気刊くろみつタイムス

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#Kenshi ---01:----------

 
 
「私はね、クロトと結婚するよ」
 

 
それは、あまりにもあっさりとした言い方で、クロトは一瞬、彼女が何を言っているのか分からなかった。
 
「い、いきなりとんでもない事を言い出すな!」
 
「あら? 嫌じゃないでしょ?」
 
そう言って少し笑うまで、表情すら変わっていなかった。

こんな重大な発言を、どうしてそんなに軽く?
 
「そりゃ…… 嬉しい、よ。
 すごく、嬉しいけど…… いいのか?」
 
「家がどうとか、気にしているの?
 だって、私には貴方以外考えられないのだもの。
 お父様にだって、そう言って納得させてみせるわ」

 
やがて、穏やかに微笑み、静かに寄り添う二人。
 
「・・・・・・・・」
 

そんなクロトとレットの姿を、これでようやく諦められると、これでちゃんと全てが丸く収まるのだと、胸の痛みを抑え込みながら、少し離れた位置から見守る、もう一人の親友。
 
無邪気に笑いながら、泳ぎ始めるレット。

 
彼女はいつだってこうだ。
 
こうと決めたら迷いは無く、ただひたすら、その道を信じて進む。
それは、すこし怖いくらいに。
 
 
 
 
………………2年後
 

クロトは、「侍新兵」から「侍斥候」への昇格をようやく認められた所だった。

レットの父から出された条件は、都市連合に属する正規の侍になってから帰る事だった。

優秀な指揮官だった父と同じ……とまで行かずとも、立派な侍になってから戻らなければ、レットとの結婚は認めないと、そう言われた。
 
貧乏人が身を立てるには、この道しかない。
クロト自身も納得した上での条件だ。
 
それから2年を掛け、初めて任された単身での斥候任務。
 
父の元部下で、親切な隊長が事情を汲んでくれた事もあり、この任務を成功させれば侍の資格を得て故郷に戻れる事になっていた。
 
レットと結婚し、安全な南部で一緒に暮らせる。
 

僅かながら、戦う術も身に付けた。
昔と違い、ちゃんと村に居場所が作れる。
本当の人生が、一人の人間としての幸せが、ようやく手に入れられる。
 
レットはちゃんと待ってくれているだろうか。
母の病は重くなっていないだろうか。
友は達者でいるだろうか。
 
ここで成果を出して見せれば、夢に見続けて来た帰郷が、ついに叶う。
 
 
この2年で身に付けた肌感覚でもって、慎重に敵の砦……
我らが都市連合の仇敵、ホーリーネーションの聖騎士達の大要塞……
 
「オクランの盾」の様子を伺う。

西への道を塞ぐ巨大な砦。
何人をも通さないような厳しい監視体制。
 
だが、大きく遠回りをすれば、山側から迂回して砦の反対側に出る事は可能。
山野を駆け巡り、大人達の目を盗んでは綺麗な水場を見つけて遊びに出かけていたクロトにとって、それは難しい事ではなかった。
 
高い岩山の上からなら、敵の陣容は丸見え。
聖騎士達もこちらから敵が忍び寄ろうとは思っていまい。
 
こうなればこっちのものだ。
会話から情報を盗むべく、聞き耳を立てながら砦の外壁へと近付いていく。
 
と、巡回の聖騎士の影。
勘付かれそうになり、慌てて壁に張り付いて身を隠す。

危ない所だった。
大手柄を立てる千載一遇のチャンスに、油断が生じていたのかもしれない。

敵兵力を確かめ、報告しに戻る。
そのための情報は、高台からの監視で既に終えている。
 
だが、今、都市連合軍が喉から手が出る程欲しがっている情報……
新任の上級審問官の詳細な情報を持ち帰れば、誰もが認める大手柄となる。
帰郷の許しは確実に得られるだろう。
 
高鳴る心臓を抑えるように、深呼吸をして一歩身を乗り出す。
 
衣装、顔、名前……
この目で、耳で、確かめてやる。
 
斥候として働いてきた運動能力と隠密。
非力でまだ子供と言ってもいい体格だが、そこには自信がある。
この仕事に適性があると断言できる。
 
失敗はしない。
絶対に。
 
 
だが……
 
想定外の事態をも想定するのが斥候の仕事、とは言え……
 
 
こんなモノを、誰が想定し得ようか。
 
 

 
空が、狂った。
 
青とも緑ともつかない、異様な陽光が大地を照らしたかと思うと、その閃光は広大な大地をあまねく包み込み、焼いた。
 
衝撃は無い。
むしろ穏やかな光。
 
追って始まる、強烈な頭痛。
 
それから、全身が軋んだ。
 
身体中が痛む。
細胞と言う細胞を針で刺されるような激痛。
 
叫びながら地面を転がり、ホーリーネーションの歩哨に見つかりはしないかとの心配もあったが、それどころでは無かった。
 
どれだけの時間、そうして悶え苦しみ、転がっていたか。
ようやく立ち上がれるくらい痛みが引いた時には、手遅れだった。
 
見つかった。

ホーリーネーションの騎士達が追ってくる。
 
身体に力が入らない。
 
鍛えた肉体に多少自信もついてきた所だったのに、痛めつけられた身体はまるで別物のように弱々しく、大地を踏みしめる両足は棒切れになったかのようだ。
 
斬られた。

 
走る事を優先した斥候の装備は、防御力を考慮していない。
あっさりと膝と意識が崩れ落ちる。
 
薄れゆく意識の中、担ぎ上げられ、揺られる感覚だけは感じていた。

檻に鍵が掛けられる強い金属音が響く。
 
任務は失敗。
 
どうやら、自分はこのままホーリーネーションの奴隷に落とされるらしい。
 
 
・・・・・・・・
 
 
あれは何だったのか。
 
あの怪現象さえ無ければ、こんな事にはならなかったはずだと、クロトは悔し涙を流した。
 

あの光が、この大地全てを包み込んだ妖しい光が、全ての者に等しく降り注いだとしたら……
なぜ、奴らは走れた。 なぜ、奴らは斬れた。
 
理不尽だ。 あまりに理不尽だ。
どうして、最も大切な瞬間に、こんな不運が襲ってくる……
 
 
・・・・・・・・・
 

戦闘の気配。
 
クロトは霞む意識を振り起こし、慌てて砦の様子を探る。
ここからでも、パラディン達が激しく戦っているという事は分かる。


が、相手が何者なのかがよく分からない。

見慣れた侍の鎧ならこの距離でも分かる。
あれは都市連合の軍隊ではない。
装備は雑多で、動きも統制が取れていない。
かと言って、野盗の類いが聖騎士に勝負を挑むとは思えない。
 
パラディンは、見るからに「格下」の敵部隊に対し、狼狽え、ジリジリと押されているようだ。
 
この変事、仔細を確認し、情報を持ち帰らねばならない。

あの妖光の事も気になるが、今は自身の任務を全うする事が先決だ。
 
監視が応戦のため飛び出していった今がチャンス。

クロトはなんとか震える手で檻の解錠に成功。
 
近くの箱からボロ着を盗み取り、慎重に出口に向かって歩みを進めて行く。

 
外に出れば、もう敵の目から身を隠すのは不可能だ。
一気に走り抜け、なんとか撒いてしまわなければ。

だが、敵は追ってこない。
 
様子が明らかにおかしい。
例え第三者の襲撃があったとして、これは……
 
悲鳴、罵倒、剣戟。
 
戦いの音。
 
その音色が、いつもと違う。
 



わざとらしい聖句も、見下すような宣告も無い。

恐怖に歪む叫び声と、ヤケクソのような狼狽え声。
 
あれは、何だ!?
 
 
 

 
野盗達の肌は、緑色……?!
噂に聞くフォグマンというヤツか?

いや、フォグマンはハイブ族の変種だと聞く。
村の先生から図録入りの本で見せてもらった事もある。
あれはフォグマンではない……
 
あれは……
 
 

za20.jpg



斬られても射られても痛みなど感じていないかのように前進を続ける、異様な一団……
倒した聖騎士の肉を喰らい、口から血を滴らせている、アレは、一体……!?
 
 
 
 

Kenshiプレイ日記 ZA-01:ゾンビ・アポカリプス

 
 
 
 
(前2章の続編ではない新規スタート)
 
使用MOD :Zombie Apocalypse その他、TORI、リビングワールド、等
スタート:指揮官の息子
縛り:ダメージ2倍 その他、作劇上の制限を予定
目的:①故郷への帰還 ②レットとの再会
クロト編、 開幕。