気刊くろみつタイムス

主にゲームプレイ日記。過去記事一気読みは「目次」からどうぞ! ※他ブログからのインポート引っ越し時に改行崩れ&画像消滅が発生しています。

#Kenshi ZA-11:大砂漠編⑩

冒険に出るための資金を稼ぎたい、ホッブズ&馬。
故郷を出て新たな生活を始めたい、ソマン&グリーンフィンガー。
弱体化後、衛士以外の職を探し求めている、アイメルト&トゼッリ。
6人の仲間を加え、クロト達は戻ってきた。
 
ショーバタイの町へ。

 
 

第一章:大砂漠編⑩ ショーバタイ出発

 
 
 
「偵察隊、入ります!」

「おう、生きておったか坊主。防衛隊は出払っとるぞ」
「そうですか…… ありがとうございます」
 
何はともあれ、まずは傷ついた身体を休ませなければ。

転がり込むように兵舎へと駆け込む。
 
やはり、侍達は出払っている。

遠慮なく休憩させてもらうとしよう。
まずは腹ごしらえ。
 
真っ先に、パウムガルトナーをベッドに寝かせる。

やっと、やっと休ませる事が出来る。
 
張り詰めていた気が緩み、一気に疲れが押し寄せてくる。
 
無傷なのはエリスとトゼッリのみ。
2人が見張りに立ち、残る全員がベッドに倒れ込む。

防衛隊司令、タクロウの方も日々の雑務に疲れ果て、グッスリ寝ているようだ。
報告は明日でいいだろう。
 
いち早く回復を終えたクロトは、一人翌日の準備を始める。

人数も増えた。
何はともあれ、まずは食料だ。
 
不要物を幾つか処分し、肉を買い足す。
と、バーに張り出されている真新しい手配書の一つに目が留まる。

人を食べる、ではなく、皮を剥ぐ……?
ホッブズの言っていた嘆きの亡霊の話がチラリと脳裏に蘇る。
 
「ああ、侍の兄ちゃん、間違ってもソイツを探しに行こうなんて思うなよ。
 南東は魔境だ。手柄を立てる!なんて意気込んで旅に出た連中はみんな帰って来やしねぇ。
 特に、ここ最近は酷いもんでな……」
 
「何かあったんですか?
 僕はバスト地方に赴任していたので、南東の事はよく知らないんです」
 
「そうだな…… 一年は経つか。ゾンビ騒ぎが起きる前だ。
 反奴隷の連中がようやく静かになったかと思えば、今度は南東のヤバい連中が激しく争い合うようになっちまってな。
 最近じゃモウンやカタンと連絡が途絶え始めて、町一つ丸ごと消えちまったって話もある。
 で、その犯人がサヴァンて野郎の新組織じゃねーのかってな」
 
「南方との連絡が途絶えている…… のか……」
 
故郷が今どうなっているのか、誰に聞いても知っている者はいなかった。
遥か南西、大陸の正反対。遠く離れた小さな村の事など、誰も知らなくても不思議ではないが……
 
クロトは、ジワリと胸の奥に黒い影が浮かぶのを感じた。
 
気は焦る。
が、かと言って、このまま真っ直ぐ南東に向かっても"魔境"南東の恐ろしい連中に襲われて全滅するだけ。
最底辺の戦闘力となった自分が、どうやって南西を目指せばいいのか……
 
どうにかして安全なルートを探さなければ。
いずれ別れる仲間とは言え、隊長として、移住先が決まるまでは部下の面倒も見なければならない。
財布を預かる者としては、蓄えも増やしておかなければ……
 
 

 
 
「と、言う訳なので、また少しの間、こちらで働かせてもらえないかと」
 
「ああ。いつぞやの小僧だな。覚えているとも。
 ゾンビの処理なら、好きにしてくれて構わん。こちらとしても大助かりだ」
 
ゾンビの出現以降、防衛隊と憲兵隊のギスギスした関係も幾分和らいだのか、憲兵隊司令トラエムは笑顔でクロトの申し出を受け入れた。

これで許可は取り付けられた。
またしばらくはここで汚れ仕事をして、この先の活動資金を稼いでおかなければなるまい。
 
 

 
 
明け方、早速その機会が訪れる。

襲ってきたのはごく少数のゾンビのみ。
クロト達が前線に駆けつける頃には、既に決着はついていた。
 
「フム、この臓器を引っ張れば死ぬ、と…… 忍ッ!」
 
トゼッリが急所をズルリと引き出し、モゾモゾともがき続けていたゾンビは動きを止める。
 
「なるほど、興味深いものでござるな、ニンニン」

「トゼッリさん! 危ない! 後ろ!!」
「ぬっ!! まだ生きて……」
 
バスッ!!

トゼッリが身構えた瞬間、起き上がりかけていたゾンビが再び倒れる。
その急所には、鋭いクロスボウの矢が深々と突き立てられていた。
 
「油断だな、庶民!!」

大声で笑いながら、ノーブルハンターが通り過ぎて行く。
それは、以前見かけたノーブルハンターとはまた別人。
同じくノーブルハンターを名乗る別の貴族だった。
 
「あ…… あれは?! パウムさん! 隠れた方が!」
「はい…… ですね……」
 
パウムガルトナーは、ノーブルハンターが捨てていった奴隷ではあるが……
逃亡奴隷には違い無い。 公的には、彼女は都市連合の法律上、犯罪者なのだ。
ノーブルハンター同士の繋がりがどれくらいあるのかは知らないが、彼女が顔を合わせたくない相手には違い有るまい。

「ケッ、どいつもこいつもビビりやがってよぉ!」
「閣下の腕を見れば、縮み上がるのも無理はなかろうと言う物です」
 
会釈をし、援護射撃の礼を叫んだだけ、あの少年兵はまだマシか。
こういう反応には慣れている。
砂丘の影に逃げ込むように姿を消す一団を見送り、ノーブルハンターは巡回を続ける。
 
砂漠を徘徊する敵集団など、全て返り討ちにする。
その気概が、一同の行進には現れていた。
ザッ、ザッ、と、淀みなく砂を蹴る足音が続き、その前進に迷いは無い。
 
「閣下……」
 
その行進に、パウムガルトナーがスルリと潜り込む。

「遅かったな」
 
「ハッ。 ポートノース、第2ハイブ村、いずれもゾンビの襲撃を受けたもので……」
 
「聞いている。咎めはせん。 で、首尾は?」
 
「酒樽のエリスは完全に記憶を失っています。
 が、一瞬、元の荒くれ者の片鱗を見せた事がありました。
 失われた、と見るより、眠っている…… のでありましょう」
 
「弱体化現象に伴う人格障害…… 面倒くさい名前だ。
 何か略称はないのか?
 ともかく、治らぬものではないのだな」
 
「きっかけさえあれば、現実との齟齬を即座に認識する事もありました。
 人による……のでしょうが、簡単に治る場合もあるようです」
 
「では、続けろ。
 なんとしても、エリスの隠したブツの在り処、探り当てるのだ」
 
「ハッ!!」

任務続行。
それは、まだ生きていていいと言う事だ。
パウムガルトナーは心の底から安堵した。
 
だが……
 
あの人は、来てくれなかった。
 
続けて二度来る事のリスクを考えれば、当然の事ではあったが……

あの人は、来てくれなかったのだ。
 
それが、パウムガルトナーの顔を曇らせる。
 
 
 

 
 
「待って下さい! クロト様! エリス様!」
 
「あっ! パムさん! 心配しましたよ! ゾンビにでも襲われたんじゃないかって!」
 
「ほうこく、れんらく、そうだん、大事! パムがいつも言ってる事!」
 
「ごめんなさい…… 私、やはりノーブルハンターを見ると、恐ろしくって……」

クロトは眉をひそめつつも、咎める気にもなれず、そのまま町へと引き返した。
 
一仕事を終え、幾らかの稼ぎにもなった。
そろそろ、タクロウ司令も目を覚ましている頃だろう。
報告を終え、任務を完了させなければ。
 
 
 

 
 
「伝令! 入ります!」
 
相変わらず、司令以外は出払っている兵舎。
ゾンビ退治に出ているのだろう。
 
「おお、クロトか。 よく戻った」
 
防衛隊司令、タクロウ。
準備金も出さず、三姉妹護送任務を押し付けてきた張本人。
厄介事を無事片付け終え、機嫌は良さそうだ。

「話は聞き及んでおる。許可は取り付けた」
「では……!!」
 
正規の侍への昇進。離隊・帰郷の許可。
ようやく!
 
「昇進の件は、問題なく許可が出た。
 が…… 故郷への帰還の方には問題がある。
 正規の侍となり、ドーセル村の領主の下に戻る、との事だったな?」
 
「は、はい……」
 
この上まだ、何か無理難題をふっかけられるのか。
クロトは、覚悟を決める。
 
「ドーセルという村がな…… 見つからんのだ」

「……え!?」
 
「遥か遠方の事ゆえ、現在村がどうなっているかは分からん。
 が……
 ゾンビにやられた事を確認した、という話ではない。
 都市連合の公的記録上、ドーセルという村が見つからんのだ」
 
村が、見つからない!?
どういう事だ……
 
没落した血筋とは言え、レットの父親は貴族の家柄に違いはない。
帝国本土に記録が残っていないはずはない。
 
「クロト様…… お話があります」
 
「・・・・・・・・」
 
パウムガルトナーが話に割って入るが、司令は黙って発言を続けさせる。
 
「クロト様も、エリス様と同様に、記憶に損傷を負っているのです。
 クロト様は故郷の事を、エリス様は自身の過去を、私は御主人様の事を……
 それぞれ、忘れてしまったのです」

「僕が…… 故郷の事、を……?!」
 
「クロト様の話では、故郷はドリフターズラストの西、遺跡群を利用した新規開拓地域の村……ですよね?」
 
「はい。 領主様はハイレット公……」
 
「領主ダウレットが治める、スケイル村。
 ではないのかね?」
 
タクロウ司令が、ここで言葉を挟む。
スケイル……? ダウレット……?
 
ドリフターズラストの西、反奴隷主義者に加担した疑いを掛けられ、僻地の開拓任務を与えられた奇特な貴族。
 そして、そのダウレット公に数人の識者が従い、旧帝国の集落跡を開拓した……
 それが、お前の故郷、北スケイル村であろう」
 
そうだ。
その通りだ。
 
なぜ、今まで、そんな単純な事を……
一番大事な事を忘れてしまっていたんだ!?
 
「お前のような「なり損ない」達に、様々な形で精神障害が発生している事…… 報告が何件も上がってきている。
 それを咎める気は無い。
 が、しかし、諸君が正規の侍と同等の働きを出来るかどうか、となると話は別だ。
 任命した私の傷にもなるのでな」
 
「・・・・・・・・・」
 
「今は小僧に話して聞かせてもダメか。
 よし、パウムガルトナーと言ったな。
 君に話しておこう」

 
 

 
 
「まさか、ここまで大事になるとは思っていませんでしたわ」
 
「それだけ、この怪現象に国も本気で乗り出しているという事でしょう……」
 
「クロト、大丈夫? 元気無いよ」
 
「いや、凹んでる場合じゃない。
 ここが踏ん張りどころ……
 空元気でも、堂々と立ち回って見せないと」
 
「貴族との交渉……
 上手く行くといいのですが」

クロト達は、ショーバタイ領主、ロード・ナガタから直接辞令を受ける事となった。
 
そもそもの三姉妹を護送する任務からして、ナガタの秘密を守るための命令だった。
自らの体面を守るためにも、秘密を守るためにも、間に誰かを挟まない方がいい。
そういった意図あっての直接面会…… だろうか。
 
「ロード・ナガタ閣下!
 侍斥候、クロトであります!」
 
「入れ」
 
その声は小さく、力強くは無い。
 
貴族の屋敷と言うからには、もっと豪奢な造りかと思っていた。
意外に質素。

鋼のついたてで侵入者の視線を遮り、屈強な近衛兵が敵を討つ。
華美さより、身の安全に配慮した内装。
 
「話は聞いている。
 こっちへ来い、小僧」
 
「ハッ!」
 
ロード・ナガタは、怪我をしていた。
膝に矢を受け、起き上がれないらしい。

「フン…… ガキの斥候一人でも、今は貴重な戦力だ。
 鍛えれば役立つ。 そうだな? 小僧」
 
「はい! そのつもりであります!!」
 
「元気がいい。 度胸も悪くない。 血筋も悪くない。
 有望なガキだ。
 ……だがな!」
 
「・・・・・・・・」
 
「感染者は安全なのか。
 俺はそれが気に掛かる」

その表情は沈痛なもので、クロトを責めるものでは無い。
 
「報告書を見る限り、事、感染者関連ではお前達は専門家と言っていい。
 これからも調査を続けろ。
 この俺のためにな。
 人類ゾンビ化現象に伴う特異記憶障害…… ゾムネジアとでもしておこうか。
 お前達は引き続きその調査にあたり、定期的に報告を寄越せ。
 なに、ここに戻れとは言わん。
 各地の憲兵隊か、テックハンターに報告を入れればそれで俺達に伝わる」
 
「それは…… つまり……?
 僕は……」
 
「特例を認める」

「対ゾンビ特務調査隊を編成した。
 お前は侍に準ずる階級となる。
 戦いは得意ではないのだろうが、それ以外の力でお前は俺に貢献して見せろ」
 
ふぅ、と息をつくナガタ。
こんなガキに向かって何を言っているんだという、軽い自嘲が浮かぶ。
 
「南部との連絡が取れていない。
 その原因を探る途上、知り得た事を報告すればよかろうよ。
 その任務の上で、南部なり、南西部なり、どこを目指すかは貴様の勝手だ。
 ……俺に恥をかかせるなよ? 侍特務部隊、隊長クロト」
 
「……はい!! あ、ありがとうございます!!」
 
「チッ…… 俺もヤキが回ったな。
 さっさと出ていけ、田舎者」

「出ていけ。
 俺の気が変わらんうちにな!!」
 
その声に、苛立ちが混じり始めていた。
 
「はい! 特務隊、クロト、退出します!」

「クソ…… こんな事になっちまうとは……
 ノーブルハンターめ…… 奴らを見くびっていた……」
 
着物の上から膝をさすり続けるナガタ。
 
痛みは無い。
痛みが無いのが恐ろしい。
 
……その傷は、緑色に変色し始めていた。
 
「もう、ブラッドラムなんざいらねぇ……
 こいつさえ、誰かが治してくれれば…… くそぉぉ……」
 
主君が苦しんでいても、彼らにはどうする事も出来ない。
近衛兵達は目を伏せ、沈黙する。
 
「パウムガルトナーとか言う女を見張れ。
 俺は…… いずれ皇帝になる男……
 ハンターどもさえ、従えて見せなきゃならねぇんだ……
 こんな矢一本で終わってたまるか……
 終わって、たまるかよぉぉぉぉぉっっ!!」
 
 
 

 
 
昇進には、責任が伴う。
早速、クロトは書類の山と格闘する事になった。
 
クロトが事務処理に向かう間、エリスとバウムガルトナーは「業務」に励む事とした。
これからは、クロトは明確に格上。
正規の侍と同等の権限が与えられるのだ。
雑務は自分達で済ませ、彼にはもっと大切な任務にあたってもらわなければ。
 
……と言う事で、エリスを伴い、パウムガルトナーは正門から外に出ていた。
その視界の隅に、一人の奴隷が映る。

「!? エリス様、いけません!」
 
気付けば、エリスが奴隷女の方に駆け寄っている。
 
目の前には侍達の視線がある。
たまたま、今はこちらに注目していないようだが、こんな場所では……!

ノーブルハンターの奴隷には手を出すな。
侍の目の前で奴隷を助けるな。
あれだけ何度も注意したのに、またやってしまった。
 
(やはり…… そうだったのですね)
 
私の時と同じように、無償の慈愛でもって、奴隷を解放してしまった。
パウムガルトナーは、その姿にある確信を持った。
 
幸い、巡回の侍達が傍らを通り過ぎる直前に、足枷を外し終えていた。
なんとか、見咎められる事なく事が終わったようだ。

思わず、ニヤリと口の端が歪む。
 
上手く行った。
パウムの賭けは、当たった。
 
『奴隷役を、一人貸していただけませんか?』

ノーブルハンターに頼み込んだ甲斐があった。
 
あともう一押しか。
 
エリスの記憶を戻せなくとも、これで隠し場所へと一歩近付けたはずだ。
調査を、続行しよう。
 
 

 
 
旅支度は慌ただしくなっていった。
都市連合の侍の一員として、敵襲に対応もしなければならない。
 
市民が英雄リーグ連合に襲われていた。

侍達はあっという間にチンピラを叩き伏せてはくれたが……
 
侍達の傷も少なくはなかった。

治療で貢献しつつ、与えられた権限の範囲内で「稼ぎ」を上げて行く。
 
「このコート気に入っておったんじゃがのう……」
「吾輩らも、しばらくは侍の従卒。らしい格好をせねばなるまいよ」

兜や革鎧を揃え、最低限それらしい姿になるようにと配慮はするが……
やはり、まだまだ「侍の仲間」らしい旅装を整えるには至らない。
 
「圧倒的に、お金が足りない…… ですね」
 
「もっと風格も出して行かなければいけませんよ、クロト様。
 貴方はもう私達より格上。隊長らしい振る舞いを心がけるようにしてくださいまし」
 
「クロト! おめでとう!」
 
「もう、エリス様、これからはクロト様、ですわよ?」
 
「いや、いいよ別に……そういうのは……」
 
そろそろ、今後の身の振り方を考えなければならない。
 
大した功績を上げた訳でもない自分が、特例として侍と同等の身分を与えられたのは、三姉妹の知る「秘密」を、クロトが握っているからだと思われているからだ。
様々な裏の思惑の絡んだ上での貴族の独断であり、ナガタの体面を保つためにも、身なりを整える必要がある。
 
クロトには、ナガタに忠誠を尽くし、期待に応える義務がある。
だが、資金はこの町で稼げたとして、防具一式に関してはそうもいかない。
この町には防具を扱う店が存在しないのだから。
 
「では、次はどこに向かうべきか……」
 
パウムガルトナーが卓上に地図を広げる。

「スロートの町なら、軽装の防具を取り扱っています。
 防具屋、と言うより服屋ですわね。
 筋力不足の私達では侍の鎧は使いこなせませんし、まずはこちらで最低限の服装を整えるのが良いのではないでしょうか」
 
「でも、やはり侍の鎧は隊長として必要だと思うんだ。
 皆には悪いけど、隊長らしい格好はしておかないと……
 使いこなせるだけの筋力も鍛えないといけなくなるけどね」
 
「じゃ、次はヘフト行き、という事かの?」
 
「いや、ストーンキャンプを経由して、まずはスロートに向かおう。
 いきなり皇帝陛下のおわす首都に、この風体で向かうと……ね」
 
「遠慮せんでええよ。 ウチら、いかにもな田舎モンやき」
 
「同感……」
 
ああでもない、こうでもないと、議論を交わしながら今後の予定を立てていく。
 
まず、スロートで身支度を整え、次にヘフトで本格的に「侍の部隊」となる。

ここまでは良し。
 
「問題は、いかにしてクロト殿を故郷へ送り届けるか、だな」
 
「我らとしても、ホーリーネーション領は御免被りたい所存。ニンニン」
 
「それは僕も同感だ。
 オクランの盾がどんな場所か、僕はこの目で見てきた。
 抜け道を通るにしても、延々敵国内を通って南西を目指すのは問題がありすぎる」
 
「かと言って、南東エリアを通過するのはあまりに危険だ。
 新興勢力も現れ、酷い殺し合いが頻発し、熟練の侍達も南部との行き来を諦めているくらいだ」
 
「と、なると、残るは……」
 
「ブラックデザート、ですか」
 
「はい。
 酸性雨が降りしきる危険な土地ですが……」

「複雑で険しい地形に阻まれるアイアンバレーでは、逃げ隠れが難しく……
 また、南寄りのヴェンジでは例の古代兵器が旅人を焼き殺し続けています」
 
「一番マシなのは酸の砂漠越え、となる訳ワケじゃな」
 
酸性雨対策の装備を揃えなければいけませんが……
 それが、弱者である僕達にとって、一番の近道だと思います」
 
「ブラックデザート、デッドランド、シェム、スワンプ……
 そして、クロト殿の故郷、南部都市連合領へ、となるかの?
 フム、フム…… 補給地点が少ないのは困ったものじゃが、やむを得んか」
 
「他のルートよりはマシだろうさ」
 
「まとめると…… こうなりますね」

「ええんやないか? ウチらの目指す農業に向いた土地ってのも、これなら途中で見つかりそうやし」
 
「吾輩とホッブズは、冒険に出る資金も稼がねばならんが、肉体の方も鍛え直さねばならぬ故、しばらくはクロト殿の旅に付き合う事とした。
 何処なりとも引っ張り回してくれい」
 
「我らは何処かで働き口が見つかればそれで構わんでござるよニンニン」
 
「では、このプランで行きましょう。
 砂漠を越え、スワンプを抜け、南方へ……!」
 
「クロト、絶対においらが故郷に帰してあげるからね!」
 
「こうなったら、私達、どこまでも貴方様に付き従う覚悟ですわ」
 
「あ、あぁ! ありがとう、エリス、バム。
 頼りにしてるよ」
 
違和感は強まるばかりだったが、エリスの善意には応えたい。
これからは、いい隊長になってみせなければ……
 
 
 

 
 
とは言え、すぐに旅立てる訳ではない。

手の空いている者は鉱夫業に励み……
 
旅に目的のある者は、自身の夢のために動く。

「うーん、これじゃサボテンも育てへんのやないか?」
「やはり、砂漠……  ここでは、無理ね……」
 
 
また、パウムガルトナーたっての希望で、整形外科医の世話にもなった。

彼は、国指定の戸籍管理者でもある。
 
パウムガルトナーは、ここで髪型を変え……

名前も、正式にパウムガルトナー改め、パムとなった。
クロト達の使うパムという愛称、いたく気に入ったようだ。
 
虜囚から「侍の袴」が手に入ったのは幸運だった。

また、ゾンビの処理でも旅の軍資金は溜まっていく。
 
しばらくのショーバタイ滞在で、たっぷりと汚れ仕事も出来た。

「収穫」は十分。
 
ショーバタイ防衛軍所属、対ゾンビ特務部隊・クロト隊。
出発の時が来た。

一行は再び大砂漠へ……
スロートを目指し、南西へと旅立った。
 
 
 
<続く>


設定:ダメージ2倍
縛り:展開にそぐわない行動は取らない(犯罪行為等)