気刊くろみつタイムス

主にゲームプレイ日記。過去記事一気読みは「目次」からどうぞ! ※他ブログからのインポート引っ越し時に改行崩れ&画像消滅が発生しています。

#Kenshi ZA-17:スワンプ編②

四人の仲間を新たに加え、クロト、ホッブズ、馬の特務隊はブラックデザートに向けて旅立った。

砂漠を抜け、スワンプを抜け、遥か南西、クロトの故郷を目指して……
幾らかの旅支度を終え、砂漠を西へと進む。

一日の契約だった傭兵達と別れ、たった二匹のボーンドッグ相手にも苦戦する有様。

先が思いやられるが…… 今更引き返すような距離でもなく、被害は許容範囲。
このまま、前進する。

やがて……
ブラックデザートの脅威、その最初の1つが姿を現す。

毒ガス。
吸い込めば肺を痛めつけられ、深刻なダメージを負う。
酸性雨対策はして来たが、このガスの対策は出来ていない。
目で見て、避けて通るしかない。
幸い、ゆっくりと風に煽られ移動していくガス塊を避けて進むのはそう難しい事ではない。

 



風向きを見て、その軌道と重ならないよう、慎重に歩みを進めていく……
と、前方に、昼尚暗い、闇の塊のような空間が出現する。
「あれがブラックデザート第二の脅威、「闇」だ。
 外界を隔絶する盾であり、また、旅人を惑わす呪いでもある……」
馬は長い探検の経験から、ここを通った事もあるようだ。
経験者がいるというのは、クロト達にとって大きな安心材料となった。
「こんなヤバそうな中に突っ込んで、本当に大丈夫なのか?」
「呼吸は出来るんだろうな」
「何、空気は悪いが、毒性はほぼ無い。
 待機中に存在する塵が光を通さぬからこうなっておるだけだ」
「それ……ぼくたちが吸い込んで大丈夫なの……?」
「グレートデザートの砂嵐同様、口元を覆っていれば問題ないそうです」
クロトも情報としては知っている。
大砂漠の西、死の世界。
その真の恐怖は、ガスでも、闇でもない。

ガス雲が徘徊するブラックデザートを抜ければ……
そこはもう、「デッドランド」と呼ばれる、有機生命体を拒絶する土地。
第三の脅威、酸性雨が一行を襲う。

「おお、快調快調! コートのお陰で肌の痛みは皆無じゃな!」
「このブリキ缶みたいなヘルメット、雨もガスも防いでくれて、ありがたいです」
「見た目は最悪なんだけどねぇ~~」
「サイズがややオレには合わんが、まあ、急遽用意したにしては十分。
 感謝するぞ、我が主よ」
エリスが置いていった兜を、今はシェク人であるデーリアが装備している。
頭に生えた角の形は人それぞれで微妙に違うようだが、なんとかなっているようで一安心だ。
他のメンバーが着ているのも、それぞれ、別れていったメンバーが使うはずだった耐酸性装備だ。
防御力には不安があるが、資金不足の今、とりあえずの旅装としては十分……としておくしかない。
「きゃああぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「おおっ!!」

第四の脅威。 落雷。
実際には、これに直撃されて命を落とす事は、美味いダストウィッチにありつけるくらいに確率の低い事故でしかないのだが……
旅慣れない者に恐怖と混乱を与えるのに十分な効果がある。
「吾輩も最初は驚いたがな。
 いやなに、慣れてくれば、むしろ闇夜の灯火としてありがたいくらいでな」
「ぼ、ぼくは、慣れられそうもないのです……」
「やれやれ、本当に臆病だなダルパンは」
酒場の長逗留で顔見知りになったらしいデーリアとダルパンは、よく軽口を叩き合っている。
いや、どちらかと言えば武人肌のデーリアが一方的にダルパンをからかっている、と言った感じか。
「おっと、娘さん、もうチョイ左じゃ!」
「わわっとォ! あっぶね!」
「よく見えるな、この暗闇の中で……」
「先の落雷の際、足元を確認しておいたでな」
常に酸の降るこの地では、流れる川の水も強酸性。
足を突っ込めば無事では済まない。

「おお、いよいよだぞ! あの灯りが見えるか?
 あれが、吾輩も一度世話になった……」

第二部:スワンプ編② ブラックデザートシティ

雷光が市街を照らす。
鋼鉄の都市。 ブラックデザートシティ。

「おおーーーっ! すげーーっ!」
「見事な物だな!」
「ケケケ、スケルトンの町かぁ~ 金儲けの臭いがするねぇ!」
一瞬の閃光だったが、その威容に感嘆するには十分。
グリームとデーリアが歓声を上げる。
「こらこら、油断大敵。 周囲の警戒を怠るでない」
「ひゃあっ!!」

前方に怪物の影を見つけ、ダルパンが悲鳴を上げる。
「ああ、アレは心配無い。 吾輩も初めて見た時は驚いたがな」
アイアンスパイダー。
『古代の機械』と呼ばれる、第二帝国の遺産。
命じられた仕事を数千年に渡ってこなし続け……
酸の侵食か、砂塵の侵食か、ついに動けなくなってしまった機械兵器。
オクランの盾周辺で偵察任務に就いていた頃には割と頻繁にまだ動いている個体も見かけたが……
幸いなことに、この暗黒の砂漠では動く個体は希少なようだ。
「突然動き出したり、しませんよね……?」
「大丈夫ですよ。 独特の駆動音がしてませんし」
「ほう、クロト殿もなかなか、若いのに経験を積んでおられるな」

「静かに! 左前方、水中……!」
側面を偵察していたスヴェアが鋭く小声で警戒を飛ばす。
酸の川の中から、ザブザブと音を立て、ゾンビの群れが姿を現す。

(あいつら、酸が効かないのか……!?)
奴らは体組織全体が変異している。
耐酸能力を持っていたとしても不思議は無いか……
酸の水滴をポタポタと滴らせながら、ゾンビの群れはそのままブラックデザートシティの町のど真ん中へと歩み始める。

「なるほど、スケルトンは襲われないから、町を通過しても戦いにはならない、と……」
「さすがのアイツらも鉄は食えねーか」
しばし、暗がりに身を潜め、一団が町を通り過ぎるのを待つ。
「襲われないなら、それはそれで、有利に戦えそうですよね。
 スケルトンは…… 人類の味方をしてくれないのでしょうか」
ケルトンが味方についてくれれば、世界からゾンビを駆逐する時も早まるだろうに、と、クロトは溜め息をつく。
「ほれ、クロト殿、あそこの目立つヤツを見てみなされ」
ホッブズが声を潜めながら指差す。

「なんだ……!? 皮を、切り取ったのか?!」
「鈍重で腐った死体のような連中ばかりであれば、ワシも馬も冒険の旅を諦めんかったワイ。
 ああいった変異種が2~3体混じっておれば、ステーションも陥落しておったよ。
 スケルトン達がいかに鉄の体を持っていようと、死ぬ時は死ぬ。
 人類を避けてこんな場所で暮らしている連中が、人類のために命を掛けて戦ったりはせんじゃろうて」
「僕らの目線で考えてはいけない、という事ですか……」

人類同士ですら結束できていないのだ。
ゾンビが世界共通の敵である、という認識自体、改めなければならないか。
「……よし、行ったようだ。
 吾輩の後について来るのだ。こちらの坂道から町に入れる」
「ようやくかい! 待ってたよ~~~」
馬の先導で、一行はブラックデザートシティの市内へと歩みを進める。
「ほう、機械人間も酒場を建てるのか」
「ようやくまともなメシにありつけるか?」

「ああ、いや……ここで食料の補給は出来んぞ」
「クッ……」
大柄のシェク女性デーリアは、連日の干し肉生活に少々うんざりもしているようだが……
馬の話では、この町では酒以外人が口に出来る物は売っていないらしい。
「酒じゃ、酒! ワシらが飲めるのはあるのかの!」

「おや、いらっしゃい。また生身の客かい、歓迎するよ」

「グロッグ4、水3、後、寝床を頼む」
「まいどあり」
手慣れた様子で馬が支払いを済ませると、ホッブズは早速席に着き、冷えていないグロッグに文句を言いつつも、杯を傾け始める。
「あれが噂のシェク…… 角まで生えてくるとはな」
「あれからどれだけの時が流れた?
 ティンフィストがマトモだった頃が懐かしい」
「やれやれ、また騒がしくなったものだ…… 静寂を返してくれ……」

「とうとう世界の変化が始まったか。
 恐ろしい…… 関わるまい、あのような者共には」
ケルトン達が、独特の甲高く震えるような声で囁き交わしている。
発声器官すら錆びついているかのような、か細い音。
人の通らない暗黒の町にあって、常ならば会話をする事自体が稀なのだろう。
「ふぃ~~ ま、イマイチではあったが生き返った心地じゃわい!」
「不死の人間新種は凶暴だ。だのになぜ、今になってここを通る人間が増えたのですか?」
酒場のマスターは、闇と毒と酸性雨のリスクを取ってでもここを通過する旅人が近年増えている事を不思議に思っているようだった。
「吾輩達は、不死種……ゾンビを避けている訳ではないのだよ、店主殿」
「ほう、つまり、人同士の争いを避けているのですね」
ホーリーネーションの連中は相変わらずでな……」
ホッブズと馬は旅慣れた口調でスケルトンのマスターと噂話のやり取りを始める。
「僕らも一息入れましょうか」
「賛成~~~」
「オレは戸口を見張っていよう」
「助かります。後で交代しましょう」
ゾンビが近くを徘徊しているのは確かだ。
デーリアに見張りを頼み、一同は卓を囲んだ。
「うわ、本当に酒しか無い……」

商取引の絶好の機会とばかりに、グリームは品揃えの確認をするが……
スワンプの荒くれどもが好みそうな商品は無い。
舌打ちして席に戻ってくる。
「……と言う訳で、僕は故郷を目指しているのですが、その故郷の記憶があやふやなんです」

「吾輩達も、どこかで記憶に問題を抱えておるのかもしれんという事だ」
「まあ、ワシの場合は酒のせいで年中記憶なんぞ飛んでおるがの!」
改めて、クロト達は互いの情報を交換していた。
『転換の日』に発生したゾンビ化現象に伴う、謎の弱体化現象……
肉体の変異だけでなく、精神にもダメージを与えた、『ゾンビ・アムネジア』。
その詳細は未だ謎に包まれたまま。
これらの現象の調査は、彼ら特務隊の本来の任務でもある。
「吾輩は、自分の知っておる財宝の伝説が正しいものなのかどうか、疑っている。
 皆もそういった心当たりはないか?」
「アタイは…… 子供の頃の事、あんまり思い出せない、かな」

「ぼくは、自分がどこから来たのか、覚えてないんだ……」

「私は身に覚えが無いな。
 そもそも、何を忘れたのかを忘れているのだから、考えても仕方ないだろう。
 ああ、デーリア、替わろう」

見張りに立っていたデーリアが席に着く。

「ありがとう。
 ……ああ。 話は聞いていた。
 オレも自覚は無い。別段気に掛かる事は思いつかないな。
 それより、肉体が弱りきった事の方が深刻だ」
エリスのように、周囲が変化に気付けた場合は本人も自覚出来るが、誰かがきっかけを作ってくれなければ、永遠に気付かない事もある、か。
あるいは、思い出さない方が幸せ、という事もあるのかもしれない。
僕も、もし故郷が、レット達が、ゾンビに襲われて滅ぼされでもしていたなら、故郷の事をすっかり忘れ、一人の侍として生きていく方が……
いや、だめだ。
こんな事を考えていては……
レットは生きている。 村は無事だ。
そう信じて、南を目指すしかない。
「ツマリ、人間もメモリーをリセット可能になったという事ですか。
 タイヘン興味深いですね」

突然、臨席から声が掛かる。
「人間も、と言うと……
 貴方達は記憶を消す事が出来るのですか?」
「悪いが、立ち聞きさせてモラッタ。
 この類似性は研究対象として、深く知る必要がアル」
先程からずっとでヒソヒソと囁きを交わしていた2体のスケルトンが、こちらに近付いてくる。
「お、なになに? 特務隊さん、貴重な情報ゲットのチャンス?」
「ソウデスネ。 情報共有レベル1の権限で、君たちと討論を行うのもいいかもしれません。
 ドウデショウ、ベッカムさん」
「ああ、同意スル。
 ゾムネジアに、弱体化…… 奇妙な符号ダ」
酒場の常連客らしき2人のスケルトン、エレマイアとベッカムが席に加わった。

「マズ、私達の長生きの秘訣から、少しお話しておきましょう」
背が高く、発声のイントネーションが口頭に来る方、エレマイアが、語り始める。
「ワレワレスケルトンは、長い長い時を生き、膨大な記憶情報の蓄積を続けています。
 デスガ…… 人間がそうであるように、私達の記憶容量にも限界があります。
 ソコデ、精神を平常に保つため、定期的に記憶を消去する必要があるのです」

「それも、選択的に、不要な部分を、ダ」
相槌を打つのは、背が低く、イントネーションが語尾に来る方、ベッカム
「ミズカラ不必要だと判断した記憶や感情を切り捨てる事で、負荷を軽減。
 ソレヲ続ける事で、健全な精神活動を保ったまま千年を生きる事が出来る訳です」
「転換の日のあの光は、人間にその処置を施すものだった、と……?」
「スケルトンは人類の記憶を抹消する技術を元々有していたのか?
 ならば、あの光はヴェンジに降り注ぐ光線のように、何らかの古代兵器が……」
「イエ、人間に対するリセット機能など、スケルトンは有していません。
 ソウ単純な話ではないでしょうが……」
「だが、それだけではないノダ。奇妙な一致点ハ」
「ほう……」
「我らスケルトンは、溜まった負の記憶により、感情が沈み込みがちダ。
 それらの解放により、負荷を解消するト……」
「ワレワレの場合においても、記憶の消去と同時に、肉体が弱体化するのです」

「!!?」
「おい待て、お前達スケルトンは機械の身体なのだろう?
 細胞が変質する我々と違い、肉体の戦闘力が減じる事はなかろう」
「キオクの喪失は、蓄積した効率性のロストでもあります。
 チカラヅヨク大地を蹴るために、どのようにして筋肉を絞り、関節を駆動させるか……」
「自身の力でどれくらい重い物体を持ち上げられ、どのようにして運ぶとヨイノカ……
 身体能力もまた、知識・経験・記憶と密接に繋がっているノダヨ」
言われてみれば……
転換の日の前後で体格が変わったという話は聞いたことがない。
それなのに、以前は防具を着けたまま軽々と砂漠を疾走できていた肉体が、まるで言う事を聞いてくれなくなってしまった。
「ソノヨウナ、メモリーと機体の連動性は、我々スケルトンだからこそ起こり得るやっかいなリセットリスクだと思っていましたが……」
「お前達人間もまた、我らと同じ症状を発祥シテイル。
 これは面白イ。とても興味ブカイ」
「ワレラモ、君達と共にゾムネジアを研究したい」

人間心理を学ぶスケルトン エレマイア&ベッカム
「傘なら余ってますが、必要は無いのですか?」
「オキヅカイナク。我ら、食料も必要ありませんので、支度金等も必要ありません」
「何も着ないでも酸性雨が平気って、うらやましいねぇ」

デッドランドのスケルトン、エレマイア&ベッカムが仲間に加わった。
「ところで、サッドニールはドウシタ?」
「モチロン、共に来るよう声は掛けてみたのですが……」

「『お前達人類主義者はブラックデザートの友ではない』などと、罵られてシマッタヨ……」
「ご友人ですか?」
「ああ、何かと悲観的な困ったヤツデナ」

「人類は滅ぶべきシュゾク。
 ただ座って待つだけで世界が狂って行き、死者が生者を喰らう時代が来るのなら、大歓迎、ダソウダヨ」
ザーザーと、雨が肩を打つ音が静かに響く。

ケルトンという種の冷徹さに触れ、怯んでしまったというのもあるが……
この場の全員が同じ事を考え、しばし言葉を失った。
世界は、滅びに向かいつつある。
やり過ごしたゾンビの一群が、どこかで獲物にありついたらしい。
霞む暗闇の向こうから、カリカリ、バリバリという、あの音がまた、聞こえてくる。


一行は坂を下り、ブラックデザートシティを後にする。

長い時を経て、ジワジワと溶け続ける巨大建造物群。
あまりに巨大すぎるそれらは、建っているだけで恐怖すら感じさせる。

ああ、そうか。
この世界は一度滅んだのだ。

かつて、世界にはこんなにも巨大な死が在ったのだ。
もう一度滅ぶ時が来たとしても、不思議ではない。
(滅ぼされて、たまるか!!)
彷徨うゾンビを倒しながら、総勢9人となった特務隊の旅が続く。

止まない酸性雨の荒野を抜け、目指すは大湿地帯…… スワンプ地方。

真っ暗な闇は終わり、ようやく頭上に陽が差し始める。
 
 
<続く>


設定:ダメージ2倍
縛り:展開にそぐわない行動は取らない(犯罪行為等)
注意:当ブログの記事内の設定はKenshiの公式設定とは異なります