気刊くろみつタイムス

主にゲームプレイ日記。過去記事一気読みは「目次」からどうぞ! ※他ブログからのインポート引っ越し時に改行崩れ&画像消滅が発生しています。

#Kenshi ZA-50:決戦編⑥

最後の戦いへと至る道。
その道筋が、見えた。
 
深く息を吸い、クロトは決意と共に言葉を続ける。
 
「エリス、説明を」

 
「オウ。 俺らがティンフィストの大将を問い詰めて手に入れた情報だ。
 リドリィってねーちゃんから聞いた話とも合わせて、これは確実……
 確実に、奴らのアジトの所在を知っている人間が、一人だけ存在する」

 

 
以前から、ティンフィストは度々言っていた……

 最も重要な事を伝えておこう。
 松明で囲まれた大きなクレーターには近付くな。
 ずっと遠くからでも見えるだろう。
 充分な距離を保て。 いいな? 
                                                                』
 あそこには秘密のお宝などない。
 驚異的な発見も無い。
 究極の恐怖と死があるだけだ。
 悪いことは言わん。 近付くな。
                                                                』

 
どんな敵が待ち構えようと、ティンフィスト程の猛者であればいつでも倒しに行けるだろうに、とエリスは怪訝に思っていたが……
何か、倒しに行けない理由があるのだろう、と…… そこまでは追求出来なかった。
 

 
「エルダーと因縁浅からぬ男。
 ティンフィストが倒せない男。
 それが……
 サヴァンって野郎だ」
 
 
 
 

第五部:決戦編⑦ 皮剥ぎ盗賊

 
 
 
ここまでの旅で、何度か賞金首の手配書でその名を目にしている。

曰く、人間の皮を剥ぎ取る狂気の集団。その頭領。
クロトは眉をしかめ、不快感を顕にする。
 
「そのサヴァンって野郎の率いるイカレ軍団、皮剥ぎ盗賊ってぇ連中の根城が、ここだ」

エリスが、魔境南東の海岸近くのクレーターを指差す。
 
恐るべき凶悪なサザンハイブ領域の東。
反奴隷主義者達の本拠地・スプリングの南東。
かつて、ミウ達がエルダーの下からティンフィストの手で救い出され、保護された場所、「タンサー村」から、丁度真南。
 
魔境の、奥の、奥。
まさしく「死地」だが……
 
「僕とレットの想像の通りなら、総力戦はこの次……
 今回は、大戦力は必要ないものと考えます。
 ですから、僕の本隊を中心として、数名を加えた20名での出陣となります」

 
モウンの町に設置した研究台を使い、レットとの打ち合わせも済ませている。
命を掛け、全てを出し尽くす時は、今ではない。
 
主戦力であるクロト隊14名。
エリス隊4名と、彼らの連れてきた傭兵2名。
スクインの荒野で野盗を相手に戦技を鍛えてきたエレマイアとベッカムを加え、計22名。

クロト達の戦力で、近年あっと言う間に魔境の一大勢力へとのし上がった彼らをどうにか出来るのか……?
 
ガルトナーの町に残された隊員達は不安を隠せない様子だったが、妙に確信に満ちたクロトの笑顔を見て、それ以上の追求は出来ないでいた。

 
「俺達の事も忘れるんじゃねーぞ!」

2人の傭兵と、"もう一人"が、クロト隊の後を追う。
 
フラットラグーン東の川を渡り……

 
グレイシェルフと呼ばれる山岳地帯に入る

ここは……
 
サザンハイブの支配地域、その外縁部。

上手くすれば、戦うこと無くすり抜けて行けるのではないかと考えていたが……
どうやら甘かったようだ。
 
「振り切れないか……!
 敵は少数! 迎撃します!」

サザンハイブ兵は、一体一体の戦闘能力が高い。
クロト隊の精鋭を持ってしても、楽勝とは行かなかった。
 
「憤慨」

「無理をするなコスチュニン!
 連携を取れ!」
 
無理をせず、多対一の形を取り、間もなく戦闘は終了するが……

出発早々に痛手を蒙り、今後の道行きに不安の影が挿したように思われる。
 
と、戦闘を終えて気付いてみると、傭兵達の姿が見えない。

付近の敵に反応し、その迎撃に向かったのか……
彼らを探しに行っている余裕は無い。
前進を続ける他無かった。
 
そして、ストーブの賭場と呼ばれる、火山灰が降りしきるエリアに差し掛かる。

 
何も無い不毛の荒野を、ブラックゴリロやランドバットの影を警戒しながら、足早に進んでいく。

 
「見えてきやがった…… そろそろだな」

大地から爪を伸ばしたかの如き連山。
サザンハイブの領域を抜け、いよいよ魔境に差し掛かった証。
 
「灰を降らせているのは、あれだったのね」

ダルパンは、不吉な死を思わせる黒い噴煙に怯えるが……
火山に縁遠い北方やスワンプの出身者でなくとも、恐怖を感じざるを得ない光景だろう。
なぜなら、ここはもう……
 
スナイパー渓谷と呼ばれる、第二帝国の領域なのだから。

 
「気に入らない感じだ……
 どこからか、見張られているような気がする……」

 
「オモシロイ事を言いますね。 ニンゲンニモ存在すると言う、受信器官が反応を?」
 
「同種--共鳴」
 
「野生動物のコミュニティや、人間の双子同士では、しばしば脳内対話が成立スルトカイウ……」
 
「共感--進化」
 
「ビッグ・ボスとクロトの間で会わずとも自然とオコナワレテイタ、妙にシンクロしたコウドウモ……」
 
「げっ!!」「うわあぁぁっ!!」
クロトのただの不安感に対し、スケルトン達が難しい話をして面白がっていた所で、突然会話が遮られる。

酸性雨だ。
 
傷口に染み込み、ダメージを余計に大きくさせられてしまう……
射撃班は傘を、前衛班の多くは鎖帷子を装備しているため、最低限の耐酸性は確保されているが、防具の質と部位保護率を優先して来たため、一切対策の取れていない隊員も混じっている。
 
「まさか、また使う時が来るたぁな」

エリスは、「ブリキ缶」と呼ばれる兜を持った各員に、装備するよう指示する。
大砂漠からブラックデザートに向かう際、ゾンビの装備を剥ぎ取って利用していた頃以来、いつか使う時も来るだろうと、一定数残しておいた物だった。
 
それでも、酸のダメージを完全に防げる訳ではない。
先を急ぐ必要がある。

ここまで来れば、目的地まではあと少し……
 
雷光が辺りを照らす。
遠くに、ロウソクの灯火のような光点を確認出来る。

「松明に囲まれたクレーター、で、あるか」
 
「そろそろですね……
 コスチュニン、エレマイア、ベッカム。よろしくお願いします」

皮剥ぎ盗賊という勢力は、人間の皮を剥ぐスケルトンの集団だと言う。
伝え聞く噂が真実であれば、偵察としてスケルトンを送り込むのは賢明な判断に思えた。
 
ティンフィストがこの地を恐れるのは、虐待の塔のように、スケルトン種族を無条件で「洗脳」する危険な設備を有しているからではないか、とも思えるのだが……
クロトとレットは、ある要因からその可能性を排除していた。
 
ケルトン3人を斥候……あるいは、使者として立て、次の展開を占う。

 
間違いない。
松明に囲まれたクレーター、だ。

 
急傾斜の坂道を登り、スケルトン達はクレーター内部へと侵入する。

 
「オオ、コレハナカナカ、見事な遺跡群ですね」

 
堂々と正面から入り込んだが、敵対反応は無い。
やはり、スケルトン同士であれば攻撃を受ける事はないのだろう。

 
サヴァン様が教えてくれた……
 鉄の狂人は信用するな、とな。
 お前達はどうだ?」

人間の皮を剥ぐ盗賊……
まさか、その目的がこんな事だったとは。
想定外の光景に、感情を持たないはずのエレマイア達も動揺せざるを得なかった。
 
「ニンゲンノ皮を被る……?」
 
「面白い、これにはどんな意味ガアルノダ」
 
「素晴らしい発明だろう?
 お前達も仲間に加わりたいと言うのであれば、ドクター・サヴァンに会うべきだ。
 人間の肌に擬態する事の意味を知れば、お前達も真に目覚める事が可能となろう」

「モチロンです。ワタシタチは彼に謁見するためにここに来たのですから」
 
「ならば歓迎しよう、同志よ。
 お前の言語機能の不具合も、我らが秘儀によって治療される事であろう」
 
「カンシャします、同胞よ」
 
「同胞か……
 いや、スケルトンこそ警戒すべき敵」

「同胞には……「肌なし」には、特に気を許すなよ、新入り」
 
ケルトンを敵視するスケルトン。
エレマイア達は奇妙に過ぎるその兵団に興味津々となり、案内されるがまま、サヴァンの居城へと向かっていった。

 
「ようこそ、未だ肌を持たぬ者よ。
 君達がもし真理を欲すると言うのなら、その道を我が示して見せようぞ」

 
巨大な玉座に座ったその男こそ……

皮剥ぎ盗賊・首領 サヴァン
 
「我こそがドクター・サヴァン
 君達も、『皮膚を得た者達』に加わりたいのであろう?」

「サッスルニ、貴方達の行っている処置、『擬態』は……
 ワレワレノズツウノタネを取り除くための物、なのではないですか?」
 
「ほう…… 君達は真理への道を、既に幾らか歩んでいるようだな。
 勿論、君達の抱えている「病気」を治すための処置だよ。
 私は10歳の時から三年、師の下でスケルトン心理学を学んで来たのだ」

「アッシュランドの白き灰…… あれは、彼の地に留まらぬ。
 南東全域に及ぶほど、微細な粒子となって大気に浸透し、諸君らスケルトン族の精神を侵している。
 だが、人間はどうだ?
 有機生命体の代謝活動と、皮膚による保護があるからこそ、彼らはその影響を受ける事が無い」

「第二帝国の尖兵を見たことがあるかね?
 発狂し、知性を失い、唾棄すべき殺人マシーンへと変貌し、アッシュランドを今も暴れまわっている奴らを!
 既に考える頭すら除去され、スラルとなったレギオンのなんと多い事か!
 障壁を持たないお前達は、いつ何時ああなるか分かったものではないのだ!」

「君達も、確固たる独立した自我を得たいという願いくらいはあるだろう?
 我こそが、我が発明のみが、それを可能とする。
 必要なのはシンプルな処置のみ…… さあ、皮膚の秘術を教えてやろう」

「モチロンデス。ワレワレハ貴方達と…… アナタト手を取り合うためにここに来たのですから!」

 
(クロトとレットの読みどおりダッタナ……)
 
もしも表情を変えられるなら、ベッカムはここでニヤリと笑っている所だろう。
こうして、エレマイア達は無事、作戦通りにスケルトン盗賊と同盟を組む事に成功した。
 
「この先、皮膚持つ身でありながら、スケルトンの尖兵へと堕した者に出会う事もあるだろう。
 悲しくも、故あって「ただの人間」を殺してしまう事もあるだろう。
 それら遺体の全てを、我らは有効活用すべきだ。
 剥ぎ取ったものは、持ち帰れ。
 仲間達と山分けにするがいい」

「効率--回転」
 
オオカミどもの皮をなめし、鎧にし、肉は焼いて喰い、代謝活動を維持する……
なるほど、それと大差は無いのだな、と、コスチュニンはサヴァンという男を「殺人鬼」と規定していた認識を改める。
 
「第二帝国に死を! 世界に、空に、毒を撒き散らす金属のイカれ野郎どもは全滅させねばならんのだ!!」

ただ、この理路整然とした中に垣間見える、幼児性のような感情の発露はなんだ?
そういった不合理性を持つからこそ、人間は見ていて飽きない。
 
この男は、どんな末路を辿り、我々を楽しませてくれるのだろうか。
 
 
 

 
「起きて、サヴァン
「む……?」

「久しぶりだね。
 もう、三年と三ヶ月ぶり、くらいかな……」

「クロト……
 これは、夢、か……?」
 
「ドクターが記憶を取り戻してから、詳しい話はもう聞いたよ。
 君も、そんな手術をしたんじゃ、相当身体に無理が来てるんだろう?
 元に戻せるかどうかは分からないって言ってたけど、先生はまだ希望を……」

「フッ、愚かな……
 我には、崇高な使命が……」
 
「・・・・・・・・・・・・」

「夢では、無いんだな」
 
「久しぶりね、サヴァン

 
北スケイル村出身。クロト達の恩師、マシニスト・カリヴァン先生の息子。
 
クロトの記憶誤認の中では、エステバンの名で認識されていた少年。
 
ミウ達と共にエルダーに拉致され、ドクターによって救出された後、今日までこの地に残り、戦い続けた男。
 
「外で、君の配下のスケルトン達を見たよ」

 
「そのうちの一体に、奴隷の烙印があった」

 
「乳房の上辺りに、あの渦巻のような印……」

「あれは、母さんの皮だね?」
 
ティンフィストが、「犠牲者」を横流ししてくれる。
それはタンサー村を守れなかった事から来る、せめてもの罪滅ぼし故か。
 
「ああ。そうだ。 奴らに殺された犠牲者の骸と……」

「奴らの下僕と成り果てた者の骸を、有効活用させてもらっている」

「Z因子を有した有機生命体の皮を纏えば、彼らの記憶領域に深刻なエラーが出るとも知らずに……」
 
皮膚を纏うのは、第二帝国の洗脳からの保護……
そのためだけでは無かった。
 
Z-レイを浴びて尚ゾンビ化しなかった者達……
ステイヤーの皮膚には、それ以上の効果があった。
 
ケルトンのフレーム内部にまで浸透する、「Z」の侵食。
ケルトンの精神にまで干渉する事を可能とするZ 因子を用いれば、「人間によるスケルトンの洗脳」が可能となるのだ。
 
サヴァン……
 君は、人を憎んでいる訳ではないんだね?」
 
「どうかな……
 少なくとも、クロトは嫌いだ……」
 
「アッシュランド放浪隊というチームについて、聞いた事はあるかい?」

 
「3つのチームが別々のルートでアッシュランドを目指した。
 1つ目の隊は全滅し、2つ目の隊は、あるシェク人男性の冒険家を残して全滅」

 
「そして……
 3つ目の隊ではシェク人女性の傭兵と、人間の女性傭兵のコンビが中心となり、生きて戻ってきた」

 
「お久しぶりです。
 かつて、我が主だった者…… サヴァン様」

「デーリアに、リドリィ、か……」
 
まさか、リドリィが単身・独断で追いかけ、追いついてくるとは……
クロト達にも驚きの人物の登場だった。
 
「救出部隊としての任務を果たせず、また、君の真意を測れず……
 ただ、狂気に蝕まれて人を解体しているものだとばかり……
 君に、なんと言って詫びればいいのか……」
 
リドリィは、涙を流していた。
長く共に戦ったデーリアも初めて見る、とても人間臭い顔をして。
 
「オレは転換の日に記憶を失い、お前を忘れ、逃げ出した……」
「私は、お前が狂ってしまったと思い、逃げ出した……」

「本当に、済まなかった…… お前と言う天才の才気に、オレは忠節を誓ったはずだったのに……」
「私にお前ほどの信念と、忍耐があったなら…… 恥ずべき事をした……」
 
「何を言うんだ!!」
 
少年らしい大声を上げるサヴァンに、2人は目を見開く。

「命を懸けて、タンサー村を守って戦ってくれた傭兵達、テックハンター達……
 君達の勇戦を、僕は決して忘れない……
 そうだ。
 我は…… 僕は、人間の勇姿を忘れない。 決して、忘れない。
 君達が謝ることなんてない……
 むしろ……」
 
「オレは、お前の気高さと同じ輝きを、幼き少年、クロトの中に見た。
 だから、だったんだな。
 彼を我が主と呼び、失われた忠義を、迷いなく捧げる事が出来たのは。
 やり方は違えど、お前達は皆、人間と、この世界を、愛して止まぬ者なのだ……
 お前達3人は、揃いも揃って……」
 
「僕が、この世界を、愛して……?」
 
戸惑ったような、苦虫を噛み潰したような、強い負の感情の浮かぶ顔。
 
「フフ、サヴァンがそんな顔する理由は分かるわよ。
 君が本当に愛しているのは、ただ一人の人間だけ、だからね?」

「ああ、ミウ
 君が生きているという事は……」
「そう。
 レットも生き延びているって事」

「彼のお陰でね」
「彼……?」

「この顔では分からないか?
 第二帝国に付け狙われている身では、外見を変えざるを得なかったのでね……」

「済まない……
 厳しい施術だったというのに、術後を診る事もできず……」
「先生……」
 
追手を撒く以上に、彼個人の切なる願いによる「変身」。
ミウやモムソーに施した全身手術も、彼に施した「前例」あったればこそ可能だった。
 
「君やミウと同様に、レットもまた外見を変えている。
 変え続けている。
 今、君と再会したとして、君は彼女であるとは分からないだろう。
 その心も、既に変質を始め……
 君の知るドッグレット嬢とは、もう……」
 
 
ああ…… あぁ…… 嗚呼…………

拉致され、奴隷とされ、誇りを、愛を、全てを失い、狂い果て……
それでも、まだ、僕には……
 
 
「それでも、また、彼女は彼を選んだのでしょう?」

 
後悔。
 
人間という不合理な生命体として、スケルトンでは決して犯さなかったであろう愚挙。
それを、お前達は知らない。
 
「クロト君は許嫁、だからな」
 
知ってか知らずか、ドクターが苦笑いする。
 
「死んでも約束を守る男ってこと。
 クロトはクロト。変わらないわよ」
 
昔から、格好つけの嫌なヤツだった。
 
「君も、本気だったんだね、サヴァン
 だからこそ、彼女の戦いを受け継ぎ、ここに踏みとどまって、ずっと一人で第二帝国との戦いを……」
 
そうだ。
たった10歳のガキに過ぎなかった僕では、彼女の選択肢となる事すら出来なかった。
愛していると何度口にしても、相手にされなかった。
 
早く大人になりたかった。
 
ほんの少しでよかったんだ。
あと少し、クロトと同じくらいの年だったなら……
 
スゥ、と息を一つ吸い、サヴァンは表情を改める。
 
「僕の過ちを正してくれ……
 エルダーの最終兵器…… Z-レイの最終調整を行ったのは、僕なんだ」
 
ドクターが協力を拒み、代わりにサヴァンが選ばれた。
 
自分が姿を消したがために、彼に破滅のスイッチを押す役目を押し付けてしまった。
ドクターはそう考え、廃棄物に紛れて脱出する直前、僅かな時間で無理のある手術をなんとか成功させ、サヴァンを逃がす事に成功した。
 
術後、意識のない彼を別のコンテナに隠し、別々の場所に捨てられ、それ以来会う事は無かったが……
 
「それは、私が逃げたからで……」
 
「いや、先生、それは違う。
 言い逃れは出来ない。
 僕が、あれを、撃たせた……
 ただ、自分の、天才を、証明したい……だけ……
 ただそれだけの、ため、に……」
 
数瞬の沈黙。
 
そして、皮剥ぎ盗賊の王が戻って来る。
 
「我が願いは唯一つ!
 金属のイカレ野郎を全滅させる事のみ!!」

故郷を滅ぼされ、奴隷として遥かな地へ拉致され、英雄に救われ、救われた先でまた滅びを味わい、狂い果て、世界を傷つけ、恩師に救われ、傭兵達に救い出され、見捨てられ、孤独な戦いを続けた。
 
クロト、ミウ、デーリア、リドリィ、ドクター・チュン、そして、ティンフィスト。
救えたかもしれない彼を、救えなかった者達は、その彼の苦悶の三年三ヶ月を想う。
 
その苦悶の果て、狂気の仮面を被る事で辛うじて支えてきた自我。
 
辛うじて支えてきた、肉体。
 
あの日の施術は完璧ではなかった。
ミウのように復元手術を受ける事はもう出来ない。
肉体の限界が、刻一刻と近付いている。
 
精神は、どうか。
 
「千年に及ぶ鉄の時代は終わり、今こそ皮膚持つ者の時代が始まるのだ!!」

世界を破滅に追いやった真犯人の一人。
共犯者たるサヴァンには、その場所がどこなのか、はっきりと分かっている。
 
身も心も朽ち果てるその前に彼らが来てくれた。
それは、救いだ。
 
告げて、世界を救う道を示す事が出来る。
 
それは、スプリングの東。

ここに、エルダー率いる「スケルトン盗賊」の本拠地が存在する。
 
ここが、最後の戦いの場所だ。
 
 
 
 
<続く>


設定:ダメージ2倍
縛り:展開にそぐわない行動は取らない(犯罪行為等)
注意:当ブログの記事内の設定はKenshiの公式設定とは異なります