気刊くろみつタイムス

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#Kenshi ZA-03:大砂漠編②

見えた。 ドリンの町。

もしここが落ちていたら、都市連合軍はもう戦えない。
どうか、皆、無事でいてくれ……
 
 
 

第一章:大砂漠編② ドリン

 
 
 
バストやエンドインよりマシとは言え、ドリンの防壁も穴だらけだ。
ゾンビの大群が押し寄せて来た時、マトモに戦えるのかどうか……

良かった。 家屋に灯りが灯っている。
まだドリンは壊滅していない!
 
時刻はまだ夜明け前だが、多くの侍達がひしめくように動き回っている。
バスト、エンドインから来た侍達も多く見受けられる。

ここドリンにバスト方面軍の全部隊が合流。体制を整え、反撃の機会を伺っている……
そんな様子が見て取れる。
 
「伝令ーッ!!」
 
大きな声で叫び、兵舎に駆け込む。
 
「ぐ…… こんな格好ですまんが、話を聞こうか」

都市連合バスト方面軍 総司令官 "侍隊長" タギリ
 
戦傷を負って寝たままの総司令に、クロトはこれまでの詳細を報告。
カッシュから預かった書状を手渡した。
 
「バストは化け物に、エンドインはホーリーネーションに落とされた、か。
 当然、塔も既に…… だな」
 
タギリの顔に落胆の色は無かった。
既に覚悟の上だったのだろう。
 
「クロトと言ったな。
 酒場で補給を受け、しっかり休め。
 明日からは軍装を身に付け、戦列に加わってもらうぞ。
 勲功次第で正規の侍にも昇格させてやろう」
 
「あ、ありがとうございます!」
 
「カッシュの言う通りにお前を故郷に帰してやりたいのはやまやまだが、今は子供の一人とて戦力として必要な状況だ。
 あの化け物……ゾンビ、か。 アレの襲撃を利用し、ヴァルテナが攻めて来た……
 ここを落とすワケにはな…… 撤退は出来ん」
 
カッシュ司令は、わざわざ一斥候の事情まで書いていてくれたのか。
僕は、本当に上官に恵まれている……
 
「先の事を考えるのは、まず、ここを守りきってから…… ぐっ! くそっ……」
 
命令書にペンを走らせる際、傷が痛んだようだ。
 
「僕も戦います! 当然です!
 どうか、総司令は無理をなさらないで下さい!」
 
「このザマじゃ、指揮など取れんか……」
 
舌打ちをし、総司令は兵舎内に残る隊長各を呼び集める。
 
「私が戻るまで副長を臨時総司令とし……
 もしも…… もしも有事にあって司令の職責が果たせぬ事態となったなら、各自、自己の判断で行動するように。
 いいな」
「!? そ、それは……」
「司令!!」
 
「軍総司令としての命令だ」
 
「了解……」
「はい……」
 
いざとなったら逃げろ、と。
司令はそう言っているのだ。
 
「来たぞぉっ! 緑の連中だぁっ!」
 
夜闇に紛れ、ゾンビが侵入して来ていた。
 
「腐ったハイブなんざ怖くねぇ! やるぞ!」
「シェクったって、裸の死体なら楽勝だぜ!」

慌てて外に飛び出したが、敵の数はそう多くは無いようだった。
この基地の戦力を考えれば、苦戦する程のものでも……
 
 

曲がり角の向こう、町の南側から、吐き気を催すような絶望的な数の敵が押し寄せてきていた。
 
武器だ。
武器が必要だ。
 
例え、ここからもまた撤退しなければならないとしても、生き延びるための武器が必要だ。
津波のような敵に遮られ、倉庫までは走れない。
今、目の前の酒場に飛び込むしか……

夜明け前の薄暗い店内には侍達の姿はなく、砂漠を渡る旅人や傭兵達がたむろしているだけだった。
 
そこに、ゾンビがふらりと姿を現す。

「んぁ? なんだオメェ、いくらハイブでも服くらい着て来いよなぁ?」
 
酔っ払い達は事態が把握できておらず、笑い飛ばすだけだった。
 
「あ、オイ! 坊主、何すんだ!」
「すみません、武器! 武器無いですか!」

「スマンが、旅人の荷降ろしが無くてな。
 酒場にクズ鉄を持ち込むなって何度言っても聞きゃしねーんだが、今日はまだ……」
「ジャーキー! ギッスルフラップ、あるだけください!」
「お、おう。 どうしたんだ、そんなに慌てなくてもよ」
 
ひっつかむようにしてギッスルフラップを買い、店内に目を走らせる。
 
使えそうな武器は…… 見当たらない。
 
たった今、この場で、必要なんだ。
早く!!
 
クロトは酒場の2階、宿泊部屋に駆け上がる
 

 
「おい! なんだお前、喧嘩なら受けて立つぞハイブ野郎!」
「こいつ…… ざけんな! ブッ殺してやる!!」
 
階下で、戦闘が始まったようだ。
クロトは棚や樽を漁り、使えそうな物を探し続ける。
が…… 無い。

 

「にょほほ! なーんか、随分賑やかじゃないの!
 いつもこうなのネ? ここってば」
「いんや、いつも戦争の備えでピリピリしてる連中なんだがな……」

漂流者と傭兵が、酒を飲みながらブツブツと話し込んでいる。
 
「敵襲です!! 武器は! 使える武器はありませんか!
 ここは危険です!!」
 
クロトは、必死に叫ぶ。
 
「おいおいおい、勘弁してくれよォ、こんな夜明け前から戦争かぁ?」
「ニョホホホ、流れ着いて早々物騒なことネ!」
「ボウズ、武器なら無ぇぞ。鉄棒の一本まで、とっくに侍達が持ち出してっからな」
「くっ……!!」

「なに、チミ、そんなヤバい状況なワケ? ここ」
「一階で、もう殺し合いになってんですよ! ワケの分からない奴らが入ってきて!!」
「ほう……」
 
ガタッ、と、傭兵達が席を立つ。
その表情が引き締まり、歴戦の戦士の眼差しに変わる。
 
「酒場に押し入るなんて条約破りにゃあ、ちっと痛い目を見せてやらねばなるまいて」
 
ニヤリと笑い、これ見よがしにゴツい武器を構える。
 
「見てろよボウズ。 すぐに俺達が黙らせてやるからよ」
 
・公共施設内での戦闘を禁じる
 
第三帝国時代から続く、戦時条約。世界の常識。
その解釈を巡って議論が交わされる事も多いが、このような状況下では戦闘を仕掛けた側を協力して排除する。
それがこの世界のルールだ。
 
「俺の店で好き勝手やってんじゃねぇぞ! シェクを舐めるな棒人間どもが!」
「ハッハー! いいぞオヤジ、言ってやれ言ってやれ!」

男達は、力をあわせて調子良くゾンビを殴り倒していく。
が……
 
「な、なんじゃコイツらぁ! 衛兵っ!! 来てくれ、衛兵ーっ!!」

あの数の群れを、侍達が全て防ぎ切る事など不可能。
ゾロゾロと、水が注ぎ込まれるようにしてゾンビ達が押し入ってくる。
 
「くそっ! 僕も早く行かないと……!」
 
なんとか倉庫に潜り込み、装備を整えなければ話にならない。
一か八か、やってみるか。
 
クロトが階下に向かって歩き出した、その時。
 
「武器が欲しいのかね、チミ」
「ああ。 譲ってくれるのか、あんた」

「ノンノン、ワタクシなら、チミの役に立てるって言ってるの」
 
「そうは見えないが……」
 
「チミ達、今大変なんでショ? いいからいいから、話に乗んなさいな」
 
「どうせタダじゃないんだろ?」
 
「よく分かってるじゃないの! 2000catで請け負うヨ! 護衛でも、脱出でもネ!」
 
「おいおい、2000も取って、戦力になってくれるワケじゃないのか?」
 
「見ての通り、貧相な流れ者でして!
 自慢じゃないケド、ワタクシ、どーもあの光を浴びてから本調子じゃナイのよネ~」
 
「!?」
 
あの光を浴びて身体が弱体化した……?!
クロトは、力を借りたいと言う以上に、その共通点に何かを感じた。
 
「どうする? どうする? 下はヤバい事になってるニョ?
 ワタクシ、チミみたいな若者に、いい感じに助言できる良い人材だと思うけどねェ~
 どう? ワタクシをチミの従卒として雇ってみなーい?」

迷っている時間は無さそうだ。
 
このハイブ、あまりにも胡散臭すぎるが……
直感に賭けてみる、か。

漂流者:ハイププリンス "巣なし" トゥルブレ
 
クロトは、トゥルブレと名乗ったハイブになけなしの2000catを手渡す。
ニヤリと笑い、トゥルブレは階下を覗きに行った。

「フムフム、やっぱりネ。 アレがもうここまで来ちゃってた、と」
 
「ゾンビの事、知ってたのか……
 じゃ、あんたの最初の仕事は、僕をこの酒場から脱出させる事」
 
「ハイ、任されタ!」
「ふーむふむふむ…… ちょい待ち」
 
「おい、何をやって……」
「シッ、敵が奥まで行ってから……ネ」
 
やがて、入り口付近で戦っていた用心棒や傭兵達が倒れ、戦いは店の奥で観戦を決め込んでいた酔っ払い達の方へと移っていく。

「よし、今ネ!」
「お、おい、待てよ!」
 
「死にたくなきゃ、早く付いて来る!!」
「くそっ!!」
「早く!!」
「わ、分かったよ!」
 
その強い口調に、渋々ながら付いて行かざるを得ない。
が、

「ぐあっ!!」
「だから行ったデショ! 走って!!」
「畜生ーーーーっっ!!!」
 
ゾンビの脇を抜け、階段を駆け下りる。
既にトゥルブレは階下に降りている。
タイミングを測っていたその目は確かなようだ。
 
「ハイ、チミの武器!」
「えっ、これって……」
 
威勢よく階下に降りていった傭兵達も、酒場の用心棒と共に、既に倒されてしまったようだ。

戦闘の只中で、躊躇いなくテキパキと用心棒の装備を剥ぎ取って行くトゥルブレ。
自身はその防具を着込みつつ、武器をこちらに手渡してくる。
 
「おい! こんな時に、よくもそんな!」
「こんな時だからよん! 必要でしょ! 今、コレ!」
 
ああ、ああ。
そうだ。
その通りだ。
 
侍からの「剥ぎ取り」は違法だが、この男は店の用心棒。
気絶し、起きている仲間も周囲にいない今、それを咎め立てする者は誰もいない。
都市連合軍からすれば、何も問題の無い行為だ。
 
「この人、ハイブで良かったネ♪」
 
ハイブの身体に合わせた防具は貴重だ。
トゥルブレが喜ぶのも無理はない。
 
「じゃ、行くヨ。
 今すぐ! ここがチャンスよん!」
 
「お、おうっ!」
 
信じてみるしかない、か。
この男の戦場に対する嗅覚を。
 
戦いは店の奥に移り、酒場の入り口付近は静かになった。
 
店外のソンビの群れは、戦い続ける侍の方へと向かっている。

確かに、今がチャンスだ。
 
「ハイッ!! 全力疾走にょーーーーーん!!」
「くっそぉぉぉぉぉぉーーーーー!!」

あんな化け物に襲われたらひとたまりも無い。
 
また、か。
また逃げるしか無いのか。
 
ドリンも……
バスト地方最後の砦も、もう……
 
「前方! 白いデカブツの後ろ! アソコ!」
「嘘だろ!?」
「行ける行ける! レッツゴー!!」

 
「ウヒョヒョヒョヒョ~~~~~」
「マジかよ……! 本当に、行けた!?」

「侍さん達が頑張ってくれたお陰ネ~~」
「あ、ああ……」
 
辺り一面の怒号と悲鳴。
 
組織だった反撃など、まるで出来ていない。
指揮を取るはずだった副官の姿も見えない。
もう、侍達は完全に「襲われる」側だった。
 
『もしも有事にあって司令の職責が果たせぬ事態となったなら、各自、自己の判断で行動するように』
 
タギリ総司令は、こうなる事が分かっていたんだ。
だから、気兼ねなく逃げられるように、ああ言い残してくれたんだ。

第5偵察隊のみんな。アネイス隊長。カッシュ司令。タギリ総司令。
放浪者の二人に、傭兵達。
ありがとう。
ごめんなさい。
 
僕は、逃げることしか出来ないけれど……
この恩は、絶対に忘れないから。
 
言い訳をするように自分の胸の奥で誓いながら、戦場に背を向け、走り出す。
 
「ムッヒョホホホホホホ~~~~~ やったにょーーーーん!!
 だからワタクシに任せとけって言ったんだヨーン!!」
 
珍妙に過ぎる同行者を得て、クロトは砂漠へと向かい、旅立った。
 
 
<続く>


設定:ダメージ2倍
縛り:展開にそぐわない行動は取らない(犯罪行為等)