気刊くろみつタイムス

主にゲームプレイ日記。過去記事一気読みは「目次」からどうぞ! ※他ブログからのインポート引っ越し時に改行崩れ&画像消滅が発生しています。

#Kenshi ZA-04:大砂漠編③

バスト地方は壊滅した。
 
クロトは従卒としてトゥルブレを雇い、都市連合本国……「大砂漠」に向かって歩いていた。

体はすっかり弱りきってしまっていたが、せめて扱い慣れた刀を使いたい。
ダメもとでトゥルブレに頼んでみると、彼は呆気ないほどあっさりと武器の交換を了承した。
 
「こんな体じゃ、何使っても同じじゃんねー」
 
そう。 彼も、自分と同じ。
あの日、あの時、空からの怪光を浴び、謎の弱体化を発症していた。
筋力は衰え、足は重く、武器の扱い方さえも身体が忘れている……
そんな感覚すらある。
 
あまりにも理不尽な変事。
そんな状態でここまで生き延びられただけ、僕は幸運だった、か。
 
クロトはドリンの砦から逃げるようにして進み続け……
 

 

大砂漠へと到達した。
 
 
 

第一章:大砂漠編③ ハイブ村

 
 
 

「ふひゅー…… どうも、ここら辺はゾンビが湧いてないみたいネ」
「少し休むか?」
「そうネ。どこかいい場所でも…… おっ!」
 
丘から辺りを見回すと、遊牧民のキャンプが見つかった。

「ちょいと、あそこでお世話になりましょか!」
 
言いながら、トゥルブレは丘を下って駆け出して行く。
 
「おい、待てよ!」
 
見習い侍の身で、従者を持つのは初めてだが、こんなにも好き勝手をするものなのか?
いや、多分違うな。
これは、こいつがおかしいだけに違いない……
 
「ヒツジ屋さーん、ちょっと休ませてチョ~~~」

「ん? まあ、構わんよ。
 ヤギ達がメシを食う間、暇だしな」
「ありがとーん!」
 
正直、ここで寝袋を借りられたのは本当にありがたかった。
ドリン脱出の際に受けた傷は思った以上に深刻で、これ以上休まずの強行軍を続ければ、いつ倒れるか分かったものではない。

 

「休むのは構わんが、毛まみれになっても文句は言わん事だ」
「ハハハッ! 和むわね~~」

旅人に興味津々なのか、ヒツジ達はクロトに近寄り、ペロペロと舐め始める。
 
(ん…… 温かい。 悪くない、かも……)
 
頭の上に腹が乗っかり、クロトはその温もりに心地良さを感じていた。
 
「そうかい。じゃあ、西に向かうのはやめとこうかね」

トゥルブレは、グソーと名乗った遊牧民の女性と情報交換をしていた。
 
あちこちを広く見て回る遊牧民は斥候代わりとして重宝されるため、軍拠点でも歓迎され、通行を認められてもいた。
戦乱が続くバスト地方に近付くのは、遊牧民達も避けてはいたが、偵察の代行を行って駄賃を稼ぐにはいい場所だったのだ。
 
ヤギ達の世話をしながら隙無く辺りの警戒を続ける、ヨーナと名乗った男も、トゥルブレと互いに情報を交換していった。

この辺りでゾンビは見かけていないが、既に噂は広がっている。
砂漠は今まで以上に危険だ、と。
 
「じゃ、ボウヤには悪いけど、先にこっちの都合を優先しちゃおうかね……」
 
トゥルブレは、クロトの傷が塞がり、目を覚ますのを待った。

 

・・・・・・・・・・・
 
「と、言うワケで! 北に寄り道してからってのをオススメするよン!」

「僕が一刻も早く本国に報告に走りたいって、分かってるよな?」
「モチロン! でも、もしかすると、寄り道した方がイイことあるかもしれないのよネ~~」
 
……確かに、今まで彼の言葉に従って、うまく事が進んできた。
こう言うからには、何かアテがあるのだろう。
 
「その、いい事って?」
「んー、ちょっと、うまく行かないかもしんないから、ネ」
 
珍しく言い淀み、言葉を濁す。
彼には彼の事情があるのだろう。深く追求はすまい。
利益優先、実利重視のハイブ族の言う事なのだから、乗ってみるだけの価値はあると思える。
 
「場所は、ここら辺」

地図を広げ、トゥルブレはここから北のある地点を指差す。
 
なるほど、ハイブの集落か。
それなら、彼のツテで何らかの協力も得られるかもしれない。
彼はハイブ種の中でも身分の高いハイブプリンスなのだから。
 
東へ…… ショーバタイの町に向かうよりは、距離的にはこちらの方がやや近い。
悪くない判断、だと思う。
今まで上官の命令に従うだけたったクロトにとって、判断を下してくれる誰かの存在はありがたくもあった。
 
自己判断で旅を続けるには余りに経験に乏しすぎると、クロトは自覚していた。
悔しいが、今はトゥルブレの知恵が必要だ。
 
「それでは、お世話になりました」
「北は北で、安全とは言い難い。気を付けてな」
 
遊牧民の2人に礼を言うと、クロト達は北に向かって出発した。

 
「情報通り、ゾンビちゃんはここら辺に見当たらないようネ~」
「ああ、でも…… この辺りはあいつらのテリトリーでもあるよな」

「反乱農民、ネ。
 確かに、ヘロヘロボディのワタクシ達からすれば、ゾンビ同様厄介な相手だねェ」
 
帝国……すなわち、都市連合の圧政に苦しむ農民達。
彼ら農民は、
 
大人しく貴族に従い、納税義務を果たしている者、『帝国農民』……
納税義務を果たさず、土地を捨てて武装蜂起した『反乱農民』……
 
この2つに分けて分類されていた。
 
 

飢餓に苦しむ反乱農民達からすれば、旅人の通過は食料を奪う機会でしかない。
ゾンビ同様に警戒すべき相手だ。
 
幸い、この辺りをテリトリーとする反乱農民達とも、ゾンビとも出会う事なく、2人はハイブ村に辿り着くことが出来た。

 
ギョッとするほど、彼らの兵力は多かった。
話には聞いていたものの、見るのは初めて。これが、ハイブの村か……

 
彼らの階級社会は絶対的で、支配者層であるハイブプリンスの下、戦闘員であるハイブソルジャー、労働者であるハイブワーカーが昼夜を問わず働き続けており、その生産力も軍事力も侮りがたいものとなっている。
彼らが実に商売好きな種族だと言う事もあって、商業力こそを正義とする都市連合との相性はいい。
帝国側も、彼らを支配下に組み込むよりは、共存共栄の形を取る事を由としている。
 
だから、良き隣人たるハイブ村のプリンス種であるトゥルブレの指示があれば、軍団を出してもらえる……などと都合のいい話は無かったとしても、少なくとも何らかの利益供与は受けられる見込みがある。
 
 
「んじゃ、ここは一つ…… 賭けてみようかネぇ」
 
トゥルブレは、迷わず真っ直ぐに、一件の店に向かって歩き始める。

「やっと、帰って来れたヨ……」
 
ポツリとつぶやいたその声は、いつものお調子者の彼らしいものでは無かった。
 
僕の旅はまだまだ続くが、彼にとっては、ここが旅の終着点だったのだろうか。
払った金額分の仕事としては不足しているが、ここで別れる事になったとしても、引き止めはしまい。
彼には彼の人生があるのだから。
 
トゥルブレは、待ちきれない様子で家屋の中へと駆け込んでいく。
 
「兄さん!! 今帰ったヨ!!」

「ぐがあああぁぁぁぁぁッ!!」
 
彼を出迎えた…… 兄? の返答は……
 
敵意を剥き出しにした唸り声、だった。
 
 
「落ち着けって! 兄さん! ワタクシよ! トゥルブレだヨ!
 やっと、奴らの所から逃げて来れたんだよ!
 これでやっと、約束、果たせるンだヨぉ!!」

「あ…… うぅぅ…… 兄さん……」
 
 
『巣無し』
 
 
巣(Hive)の名を持つ種族にとって、最大級の侮辱。
 
お前はハイブではない。
同胞ではない。
裏切り者だ、と。
そう宣告されたのだ。
 
「兄さん、もう、ワタクシの事、分からないのネ……」

出ていかなければ、殺す。
そう言いたげに、ハイブソルジャーが眼前に立ちはだかる。
 
「ああ、出てくよ……」
 
ドサリと、卓上に2000catを置き、トゥルブレは兄に背を向けた。
 
「借りは、たしかに返したから、ネ……」
「いいのか?」
「こうなったら、どうしようも無いのが、ハイブだからネ……」
「ハァァ…… 目の前で顔を突き合わせタラ、なんとかなるかって思ったんだケド、ね……」
 
ボソリと小声でつぶやき、彼は、雑貨屋…… 彼の実家に背を向け、出ていった。
 
 
 

 
 
「あの光を浴びてから…… ワタクシのアタマ、壊れちゃったのネ……」

「女王の声、もう、ワタクシには届かない。
 それでも、どうしてもここに戻りたかった。
 ハイブとして、まだ役に立つって、証明したかったのヨ……」
 
ハイブ種の頭脳には、仲間同志の意思伝達を直接脳内に送り込む何らかの超能力のような物が備わっていると言う。
とりわけ、ハイブプリンス種の能力は強く、配下のワーカー種、ソルジャー種に対して絶対的命令権を持っているとされる。
 
そんな彼が、何らかの不運な出来事に見舞われ、命からがら脱出。
放浪の果て、故郷を目前にしてあの緑の光を浴び、全てを失った。
 
どれだけの屈辱に耐え、ここまで戻って来たのか……
その苦しみは想像を絶するものに違いない。
 
 
「んんっ! でもいいヨ!
 女王の声が頭ン中から無くなって、随分スッキリした気分!
 今のワタクシってば、とっても自由だからネ!」
 
不自然に明るい声は、微かに震えている。
 
「じゃ、まだ僕の従士でいてくれるって事かな。
 僕には、君の助けが必要なんだ。
 もうしばらくは見捨てないでいてくれると嬉しいんだけど……」
 
励ますように、少し微笑んで聞く。
 
「しょうがないネ!
 2000catふんだくって、ここで縁切りするつもりだったけど、しばらくチミに付き合ってあげるとしますか!
 稼ぐメがある内は、チミの仲間でいてあげるヨ! 稼げる内だけネ!」
 
「正直者だなぁ、トゥルブレは……
 こりゃ気合を入れて稼がないとな!」
 
ハハハ、と空元気で笑い合う。
慰めと、強がりとで、互いに無理をして、笑った。
 
 

 
 
「ああ、そうだ。 チミは兄貴に嫌われてないんだから、買うべき物はちゃんと買っとくといいヨ。
 ここでなら超お買い得で買えるんだから、絶対買っとかないと!」
 
「そうは言っても、もう持ち合わせは無いよ?」
 
「チミの手持ちと合わせて…… フム。
 ワタクシの医療キットを少し売ってくれば、なんとか足りるでしょ」
 
「いいのか?」
 
「丁度2人分。1個はワタクシのなんだから、いーのいーの」

「これで、夜でも真っ暗じゃなくなるヨ」
 
「腰から下げられて邪魔にもならない…… いいなコレ!」

「でも、光で目立って襲われやすくなっちゃうから、ソコは気を付けないとダメだよ?」
 
「分かった。便利だけど、リスクありって事だな」
 
「それじゃ、次はショーバタイに向かう?」
 
「いや、ショーバタイよりかは、まず手近な……」
 
「OK。 ポートノース行き、ネ!」

2人は次の目的地。
ハイブ村の東、ポートノース目指して出発した。
 
 
 
<続く>


設定:ダメージ2倍
縛り:展開にそぐわない行動は取らない(犯罪行為等)