まずは旅の疲れをこの酒場で癒やして……
「グリーム」
「ん? なんだい?」
「あれが以前に教えた「両耳」だ。
 ハウンズに加わりたいなら、あの男に頼み込むといい」
「おおっ♪ サンキュ、スヴェっち!」
一日の疲れを酒場で癒やすべく、仕事を終えたシャークの住人達がゾロゾロと列を成して向かってくる。
グリームは少女のように無邪気な声で喜び、駆け出していく。

行列の先頭に立つハウンズの男…… あれが、両耳か。

「あんたが両耳さん、ッスね!
 アタイはチンケなゾンビの始末屋、名をグリームと申す者っス!」
「フン、聞いている。
 都市連合の特務部隊…… ロットでは良い働きをしたとか」

「ッス! 是非、アタイもスワンプに……いや、ハウンズに加えて欲しいんスよ!!
 ここでなら、アタイにとって天職的な……」
「シーーーーッ」
両耳は、指を一本立て、黙るようジェスチャーを取る。
「俺達が、なぜここで組織を構えているのか、知らねぇのか?」
「え……?」
「帝国ってぇのが、心底大っ嫌ぇだから、皆ここにやって来てるってぇワケだ」
ワケが分からず困惑するグリームに、両耳が指を突き付ける。
「上の命令じゃ仕方ねぇ。 始末屋の仕事くらいはやらせてやるがな……
 侍の手下が、ハウンズに入ろうって? 馬鹿言っちゃいけねぇ。
 砂漠のお城にふんぞりかえってる貴族の息の掛かったお前ら「飼い犬」が、「猟犬」に?」
ペッ、と、地面にツバを吐き捨てる両耳。

「失せな」
ガヤガヤと賑やかな話し声と共に、客がゾロゾロと酒場に入ってくる。

その人波にもみくちゃにされ、グリームはクロト達と離されてしまう。
「……んだよ、チクショウ」
呟いた声は、震えていた。

お優しい坊や隊長さんに拾われて、万々歳の大儲け。
方々にコネも出来て、さあこれから!……だろ?
膝から力が抜ける。

一文無しのどん底から、口からでまかせ、舌先三寸でトントン拍子。
自分には詐欺師の才能がある。
犯罪帝国の中心でなら、その才能はいくらでも発揮できると、そう思っていた。
侍の、貴族の、手下?
このアタイが?!
「く……お、おぉぉぉぉぉ……!!」
あんなガキに拾われなければ……
いや、拾われなければ今もまだ、あのステーションから出られず……
ああ、ああ……
どうしよう。
誰も悪く無いじゃないか。
「グリームさん、大丈夫でしょうか……」
「あんなに楽しみにしてたんだ、落胆も大きかろうな」
「クロトさん、貴方から励ましてあげた方が……」

クロトは、心臓の鼓動が高鳴るのを感じていた。
沢山の別れが、死と陰謀が、記憶喪失と言う理不尽が、積み重なって心を蝕んで来た。
せめて、今度の仲間達は幸せにしてやりたいと、背伸びをして隊長らしくして来たつもりだった。
その緊張の糸が、今、突然に……

(なんだい、お優しい隊長さんも、アタイみたいなブサイクには優しくしてくんないのかい)
クロトは何やら新人の勧誘に躍起になっているようで、テーブルから離れる様子が無い。
それもそうだ。
お粗末な特務隊を見下し、恩人を見限って頼もしいハウンズ様に鞍替えしようとしていた女。
優しくしてもらえる道理が無い。

「やっぱダメでした」などと舌を出して戻れば、きっとあいつは笑って許すだろう。
命を落とし兼ねない危機また危機の旅に、それで戻れるのだろう。
仲間ごっこをして、ちゃっかり稼いで……
それで、いつかどこかでラッキーがアンラッキーに変わり、破滅する。
「これまでは大丈夫だった」が、いずれ通用しなくなる。
アタイの場合は、特に。
いずれ必ずそうなる。
これ以上は、もう、ゴメンだ。
「諦めるのか? お前の野心は、その程度か?」
「あぁン!?」

サングラスの下の悔し涙を気取られないよう、大声でスヴェアを威嚇する。
「嘘つきと正直者、どちらが長生き出来るか。
 この勝負、見ものだな」
「ヘッ、ハハハハッ!!」
まったく、いい女だぜ。
優しくされたい時に、ケツを蹴飛ばしてくれるとはね。
「アタイは行くよ。
 あんな隊長の下で旅なんて続けられますかってーの。
 おい、アタイは行くがね! 誰か付いて来るかい?!」
ニヤッと笑って、スヴェアに流し目を送る。
コイツは来ない。 アタイとは違う。
「あ、あのぉ……」
ほう、これは予想外な。

「お前さ、ただの農家のおっさんだろ?
 それがハウンズってぇ、本気か?」
「私、麻を育てる事には自信ありますから……」
「へぇ! 大人しい頭して、ヤクの栽培なんてやってんの!」
「それを言うなら顔でしょ…… 髪の話はやめてくださいよ……
 育てた麻が何に使われてるか、知ってて畑をやってたんです。
 踏ん切りの付け所ですよ……
 中抜きされずに麻を卸して、副業で始末屋も出来れば、一財産出来るでしょ?」
「おお、その意気その意気!」
「後は…… あちらの侍嫌いをどう説得するか、ですよね……」

「ま、アタイの取り柄つったら、口先だけじゃんね。
 やるだけやってみるさ!」
そうだ、ここが度胸の見せ所。
アタイもやってみせようじゃないか。
……あいつみたいに。
「両耳って野郎に話は付けて……ない!
 けどねぇ、儲け話を持ち出す前に商談を蹴るなんてのは、アタイ、認めらんねーのよ!」

ハウンズのアジトにズカズカと乗り込み、グリームは大声でまくし立てる。
(あ、あわわ…… 本当にそれで行けるんですか、グリームさん……)
(ハゲも兜で隠れてんだ! おっさんは黙ってつっ立って貫禄っぽいモン出してりゃいいんだよ!)
「失礼すんよ! 噂のかっくいーボスさんはドコだい?」
ザワザワと、ハウンズの隊員が色めき立ち、グリームを取り囲もうと立ち上がる。
「おっ、一目で分かるよぉ? こっちのイケメン姐さんだろ?」

アジトの一角の寝台へと、ズカズカと歩み寄るグリーム。

ドスの効いた脅し文句。
あーあ、しらねーぞ、と、ハウンズ隊員達が肩をすくめる。
さあ、ここからが見せ場だ……

グリームはハウンズのボス、「ビッグ・グリム」の枕元で長々と話し込み……
そして……
ニヤリと笑った。

(見たか、スヴェっち……
 アタイの勝ちぃ!!)

「アロロロォオォォォオォォォォォォ!!」
ハウンズが吠える。
スワンパーが警笛を鳴らす。
敵襲。 ゾンビだ。

多勢に無勢も何のその、戦士達は手傷を負う事も恐れず、複数のゾンビを相手取り、堂々と渡り合う。
(やっぱり、強い!!)
酒場での一件でクロトは集中力を欠いていたが、それでも「仕事」はやらなければならない。
無理を言ってチュンを引き取った代償は大きかった。
金が無い。
人数が増え、食費の確保だけでも大変になって来ている。
「クッ!!」
「下がって、デーリアさん!」
「なんの! まだまだ!」

まだまだ僕らは最底辺の敵と互角の戦いをする程度。
恥じる事は無い。 これが、特務隊の仕事だ。
傷付いたメンバーを宿に後退させつつ、いつものようにはぐれゾンビを倒していく。

戦闘は優位に進んでいるようだが、広く薄く拡がった戦線により、個々の兵の損耗は大きくなりつつある。
シャークの町の戦力は強固だが、この町には防壁が無い。
血の臭いに引かれて猛獣も町の中へと入ってくる。

酒場の中にラプターが現れ、賭場を取り仕切るプラックシフターの団員が迎撃している。
大混乱。
迎撃戦は街中に広がった。

倒された敵の始末に向かうクロト達も、町中を慌ただしく駆け回る事に。

乱戦の中、ダメージを重ねてしまったが、今回もいい稼ぎになった。
これで…… しばらくは食い繋げる。
スワンパーから死者は出ていなかったが、無傷と言う訳でも無い。

深手を負った者も多く、特務隊は救護活動と敵の復活阻止とで慌ただしく走り回った。
そうだ。
恥じる事は無い。
これも立派な、共闘関係……
やがて町中の戦闘は終わり、市外の荒れ地へと最前線が移動して行く。

とうとう死者も出てしまった、が……
戦いはスワンパー、ハウンズ、ブラックシフターら、シャーク連合の勝利に終わった。

戦いと、その後の「収穫」を終え、クロト達は宿へと撤収を開始。
その前方から、2人の女性が姿を現す。
「クロト様! 貴方がクロト様、ですね!」
美貌。そしい、弱々しい肉体。
間違いない。「JRPG」族だ。

「貴方達は……?」
「噂を聞き、貴方を探して北から流れて来ました。
 私達を、貴方様の配下に加えてください!」
ホーリーネーションからの避難民 "JRPG" フェルン&ドリル
「ヨルフォグ種の生き残りの間で、貴方達の存在は救いなのです……」
「無力な私達にでも、出来る事があるのなら……
 何でも致します! 是非、お供に加えていただけませんか!」
「勿論です! 歓迎しますよ!」
笑顔で2人を迎え入れるクロト。
その姿に、スヴェアは舌打ちをする。
(お人好しも大概にしてもらわねばな)
食い詰め者を仲間に加えると言う事は、借金を返済してやる必要がある、という事だ。
2人合わせて6000cat。
今夜の仕事で儲けが出たとは言え、この調子で頭数を増やして行けば、いずれ……
そうだ。
食費が足りない。
ゾンビと戦い続ける事が出来ればなんとかなるかもしれないが、そうそう都合のいい勝てる敵ばかりが現れ続けてくれるはずがない。
日照り続きの不作の日もあれば、嵐になぎ倒される日もあるだろう。
この隊長には、そういった危機感が圧倒的に足りていない……

酒場「ダンシングスケルトン」で休息を取りつつ、クロトは店主に6000catを支払った。
これで、ウェイトレスとして働いていたJRPGの2人は自由の身となった。

ホッブズは「噂通りの美味い酒じゃ!」とおおはしゃぎで、酒場の看板「ネリー」におひねりを投げている。
今夜は大変だった。
多少羽目を外すのも多目に見なければ。
と、酒場客の一人が酔っぱらい、大声を上げ始める。

いかにもな食い詰め物、よれよれの服を着たハイブに絡み、何やら難癖を付け始めている。

「お前、フォグマンだろ!」
男の言いがかりに、クスクスと周囲の客から笑い声が上がる。
ハイブの背中にある使い込まれた弓……
かつては多くの獲物を屠ったであろうその弓に反し、食うや食わずの生活を続けたためか、男の身体は貧弱そのもの。
いかにもステイヤー、「なり損ない」であることが見て取れる。
「フォグマンじゃない……」

ハイブの口は人間用の器から酒を飲むのに適した形をしていない。
酔っぱらいは、口の端からこぼれ落ちる水滴を指し、「血を流している」と嘲る。

ハイブにとってフォグマン呼ばわりされる事がどれほどの侮辱か。
「巣」を失い、ハイブレスとなっただけでも辛いというのに、その上ゾンビの同類と嘲られるとは。
「邪悪なビースト…… この憩いの場には相応しくありませんな」

酔っぱらいの悪意を煽り立てるような物言い。
ガラの悪い酒場に不釣り合いな、貧相な体格で、清潔感のある男。
(外交官…… ホーリーネーションの)
スヴェアはひっそりとクロトに耳打ちし、騒ぎを起こさないように言い含める。
(ヤツはここで騒ぎを起こしたいのだ。
 公共の場では、先に剣を抜いた者から始末されるのが世の習わし。
 それが例えチンピラの一人であれ…… 一度戦闘さえ起こしてしまえば、それがスワンプに内乱を起こす事引き金となり得る。
 分かるか、クロト)
(様々な組織が複雑に入り組んだスワンプでは、酒場の喧嘩ですら派閥間闘争に発展する、と……?)
(そうだ。この町ではいつも以上に、揉め事を起こさず、関わらず、だ)
「フォグマンの首は高値で売れるんだぜ!
 金持ちになれる! 殺れ!!」

酔っぱらいが大声で叫ぶ。 シン、と酒場が静まり返る。
死が、始まるのか。
「嫌だね。
 死にたいなら自分一人で死んでろ、クズが」

不機嫌な声で、酒場客が吐き捨てるように応じる。
ハハハハ、と、店主の女が大笑いして手を叩く。
「結構結構、ハウンズのシマで揉め事を起こそうなんて、そこの酔っぱらいは度胸があるねぇ!
 後でたっぷりと特別サービスで接待してあげないといけないねぇ、こりゃ!」
「え、おい! ちょっ…… 俺は、そいつに頼まれて……」
「チッ……」
外交官の男は視線を逸らし、連れ去られる酔っぱらいを無視する。
「ねーちゃん、酒じゃ! 飲み直そ!」
ホッブズが店主に呼びかけると、客達が次々と注文を飛ばし始める。
酒場はようやく元の賑やかさを取り戻したようだ。
「乱闘騒ぎは無し、か。それではこれで失礼する」

契約期間を終え、傭兵達がマッドタウンへと帰って行く。
クロトは重ねて礼を言い、彼らの奮闘を讃え、その背中を見送った。
「あぁ……怖かった……
 何事も無くて良かったです…… 今は、特に……」
「認めるのはシャクだが、オレ達の腕っぷしより、ハウンズの一睨みの方が余程効果があるという事か」
「……なるほど。これが、スワンプの秩序、か」
クロトは素直に感心していた。
麻薬、賭博、借金、暴力…… そのシステムの犠牲となった者の上に積み重ねられた秩序ではあるが、その力でスワンプは今の平和を保っている。
奴隷の苦役の上で維持されている都市連合とも似ているが…… さて、どちらがよりマシな国家なのか。
その判断、簡単にはできないぞ、と…… 今のクロトはそう考えるようになっていた。
今の「彼女」の目の前で、踏みにじられる弱者の存在を見捨ててなどいられない。
「ちょっと、行ってきます」
「おい! まさか…… チッ!!」
席を立つクロトに、またスヴェアは舌打ちする。

クロトと何やら話し込んでいたシルバーシェイドが、酒場のカウンター席へと歩み寄る。
「100点。
 君は今の我々が求めるベストな人材。
 どうかね? 私達と行動を共にしては?」

「シェイ…… 何しに来た」
「無論、スカウトだとも」
「俺達でも、働ける……と?」
「いい服だろ? 80点てトコだがね」

同じ「なり損ない」同士だが、自身のボロ着と比べ、見栄え良く頑丈そうなコート……
このままこんな所で召使いとして働いていても、ただでさえ弱りきった身体がますます萎えていくだけ。
射手としての技量が萎え切る、その前に……

「95点。
 ハイブにしては…… 飲みすぎだよ、君」
OKの合図を出し、クロトが店主にcatを支払う。
と、シルバーシェイドは、着ていたコートをバサリと肩に掛ける。
「来い、グリーン。
 あの少年なら、俺達に「巣」をくれるはずだ」
「いいだろう、シェイ。
 ならば…… 今日からお前が俺のプリンスだ」

元・スワンプ最強の射手 "ワーカードローン" グリーン
シルバーシェイド曰く「かつては最強の射手だった」彼が、このままでは無駄に命を落としてしまい兼ねない。
そう判断したクロトは、懐事情の厳しさを押してでも今ここで保護しなければならないと、身請けに踏み切った。
無論、スヴェアが腹を立てている事は分かっていたし、このままでは先で苦しむ事になるとも分かっていた。
それでも、彼らが…… いや、自分達のような者が、世界の片隅で枯れ果てて死んでいくのを放っておく事は出来ない。
貴族とも、ハウンズとも違う、「僕のやり方」を。
クロトの中に、おぼろげな信念が形作られつつあった。

「付き合いきれん」
「貴方も、行ってしまうの……?」
「どうもこうも無い。
 口減らしをしなければならん」

「お前一人減った所で、大差は無かろう。
 我が主がまた寂しがるだろうが…… 困った女だ」
「フッ、なんならお前達も来るか?」
「オレは命尽きるその時まで、忠義を尽くすまでだ。
 ダルパンは……言うまでも無かろう」
「うん……」
「では、さらばだ。
 クロトにはよろしく言っておいてくれ。
 お前が悪いのではない、とな」
「オマチなさい」
「我々も同行シヨウ」

「お前達が……?
 スケルトンは飯を食わんだろう。
 離脱したとて、食い扶持減らしの役には立たんぞ?」
「イエね、アナタと行けば人類同士の同盟に、スケルトンも加わる事が出来るのではないかと……」
「報告に戻るのであれば、我々も便乗シタイ」
一瞬、スヴェアの目つきが鋭いものに変わる。
が、その一瞬後には、冷静さを取り戻す。
「流石は長命の人類観察者、と言った所か」
ケルトンは敵。
それは、我ら真のオクラン教徒からしても同じこと。
浮浪忍者がその提案を受け入れるかどうか……
ケルトンを信用していいものか……
それは、賭けだ。
だが、それでも……
「ああ、そうだ。
 私は姉の借金を肩代わりさせられ、逃げた先のホーリーネーションで浮浪忍者に加わった。
 任務を与えられ、都市連合領に潜伏していた所で、あの緑の光にやられ……
 こんな身体ではもう忍者仕事も出来ん。
 何もかも失って途方に暮れていた所であの坊やに救われた」
グリーム。
私は、お前とは違うやり方で行かせてもらう。
「この腐った世界で、クロトの生き方は眩しい…… 希望の光だ。
 特務隊のやり方は拡げるべきだ。
 死者が襲い来るこの世界で、互いに憎しみ合っている場合ではない。
 力を合わせよう、スケルトン」
クロトのやり方……
誠実さを武器とする道を、私は選びたい。

全人類の団結のため、対ゾンビ同盟を世界に拡げ、滅びに立ち向かう。
そのために、別行動を取る。
交代要員も来て、留まる必要はもう無くなった。
丁度、潮時だった。
「モール姐さんの所に戻る。 共に行こう」
「アア」「ありがトウ」

スヴェアは、この2人を信用していない。
むしろ、怪しいと見ている。
それでも、賭けてみたくなった。
信じてみたくなった。
たとえそれが、力無き者達の強がりに過ぎないのだとしても……
「善意」こそが、悪意に沈む世界を救う鍵なのだと。
<続く>


設定:ダメージ2倍
縛り:展開にそぐわない行動は取らない(犯罪行為等)
注意:当ブログの記事内の設定はKenshiの公式設定とは異なります