気刊くろみつタイムス

主にゲームプレイ日記。過去記事一気読みは「目次」からどうぞ! ※他ブログからのインポート引っ越し時に改行崩れ&画像消滅が発生しています。

#Kenshi ZA-40:解明編④

ストーンラット襲撃作戦を成功させたクロト達一行は、夜明けと共に帰途に着いた。

その途上。
夜闇に紛れ、沼地から突然のゾンビの大群。

「どうする! 数が多いぞ!」
「皆さん、走ってください! ここは、コスチュニンさん!」

「了解」
いつぞやのホーリーネーション相手の撤退戦と同様に、頑丈なコスチュニンが盾となって皆の退路を確保する。
が、何体かがコスチュニンの挑発をすり抜け、ミウに襲いかかろうとしている。
「今度は、貴方一人に押し付けたりは……しない!!」

クロトもその場に踏みとどまり、大群相手にたった2名で正面から戦いを挑む。

「作戦--成功」
「ええ! 敵は全て僕らに向かって来ています!」

こうして、辛い戦いを率先して受け持って来た2人だからこそ……
「ハァ…… ハァ…… あ、あれ……? もう終わり……?」
「損傷--軽微」

完勝と言っていい。 驚くほどあっさりと戦いは終わった。
ストーンラットのボスを討ち取り、ゾンビの群れも壊滅させた。
もう、僕達はこの世界の底辺には存在しない。
クロトは切っ先を振って血を払うと、満足の笑みと共に刀を鞘に収めた。

第四部:解明編④ マッドタウンからの出発

戦いに勝利した一行は、再びマッドタウンへと戻った。

これで、ツインブレードから受けた依頼は完了。

その報酬を受取るべき時が来た。

「さて、吾輩はコレをどうすればいいのだ?」

「無論、我ら解体屋が解体するさ。
 その辺りに置いておいてくれ」
「で、約束の報酬だな」
「はい」

ストーンラット討伐の報酬として、ドクター失踪の真実を教える。
そういう約束だ。
いよいよ、長い間探し求めていた真実の一端に迫れるのか……
「フゥ……」
しばしの沈黙を経て、重い口をようやく開くビッグ・ファング。
「俺達は誰も恐れちゃいない」

「だが、俺達は、お前に何も話せない」
「……それが答えだ」
ガタッ、と、椅子を蹴倒してモムソーが詰め寄る。
「ハァ!? ヒトに殺しをさせといて、そりゃ無ぇだろうが!」
「我が主よ、ここは刀を抜くべきなのでは」

デーリアまでもが腰の刀に手を掛ける。
一触即発。
「クロト……」
「舐められてんだぜ、俺達ァ!」
「シェクとして、これは看過出来ん!」
「吾輩も同感だ…… 指示をくれ、隊長殿」
隊長が決断するのであれば、命を賭けて戦うまで。
そういった怒気が満ちている。
皆の視線がクロトに集まる。
「黙れ!!!」
クロトが怒鳴った。
長い旅を経て、こんな叫び方をしたクロトは初めてではないか。
ビクン、と、デーリアの巨体が竦み上がった。
「静かに……してください……」
小さくそうつぶやくと、クロトは静かに椅子に座り、じっと何かを考え込み始める。

そうして、しばらくしてから……
「そう、か……」
クロトの目が見開かれる。
椅子を蹴立てるように突然立ち上がると、頭を深く下げる。
「ありがとうございます! ビッグ・ファング!
 この御恩、絶対に忘れません!」
「さて、な。
 俺は何も言っておらんのだから、感謝される筋合いは無い。
 頭を下げられても迷惑と言うものよ」
ニヤリと笑うファング。
クロトも、下げた頭を上げ、笑顔を返す。
「そうですね。
 貴方は約束を破って何も教えてくれなかった。
 この恨み、覚えてろよ! と、言わざるを得ませんね」
そのまま、クロトは退出しようとする。
モムソー達は訳が分からず、動揺したままクロトの背中を追う。
「お、おい、クロトのあんちゃん! そりゃ、どういう……」
「帰りますよ! 皆さん!」
「待ってくれ我が主よ! さっぱり話が分からんのだが!?」
「いや、吾輩は、少し分かる気がする……」
「私も……」
「マジかよ!? 誰か、俺にも分かるよう説明してくれよぉ!」
「それは、場所を変えてから、ですね……」

慌ただしく退出していくクロト達を、ビッグ・ファングは満足げに見送った。

と、本部小屋を出た、その直後。

「坊主、ちょいと顔を貸しな」

「ファングさん……?」
どうやって外に先回りを……?
まるで瞬間移動したかのような突然の出現に驚かされながらも、クロトはファングに近付いて行く。
「ここからはサービスだ。
 俺の可愛い弟分が随分と入れ込んでるようなんでな。
 ま、黙って聞いとけ」
部下の前では話せない事……か。
少々恐ろしくはあるが、ここは黙って好意に甘えるとしよう。
「きっとお前はスワンプ中をあちこち探して回るのだろうが……
 『ソレ』は、この地には無い」

「!?」
「 『自力で辿り着け』 」

「……と、そう言っていた」
「分かりました」
クロトの額に、冷たい汗が伝う。

目に見えない恐怖の視線を、どこかから感じる気さえしてくる。
ずっと前からそうだった。
僕は、何者かに見られている。
初めは、それは陰に陽に力を貸してくれている浮浪忍者の視線であるように思っていた。
が…… それ以上の何かの気配を、クロトは感じ取り始めていた。
『ソレ』には、揃いの徽章も、制服も…… 何の証拠も無い。
ただ、第六感がそう感じさせているだけの事だったが……
クロトは、無理やり押し殺し続けていた本能的な恐怖を、ついに自覚した。

クロト達はマッドタウンで買い取った小さな拠点小屋に集まり、会議を開く事とした。

沼地の片隅に建つこの小屋は、内密の話をするには丁度いい。
少々手狭ではあるが……

クロト隊の全員が集まり、「話の続き」を聞く事となった。
「つまり、どういう事だってばよ?」

ここから先も付いてくるのかどうかと、念を押すように覚悟を問うクロトに焦れ、不満顔のモムソー。
クロトは苦笑しつつ重い口を開き始めた。
「ツインブレードは、まず初めに何者をも恐れない、と言いました。
 あれはつまり、スワンプを今現在牛耳っている、ハウンズやビッグ・グリムをも恐れはしない、と言っていたワケです」
「おお。そうだな」
「と、なると、彼らがそれでも秘密を明かせないのはなぜか」
「ツインブレードでさえ恐れる者が、他に存在するのよ……」

「!?」「っ!!」
「そういう事か……」
「そういう事です。
 今現在、スワンプには存在していない、真の大首領がどこかに存在する、という事になります」
「その真の支配者こそが、吾輩達が求める真実を握る者、と言う事になる……
 その大首領に辿り着きさえすれば、ドクター失踪の件、クロト殿の故郷の件にも、回答が得られるかもしれぬという訳だ」

「大首領とは、言い得て妙ですが。
 ……60点」
シルバーシェイドが、馬の後を受け、語り始める。
「ビッグ・ボス」

「その大首領は、ビッグ・ボスと呼ばれています」
「シルバーシェイドさん!? 何か知っているんですか!?」
「私はビッグ・ボスに大きな借りがありましてね……
 クロトさんに私のこの身を請けてもらう時、借金の返済を頼んだでしょう?
 あれも、その借りの一つでして」
「何か、居場所に繋がる手掛かりは?」
「50点。 ボスは変装の名人との事。足取りを辿られぬように常に気を配っているようでしてね。
 声を聴けば、本人と分かるやもしれませんが……」
「ビッグ・ボス」

「ハウンズが、グリムが、俺達の大親分、ビッグ・ハッシュを謀殺する際、グリムに悪知恵を授けたのも、そのビッグ・ボスって野郎だぜ。
 先日、留守中のブラックシフターのアジトに潜入して見つけたメモの写しが、これだ」

その文書の内容からは、ビッググリムが、当時スワンプを牛耳っていた2大組織、ストーカークランとブラックシフターとの間に亀裂を入れるべく工作活動を続けていた事が伺える。
麻薬を売りさばくだけの弱小組織に過ぎなかったハウンズが、なぜ突然に知恵を巡らせ、恩顧有る大親分であるハッシュの暗殺に動き出したのか……
ハウンズを、グリムを焚き付け、作戦を耳に囁いた誰かがいたという事だ。
そして、その誰かこそ、この勝利宣言の手紙を送った相手、ビッグボス……
「俺のゾムネジアは、どうやらハッシュの親父が暗殺された事件の真相の忘却、だったらしい。
 浮浪忍者の姉ちゃん達に頼んで、手掛かりを追って、この文書を見つけた時、忘れていた過去が蘇って来たって訳さ」


「ご存知の通り、以前の俺はストーカークランの殺し屋。大親分の舎弟だ。
 真犯人であるハウンズを許せるはずもねぇ。
 ドクター・チュンの整形手術を受け、外見を変えながら戦い続け、クランが壊滅した後もずっと一人でハウンズを殺し続けた。
 ……あの日が来るまでは、な」
転換の日が来て、殺しの出来る体では無くなり、おまけに記憶喪失によりハウンズを憎む理由すら失くしてしまった。
後はハウンズにされるがまま……
薬漬けにされ、日銭を稼いではヤクと酒に溺れる毎日。
心の奥底に、理由すら分からないぼんやりとしたハウンズへの怒りだけを抱えて……
「だが、結局大親分の本当の仇は、ハウンズのビッグ・グリムじゃあ無かったワケだ……」
「グリムに命令を下したビッグ・ボスこそ、真の仇……ですね」

モムソーの言葉を継ぎ、ブロージオが懐から一枚の紙片を取り出し、傍らのヤノルスも頷く。
「これを見てください。カイネンさんとパスクリさんが、ロットでのハウンズとの会合時に密かに持ち出した文書の写しです」

それは、スワンプを麻薬天国へと作り変えた張本人が書いたとしか思えない内容。
ビッグ・ハッシュは一般市民に麻薬を売ったり、借金漬けにしたりといった、弱者を食い物にするやり方を決して許さなかったと言う。
で、あれば、その仁義ある大親分に守られていた町を犯罪漬けにしたこの人物こそが、ビッグ・ボス……
(浮浪忍者は、もっと以前からとっくにビッグ・ボスの存在を知っていたのか……)
ピカリングさん、パスクリさん、カイネンさん…… それに……
皆が僕を遠ざけたがっていた、巨悪。
どうやら、その巨悪に近付くための最初の手掛かりに辿り着けたらしい。
クロトは一つ大きく息を吸うと、皆に向き直り、力強く宣言する。
「これからの僕達の旅の目的が決まりました。
 ビッグ・ボスを探す事…… それこそが、この旅の終着点になるはずです」

「で、でも、クロト…… そんな事をして、本当にいいの?
 ツインブレードでさえ恐れる、影の大物なんでしょ?
 嗅ぎ回ったりしてたら、私達の命なんて簡単に……」

「それは、大丈夫、らしいですよ」
伝聞形で話すクロト。
何人かの仲間は、ああ、去り際に呼び止められていた時に話していたのはそれか、と察しを付ける。
少なくとも、ビッグ・ファングは協力的だ。直ちにツインブレードの刺客が殺しに来ると言う事はないだろう。
それに……
『自力で辿り着け』
そう言ったのであれば、ボス本人もまた、殺意を剥き出しにはしていないという事であるはずだ。
クロトは多くを語らなかったが、その笑顔でもって仲間達を安心させた。
「しかし、いいのかい? モムソー君。
 大親分ハッシュを暗殺した張本人はグリムで、その指令を下したのがビッグ・ボスという事になるのだろう?
 グリムは今では我々の間接的な同盟者だし、ビッグボスはクロト君の求める情報を握る重要人物だ。
 君の果たすべき復讐は、特務部隊の趣旨と相反する事になるのではないか?」

「それは、ハムートの旦那だって似たようなものだろ?
 憎き都市連合の貴族の息の掛かった隊長の下でこうして働いている……
 それは、どうしてだ?」
「それは……」
「復讐以上の何かを、この特務部隊なら出来るだろうって、そう思ったんだろう?」
「……そう、かもしれないな」
互いに、苦笑いを交わすモムソーとハムート。
それでも、ミウの表情は曇ったまま、晴れない。
「私は、心配なの……
 クロトが本当に危険な相手に挑もうとしているようで……」
「ならば…… 守ろう」

「このオレが、我が身に代えても我が主を守り抜こう。
 いや……
 皆で、だ。 皆でクロトを守り、世界の影でニヤついているそのボスとやらを引きずり出して見せようではないか」
デーリアが不敵に笑うと、皆もそれに釣られて笑顔になる。
これは、調子に乗った弱者の「粋がり」に過ぎない。
それは、この場にいる全員が理解している。
それでも、怯える心を無理やり笑い飛ばし、なけなしの度胸で歩き始めるしかない。
気づいてしまった事、知ってしまった事に背を向け、怯えながら後ろ向きに生きていく事など、もう彼らには出来ない。
自由と、勇気と、信念を、彼らは既に味わってしまったのだから。
「どうせ、もう皆降りる気はないのでしょうから…… 僕はもう、頭を下げません……」
その信念を打ち立ててしまった者の責務として、クロトは今初めて……
自身と仲間を、隊長と部下であると認識した。
自分の責任で、自分の命令で、命を掛けるに値する戦いへ、部下を率いて起つ。
「特務部隊の任務とは、本来ゾンビ事件の謎を追うものでもありました。
 僕は、ビッグ・ボスを追う事で、「転換の日」の謎にも迫る事が出来るのではないかと……そう思っています。
 推理と言うには余りに手掛かりが乏しく、ただの希望的観測にしか過ぎませんが……
 全ては、これからです!
 僕に、力を貸してください!
 僕達みんなの力を合わせ、真実を解き明かしてみせましょう!」
全員が、拳を握り、おうと応える。
長い旅を経て一つとなった心が、輪を描いた瞬間だった。
ただ一人、暗い顔のままのミウを除いて……


「お父様」

「・・・・・・・」
もしかすると、これが最後になるかもしれない。
旅立つ前に何か話しておかなければ、と、そんな焦りがダルパンに行動を起こさせていた。
「私は……何が待っていようと、最後までクロトと一緒に真実を確かめたいと思っています」

立ち止まらず、歩き続けるトルチャ。
歩きながら、大きなため息をつき…… 小さく、それでいて力強く言い放つ。
「勝て」

ただ、その一言が、不器用な父に出来る精一杯の励ましだった。
その背を見送りながら、ダルパンもまた、一言だけを返す。
「はい!!」

その力強い宣誓は、最早この世の全てに怯えていた少女のものでは無い。
幾つもの戦いを経て、勝ち取る力を備えた一人の戦士の、勇気ある誓いだった。
ダルパンは足取りも軽く、皆の待つ仮宿舎へと走った。

決して強くはない。
未だ、弱者である事に変わりない。
それでも…… 彼らは、私達は、成長を続ける。
時に絶望を貫き、一撃を放つ。
もう怖くない。
彼と、心は一つなのだから。
<続く>


設定:ダメージ2倍
縛り:展開にそぐわない行動は取らない(犯罪行為等)
注意:当ブログの記事内の設定はKenshiの公式設定とは異なります