気刊くろみつタイムス

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#Kenshi ZA-26:西部編③

大陸の端から端まで旅して、やっと…… 辿り着いた。
あれが、故郷。

住む者無く、誰も寄り付かなくなった、見捨てられた街……


第三部:西部編③ 見捨てられた街

北スケイル村。
漁業・農業共に成功し、魚の鱗が陽光を浴びて輝く様から名付けられた村。

数千年前には大きな街だったようだが、今ではその名残りはごく一部の遺跡が残るのみ。
後は、開拓者達が立てた家屋だ。
その、懸命に働いた大人達の血と汗と涙の結晶が……
今では、無残に打ち捨てられている。

「ただいま……」

病で、そう長くはないと言われていた母さん。
侍になって帰ってくる頃には、もう生きてはいないだろうと、覚悟をし、別れも済ませていた。
それでも、辛くない訳がない。
物心つく前から、ずっとこの家で育って来た。

レットやミウと共に野山を駆け、暗くなれば、帰れる家がここにはあった。
安らぎの場所。
故郷。
自分の家。
「もう、誰もおらんのじゃな……」
ここで自分の事を知っている人間が誰か見つからないものかと、そう思っていたが……
やはり、クロトの話通り、生存者は誰もいないようだ。

野盗なり、放浪者なりが住み着いているのであれば、焚き火の跡くらいは残っていそうなものだが、それも無い。
(死体が無いというのも、良いのか悪いのか……)

全員死んだと言うのであれば、諦めもつくだろう。
故郷を目指す旅が終わった今、新たな生き方を始める良い機会となっただろう。
だが、ドッグレットも、クロトの母も、その死が確認出来ない。
あの少年は、これからも重荷を抱えて生きなければならない……
クロトは、領主の屋敷……
レットの家を探る。

約束通り、侍になって帰ってきた。
それなのに……
何か、何か少しでも、逃亡した可能性を示す痕跡が残っていないかと、懸命に探した。
が、しかし……
散々侍達が調査をした後で、都合よくそんな物が見つかるはずもなく。
クロトの旅は終わった。
無為に、何事も無く……
長い長い旅が、今、終わった。

「おっ! ボスぅ!
 やっぱこういうトコにゃ放浪者が居着くってぇ、狙い通りっすね!
 ガキとジジイと…… ヘヘ、いい獲物がいやすぜ!」

「バカもん! よく見ろ、ありゃ侍だ。 手は出せんわい」
「ちぇ、あの緑の髪の女なんて、高く売れそうなのによぉ!」
通りすがったのは、奴隷商人の一団。
クロトがいなければ、間違いなく襲いかかられていただろう。
「チッ、ハムートの気持ちがよく分かる。 下衆の外道が……」
「まあ、そう言うな……
 ああいう手合いに商品にされたお陰で、ミウもハムートも生き伸びられた……
 確かに、人を人とも思わぬ邪悪そのものではあるが、それで、死ぬはずだった命が助かる事もある……」
デーリアが毒づき、ドクターが応じる。
スワンプで多くの犠牲者を見てきた彼からすれば、殺されないだけマシ、と言いたい気持ちにもなるのだろう。
「クロト様が目指す理想のように、弱者が共に生きる形が……この世界には必要なのでしょうね」
「死と暴力の無い世界……か」
JRPG種として苦労をしてきたフェルンも、殺しの世界で生きてきたグリーンも、共に、その理想を理解し始めている。
あのような必要悪が必要とされない世界を作るためにも……
最底辺の人間が集まって生きる道を示す……特務隊の戦いは、意義のあるものなのだ、と。
「さあ、どうする、隊長」
その、外道達が襲われている。
こんな世界の端の端、辺境の村にまで、ゾンビの群れが現れている。

「僕は…… 今、無性に、戦いたくて仕方ないですから……」
「ああ、人助けと行こうか」
クロトとデーリアが揃って切り込み、フェルンとグリーンが後方から援護射撃を行う。
ドクターは負傷者の治療に向かった。

「うおおぉぉぉぉぉっ!!」
行き場の無い怒りをぶつけるように、ゾンビに向かっていくクロト。
調子は悪くない。 ここまでの旅路で戦闘経験を積んできた成果が出ている。

「3体目!」
「流石は我が主、名実共に侍らしく…… 後ろッ!!」

背後で戦っていた奴隷商の一団が全滅したようだ。
彼らを倒し終えたゾンビがクロト達に襲いかかり、挟撃を受ける形となる。
「離脱します! 川に向かって撤退を!」

倒れるまで踏みとどまるのは危険だ。
限界が来る前に離脱を始めるが……
「デーリアさん!?」
「構うな! ここが忠義の見せ所よ!」

撤退時に足に攻撃を受け、デーリアが逃げ遅れた。
「デーリアさん!!」
甲冑があるからと、任せすぎたか。
ついには敵中で倒れてしまう。

幸い、起き上がった奴隷商がいるお陰で放置されている。
今のうち。急いで助けに戻ろうとするが……
「任せろ、クロト」

グリーンとフェルンがゾンビを狙撃。
安全を確保した所で素早く2人がデーリアを救出する。

射撃を続けながら後退を開始するフェルン達だったが……
奴隷商人の救出は諦めざるを得ない。
さらなる大群が姿を現し、倒れた奴隷商に喰い付いている。

川を渡れば、ゾンビ達はもう追って来ない。

「もう、大丈夫だ…… 下ろしてくれ……」
デーリアも意識を取り戻し、五人はようやくホッと一安心する。
が……
無傷なのはフェルンだけか。
酷い有様だ。

「撤退しましょう……」
その声は、いつも以上に沈痛で、重かった。
もう油断はしまいと誓ったばかりだったというのに……
クロトが動揺状態にあった事は分かっている。
だれが責められようか。
失われた故郷で、ゾンビの群れが人を喰っている。

「何も無い」事は覚悟していたクロトだったが……
現実はそれ以上の過酷さを見せた。
なるほど、人狩りが闊歩し、ゾンビが人を喰う世界……
街が見捨てられた地となるのも無理からぬ事だ。

見るべきものは見た。
帰ろう。
みんなの所へ……
クロト達はドリフターズラストへ戻った。

受けた傷を癒やし……

奴隷商を襲った惨劇を司令に報告。

報告を終えると、ローニン司令は「気にするなと」言い、仲間の元に戻るよう指示。
奴隷商のために救出の部隊を編成するような余裕も義理も無い。
奴隷商人のやりたい放題の行状は、日々街を騒がす原因ともなっている。

反乱農民や、蛮族の襲撃……
その度、奴隷商がよろこんで「収穫」を行い、侍に利益が還元される事はない。

ゾンビの襲撃かと思い飛び出したクロト達だったが、「反乱農民」と、シェクの賊「バンドオブボーンズ」が同時に襲撃を行い、互いに争ってロクな抵抗も出来ないまま侍に討ち果たされたようだ。
このような都市襲撃は日常茶飯事だと言う。
武力をもって苛烈な処罰を与えるレディー・メリンの治世、汚職にまみれた前任者よりマシとは言っても、上手く行っているとは言い難いようだ。
昔は、こうではなかった……
汚職にまみれてはいても、平和ではあった……

農民にまで被害が出ている。
反乱農民とは言っても、苦しんでいる農奴の味方などではない。
奴らは略奪のためにやって来ただけ。

これが、人間の世界か。
たまらなく、胸が痛む。
なぜ、手を取り合えない。
なぜ、奪う事しかできない。
父達のように皆を守ろうとせず、母達のように開拓しようともせず、村の皆のように食料の生産をしようともしない。
こんな所が、故郷か。
「出発しましょう」

黙ったまま歩き続けるクロトの背中に、仲間達は掛ける言葉を失う。

一方その頃……
「そこのお2人さん、危ないよ」

ミウとモムソーに、一人の男が声を掛けてくる。
「なんだ? おっさん、何の話だ」
「あんた、形成外科医かい?」

「『転換の日』以来、色々と症例を見て来たがね……
 その二重処置は、危ないよ……
 いずれ、命に関わる…… お兄さん、どれくらい経つね」
「親分が死んでから…… 半年と少しになるか……
 チッ、医者なら見て分かるのかよ」
「特に君は分かりやすい。 その銀色の目でね」

「そちらのお嬢さんはもっと悪い。
 無理を重ね、内蔵に負荷も掛けているはずだ。
 悪いことは言わん、元に戻した方がいい」
「ええ、私も分かってる。
 でも、掛かりつけの医者が、腕を悪くしててね。
 ……で、あんたは幾らで請け負うって言うんだい?」
「200cat」

「へぇ、どういう風の吹き回しだい。
 わざわざ脅しみたいなセールストークをしておいて、その値段ってのは」
「なに…… ワシもアンタ達を追ってる連中を好かんだけさ」
「なら、頼もうか。
 私の都合で隊長に迷惑も掛けられないしね……」


「へぇ! それが本来の姉ちゃんかい!」
「ドクター・チュンの腕は天下一品でね。
 体格を大きく見せてくれてたのさ。
 荒れ放題のスワンプでも舐められないようにってね」
「いくら育ち盛りと言っても、流石におかしいと思っていたが……
 そういう事だったのかい、ミウちゃん」
「ああ…… 子供一人で生きていくには、シャークの町はあまりに危険すぎる。
 それはあんたも分かるだろう? ハムート」
「確かに……
 ビッグ・ハッシュが死んでから、ここ数ヶ月、クラン派の刺客はハウンズに恭順を誓った我々までをも狙って来たからな……」

チラリと、ハムートの視線がモムソーに向かう。
「ま、悪く思うなよ。
 俺の方だってな、クスリまみれのスワンプを今も認めちゃいねぇんだ。
 その時が来れば、いつだって俺は刺殺屋(スタッブス)モムソーに戻るぜ?」
そう言ってニヤリと笑うモムソーには、その二つ名に負けない凄みがあった。
「で…… ウン、悪かねぇな! べっぴんさんだ。
 これじゃダルパンちゃんがまた嫉妬しちまうんじゃねーの?
 クロトのあんちゃんと背の高さは同じくれぇか」
「フフ、あいつの方が年は一つ上なんだよ」
「マジか!! 隊長さんよりずっと大人びて見えるぜ?」
話をはぐらかされ、憮然とした表情のハムートだったが、彼も分かってはいる。
ビッグ・グリムの支配する今のスワンプが、以前より酷い、弱者を踏みにじる社会になっているという事を。
彼らクラン派がグリムの暗殺に成功していれば、今よりスワンプはマシだったかもしれない……
「それじゃ…… ありがとう、ドクター」
「どういたしまして、じゃ」

名も知らぬ外科医のお陰で、ミウはこの後の追跡を振り切る事が出来た。
いずれまた追われる事にもなるのだろうが、時間稼ぎにはなるだろう。
早めにここを出発したいものだ。
出来得る事なら、どこか、遠くへ……

クロト達はウェイステーションまで戻り……

クラウンステディに帰り着く。

「今、戻りました」
言葉少ない隊長の様子に、一行は旅がどのようなものであったのか、おおよそを察する。

「あれ…… ミウ?!」

「クロトにとっては、この姿の方が馴染みがいい、のかな?」

「あ、ああ……
 そう、これが本当のミウ……って、どうして!?」

ミウは、スワンプで一人で生きていくため、ドクター・チュンが腕を振るい、大掛かりな手術をしてくれた事を伝える。
そして、その事をドクターが覚えていない、という事も。
「いずれ体に無理が出るのは分かってたけど、あの人はもう、ヤブ医者同然みたいだから、ね……」
「すごい人だったんだな、先生って……」
形成外科医が骨格すらも変えてしまう技術を持っているとは聞いていたが、実際目にすると驚きを禁じ得ない。

「どうも最近、私達の事を嗅ぎ回ってる連中もウロついてるみたいだし……
 丁度いい頃合いだったかも。 外科医さんには感謝しないとね」
「ああ……」
クラウンステディ滞在中、特務隊の面々が何者かの尾行に気付く事がしばしばあったらしい。
思い当たる節は幾つか……
いや、幾つもある。


(手術の事は忘れろ…… か)
その手術と言うのが、この…… ミウの手術だと言うのなら……
ミウもまた、ただの逃亡奴隷ではなく、何かを知っている?
ケルトンの襲撃、南東での奴隷生活、都市連合での奴隷生活、スワンプへの脱出……
ミウがそれを自覚しているのかどうかも分からないが、彼女は苦しみの旅路の途中で、何かを知ってしまった?
それを聞くのは、躊躇われる。
彼女のトラウマを掘り起こしてでも知るべきこと、とは思えない……
それよりも今は、先にするべき事がある。
クロトは、卓上に地図を広げる。
「北に向かいたいと思います」

「義足かの?」
「ええ、ホッブズさん。
 ここからずっと、スワンプ西端を北上して行けば、ハイブの村があります」
「吾輩らの足でそこまで、となると…… 結構な難行であるぞ」
「ですが、東……悪名高い奴隷商人の支配地に向かって行っても、義足が見つかるとは思えません。
 一番近い場所、となると、やはりハイブの村ではないかと」
「情報--提示」
「おお、コスチュニン殿、何か知っているのか?」
コスチュニンの機械の指が、トントン、と、クラウンステディの北西を指し示す。

「おお、そうか、グリッドか! ここからなら遠くないのう!」
「ウム…… 賭けではあるが…… 可能性はあるな」
グリッド。
古代の工場施設跡……
こう言った遺跡では機械義肢が見つかる事も多いと言う。
運良く、失った部位の義足が見つかるかどうかは賭けだが……
「行きましょう。
 グリッドを経由し、ウェイステーションを経由し、シェク領、そしてハイブ村へ……
 この途上で義肢が見つかれば、そこでまた、次どうするかを考えましょう」
「何をするにも、まずは仲間を助けてから、という事だな?」
「はい。 2人の義足を確保、これを最優先事項とします」
「いいじゃねえか。今どき珍しい、義理人情のある隊長さんだぜ。
 それでこそ、俺の見込んだ男だ」
「そんな大げさなものじゃないですよ……
 ただ、何も、僕個人としての目標が無くなっただけ、なんですから……」

「出発だ。 行くよ、シェイ」
「いつもすまないね、グリーン」

「さて、何なら、オレが担いで行ってもいいが……」
「いえ、クロトがいいです」
「ハハ…… 分かった。 頑張るよ」

「ダルパン、いい調子だ。
 あんたも中々言えるようになってきたじゃないか」
「これからは、クロトを困らせて行こうと思います」
「はっはっは! 結構結構! しっかり困らせてやるといい!
 我が主には目標が必要だからな!」

人一人を担いでの旅、辛くないはずもない。
だが、その重さが、今のクロトには心地良かった。
暖かく、自分を罰する重さが、今のクロトには心地よかったのだ。
一行はクラウンステディを出発。

故郷を目指す旅を終え、新たに……
仲間のための旅が始まった。
 
 
<続く>


設定:ダメージ2倍
縛り:展開にそぐわない行動は取らない(犯罪行為等)
注意:当ブログの記事内の設定はKenshiの公式設定とは異なります