気刊くろみつタイムス

主にゲームプレイ日記。過去記事一気読みは「目次」からどうぞ! ※他ブログからのインポート引っ越し時に改行崩れ&画像消滅が発生しています。

#Kenshi 140:エピローグ

さて、これにてKenshi初プレイ、ほぼバニラ状態での日記は完結です。
 
皮剥ぎ、スケルトン盗賊、食人族系の討伐、等々、まだ手を出していない部分は、今回はあえてやり残しとしてノータッチで行こうかと思います。
味わい尽くしてしまうより、少し知らない部分を残していた方が寂しさが紛れて良いという、「最終回見たくない症候群」のような感傷も……
 
さあ、次はどのMODを入れてプレイしようかなぁ~
TORI MODとリアクティブワールドはまず確定だろ?
あとバッティングしない範囲で、あまりアイテム追加しない系で気分を変えて楽しめるってーと、何があるかなぁ~
 
と、ルンルン気分で楽しく悩みつつ、二週目プレイの準備を始めているワケですが……
その前に、各メンバーの総括的な、「その後」の妄想でもして締めておこうかと。
 
プレイ日記は、前回で完結。
今回はただの二次創作。
妄想エピローグごっこなので、読み飛ばす方はもう、読み飛ばしちゃってください。
 
ここまでお付き合い頂きありがとうございました!
 
コンゴトモヨロシク!
 
 
 

 
 
 
グレートデザートはしばらくの間混乱を続けていたが、やがてシミオンの遺志を継いだ者達……
Kenshi達の活躍により、1つにまとまっていった。
 
南方でスケルトンやフィッシュマンの掃討を終えたクロコ達は、砂漠の民の脅威となりつつあったカニバルとの戦いに赴く。
浮浪忍者やカニバルハンターと共に戦いを終え、北方の平穏を取り戻した頃、モールが1つの情報を持って現れる。
どうやら、ロンゲンの居場所が分かったらしい。
 
ロンゲンはレディ・ツギに案内され、ブリンクから南西に向かって落ち延びたと言う。
クロコとルカを中心とした討伐・捜索隊が組まれ、ティンフィスト達との共同作戦でヴェンジ周辺の捜索が進む。
 
警備スパイダーを破壊し、停止させたはずの麻薬工場は再稼働していた。
スパイダーは数を増し、再攻略は容易くはなかった。
工場を破壊し終えたクロコ達を、ヴェンジレーザーが襲った。
恐ろしい事に、レーザーの照準をある程度コントロールする手段を得て、ロンゲンは、最後の砦「虐待の塔」に籠城していた。
 
その手引きをしていたのは、スワンプの「ビッグボス」こと、賞金首ブルーアイズ。
配下の臓器密売組織ツインブレードに指示を出し、裏ルートで密かにロンゲン達を逃していたのだ。
そこには、再脱獄の後、消息を断っていたブードゥーブラザーズ達だけでなく、「メッメ堂座」に置き忘れられた後に脱獄したスパイダー工場長、更には……理由は不明ながらサザンハイブの兵団が加わり、食料の供給源としてカルト教団までもが組していた。
 
シェク軍部隊を預かり、執念を燃やし、最もこの敵対勢力の洗い出しに尽力したのは、今や「百人衆」の称号を得た「無敵のルカ」その人だった。

この世界を腐らせてきた真の敵の打倒こそ、彼女の悲願。
そのルカを讃え、エサタ女王は彼女に不敗の五忍の称号を与えた。
 
ロンゲンは最強兵器、ジ・アイを手にした。
マシニストやテックハンターに大金を積み、古代兵器の解析をある程度可能としたのは、彼の執念の力と言ってもいい。
 
眼窩に残る衛星の残骸、その解析は既に終わっていた。
ボンクの持つスラルを操る技術、ブルーアイズの持つスパイダーを操る技術、工場長の持つスパイダー製造技術等、それらの情報・技術の取得のためにこそ、気が遠くなるような額の「猫」をつぎ込み、周到な計画を長年影で進めて来た。
その結実。
 
ヴェンジレーザーの被害を減らすため、討伐隊は複数方向から同時に進行。
シェク、反奴隷主義者、浮浪忍者、剣士、傭兵、クラブレイダー、そして……
メッメ堂座を旅立って行ったテックハンター達、これまで命を助けられて来た無名の者達、そんな彼らが集結し、ヴェンジでの決戦に望んだ。
 
真っ先に狙われたのは、ロンゲン達の怨敵、クロコの率いる小さな部隊だった。
ルカは襲い来るレーザーの照射からクロコを庇い、大怪我を負う。
更に、虐待の塔に増設されたハープーンを喰らい、ルカは致命傷を負ってしまう。
 
次に、最大の脅威として、シェクの軍団が狙われた。
女王エサタは、そのフラグメントアックスを盾とし、セトの眼前で大往生を遂げた。
我が戦いぶりを見て学ぶがいい、と、そう言って娘を同道させた結果、女王はその本懐を遂げたのだ。
 
鷲の十字架による弾幕の中を突き進み、同盟軍は四方から押し寄せ、虐待の塔を陥落させる。
 
仲間達、そして同盟軍の力で、ロンゲン打倒は果たされた。
だが、ルカは……
 
彼女は九死に一生を得て、奇跡の回復を見せるが……
戦士としての人生を終える事となってしまった。
 
 
セトは、母の後を継ぎ、新たな女王の座に就いた。

 
 
戦いの功績から、シェクの大臣バヤンはルカを自身の後任とし、引退。
惨めな姿を晒したくないというルカ自身の願いにより、ルカはクロコの下を離れ、アドマグの城で余生を過ごす事となった。
 
そのルカを支えるべく、ミャオもまたメッメ堂座を離れた。

その後、フォグマンとの戦いで名を上げたミャオもまた、百人衆、そして、不敗の五忍の称号を得る事となる。
セト、ルカの命で転戦を続け、オクランの盾を長年守った後、最前線の将ではなく、前線後方、ナルコの誘惑の城主となった。
クロコの密命…… 第二帝国のCPUをナルコの誘惑にて秘匿するというその使命を、生涯掛けて守り通した。
 
ルカは、エサタにとってのバヤンのように、セトの良き相談役としてシェク王国を支え続けた。
立派な女王となったセトの姿を見届けた後、長年戦傷に苦しめられ続けてきた彼女の肉体は限界を迎えた。
 
そして、その生涯の最期に……
バグマスターと戦い、命を落とす事になるのだが、それは、もっとずっと後の話である。
 
 
クロコはまず、最大の脅威として、『反奴隷主義者』の監視を最優先とした。
 
奴隷解放という最大目的を達成した後、新たな町を作り、活動範囲を広げ、度々市井の剣士達と命を奪う規模の乱闘騒ぎを起こしている彼らの動きは、捨て置け無い物があった。
 
そのため、諜報員としてバーンが送り込まれた。

鍛えられた鉄の拳を持つ彼はティンフィスト達と誼みを通づるには適任の人物であり、また、最近「餓死しないから」と言う理由で鍛え上げられてしまった砲手としてのスキルを同盟軍に伝える役割をも担う事となった。
 
実際、第一帝国時代をも知るティンフィストの「格」に対し、対等に物を言える存在は彼らの中にも必要だった。
人の感情…… 有機生命体としての人生に必要なもの…… そう言った機微をティンフィストに教え、伝えるうち、彼らの暴虐的な活動は鳴りを潜めていった。
 
が……
彼の活動限界はもう間近に迫っていた。
 
「バーンの塔」を出て、クロウ達と共に旅をするようになる前から、彼は既に不治の病……AIコア、及びCPUユニットの物理的限界から来る不調に悩まされていた。
彼は、クロコ、ユキ、クロウ、サッドニールに向けてそれぞれ一冊の書を残し……
ルカの死。バグマスターの謎を追い、いずこへかと姿を消した。
 
 
サッドニールは大戦の後、「もう戦わなくていい」と、ブラックデザートシティに帰っていた。

誰にも邪魔されない場所で、ゆっくりと時の流れが過ぎるのを感じる、そんな生活をサッドニールは好んでいた。
 
が、しかし……
あれだけ安らいでいたその暮らしに、今は満足できない。
静か過ぎる生活の中、思い出されるのは、あまりに騒々しすぎた、冒険の日々。
 
そんな時、バーンからの遺書が届いた。
 
『真実を知るに至ったお前しか、ティンフィストの傍らに立てる者はいない』
 
その遺言の真意を、当然サッドニールは理解している。
 
万一の時、ティンフィストを抑えられる者……世界の真実を知り、キャットロンにとってのティンフィストとしての役割を果たせる者が必要なのだ。
 
だが、サッドニールはスプリングの町には向かわない。
彼はバーンを追い、南東へ…… アッシュランドへと向かった。
 
 
 
南方のフィッシュマンは、その殆どが駆逐された。
が、凶暴なサザンハイブとの戦いはその後も続き、南方戦線が安定するまでには長い時間を要した。
 
ロンゲンに利用された挙げ句、サザンクイーンは失われた。
暴走し、より一層凶暴な集団として見境なく旅人を襲うようになったサザンハイブは、以前より原始的、かつ危険な存在に変貌していた。
 
今やフォグマンと化したサザンハイブの脅威に対すべく、クロコ達は南征。
その軍団の最前線には、最強の戦士を目指して戦い続けるビープの姿があった。

 
戦いの中、クロコは気付く。
アグヌとのやり取り同様、狂って金切り声を上げるだけのサザンハイブに対し、ビープが意思疎通を行っている可能性がある事を。
 
「お前、あいつらの言葉が分かるのか?」
「ええ、勿論分かりますよ」
 
聞かれた事が無いから話していなかっただけだ、と軽く笑うビープを問い詰めていくと、驚くべき事が分かった。
 
アグヌが女性人格である事…… ではなく、

アグヌの発している高周波音の帯域が、ある種、ハイブクイーンの出す波長と似ているという……極めて重大な事実を、ビープは説明してみせた。
 
研究が進み、アグヌは自身の出す波長を一定範囲内で調整する事が可能となり、アグヌは新たなクイーンとして、ハイブを束ねる存在となった。
が、相変わらずアグヌは消極的であり、あまり多くの事を意思決定しようとはしない。
実質上、サザンハイブを束ね、操っているのは、彼女……アグヌの夫である、ビープであった。
 
常にクイーンに寄り添い、守り、愛情を捧げ続けたビープは、新たな「ハイブキング」として南方一帯に名を轟かせる事となった。
 
いつだって物語の結末では、最強の戦士が最高の幸せを手にするのだ。
2人は末永く幸せに暮らしましたとさ。
 
 
 
こうして、メッメ堂座「男子部」は、キャット1人を残すのみとなった。

 
正確には、蟹の愛ちゃんもオスではあるが、流石に気心の知れた仲間、と言うワケにはいかない。
彼はクロコに願い出て、1人ガットから旅立っていった。
 
その後、ヴェイン峡谷のキャンプ地「ブルー建具」に酒蔵を立て、「ブラッドラムを駆逐する美味さのサケを完成させてやる」と宣言。
新種の純米酒の開発に成功。現地で大成功を収め、巨大企業体と呼べるレベルにブルー建具を成長させる。
 
谷の護衛に着き、ビークシングと戦っているのは、かつてのスワンプのギャング達。
キャットはまた悪い癖が再発。犯罪組織の手を借り、こっそりと男の夢、ハーレムの建設に勤しみ始める。
後にミウ達に咎められるまで、現地の若い娘達が結構な被害にあったらしく、キャットは晩年を牢獄で過ごす事になった。
 
が、足繁く会いに来てくれる仲間達にも恵まれ、その人生最後の時間は、決して不幸なものではなかったらしい。
 
 
 
 
クロコはガットを真の楽園に造り変えた。
ビークシング生息区と、市街とを区切る「大長壁」を完成させ、安全な海運ルートをも確立。
砂漠と海を結ぶ南東の女王としてその名を轟かせていった。
自らは、王などではなく、「生涯切り込み隊長だ」と公言して憚らず、大戦の後も何かと理由をつけては世界を転戦して回っていた。
 
彼女が不在の間、ガル喰湯の市長として日常業務に忙殺されていたのは、ジャンパーだった。

近接戦闘、砲台射撃、料理、医療、農業、雑用…… 様々な仕事を次々こなして来た彼女は、メッメ堂座の面々に最も信頼される「中間管理職」となっていた。
大戦と「南東」を戦い抜いた主力メンバーの1人である彼女は、その後増えていった新人達の信頼も厚く、名市長として成長していく事となる。
 
その傍らには、彼女の有能な秘書として働くレイの姿が常にあったという。

多忙な日々を送る2人は、常にクロコに対する不満を口にし、「ホーリーネーションの方がまだホワイトだった」と愚痴り、ヒメやトレップから厳しい眼差しを向けられていたという。
 
 
 
ある日、新たな住人でごった返すガル喰湯の町を離れ、ハブ東の谷……メッメ堂座の拠点に、一部のメンバーが戻る事となった。
 
シノビ盗賊団とシェク戦士達とで賑わい、交易拠点として利用されてはいたが、行政権を巡っての争いが絶えず、やはり本来の持ち主がいないと……と言う話になっていたのだ。
初期から谷で暮らしていた面々は、この誘いを受け、これ幸いと転居していった。
 
それほどに、ガットの町は…… いや、ガットの国は、繁栄し、多事多忙となっていた。
 
 
新たに谷の町メッメ堂座の市長となったのは、最古参の1人、スペイドだった。

シノビの後援を得て、ディマク、ブザン、ダストキングをも配下に加え、スペイドは谷を一大都市へと変貌させていく。
 
ハブの町は拡大を続けるメッメ堂座と一体となり、世界の中心とも呼ばれる発展を遂げて行く事になる。
「あの戦陣降臨のクロコが最初に降り立った土地だ」と言う評判が、発展に大きく貢献していたのは言うまでもない。
 
 
谷を守る巨大な塔の頂上には、常に4つの光る目が四方を睨み続けていたと言う。
 
西の守護神、ゲッコー

「ガットはダメだな。育ちにくいからこそグリーンフルーツってヤツは可愛いんだ」と、見張りそっちのけで乾いた菜園に水をやるゲッコーの姿がそこにはあった。
実のところ、のんびり暮らしたかっただけ、との事らしい。
 
 
南の守護神、リーフ

「私が見てないと、すぐゲッコーは餓死しちゃうから」と、彼女もまたこの地で暮らす事を選んだ。
前々から誰にも言えない悩み……蟹が嫌い……と言う深刻な問題を抱えていたため、この話は渡りに船だったようだ。
 
 
北の守護神、ツァウ

美貌を誇る彼女には、様々な大物からの求婚が相次いだが、彼女は何より自身の職責を優先させた。
とは言え…… 彼女はただ単に狙撃の仕事がしたかっただけである。
戦いが終わり、手ずから矢弾の生産をする事も少なくなっていたし、ビークシング保護区と化したガットにはもう彼女の仕事は無かった。
その心の奥底には、未だに活動を続けるパラディン残党を撃つ、という愉悦が燻り続けているのだが……
 
 
東の守護神、イズミ

「監視塔の仕事? やるやる!」と2つ返事で引き受けたのは、退屈な監視業務にかこつけて、こっそり研究に没頭出来るという理由からだった。
テックハンター、及びマシニスト経由でロンゲンの秘匿技術解析が進んだ事から、クロコは技術の開示に消極的になりつつあった。
おおっぴらに研究所を建てて趣味に没頭出来なくなった今、自分だけの塔を持てるというのは彼女にとって理想の職場だったのだ。
 
どうせ、東側はダストとドラゴンニンジャが守ってくれているのだから、監視塔の仕事など無いも同然。
彼女の怠慢を咎める者など、誰もいない。 何せかつての本拠点、安全は確保され、必要な物は全て揃っている。
何より、師匠…… ズーの置き土産である「研究台Ⅵ」が、塔の三階には存在しているのだから……
 
 
 
ミャオ、ルカ、セトがシェク軍の練兵に勤しんでいた頃、スペイド達はある依頼をシェク王国から受けた。
 
大量、かつ高品質の装備一式の製造。
無論、メッメ堂座の谷間の工房に、2人のマイスターが揃って移住していた事から依頼された仕事だ。
 
トレップ、そして、ヒメ。
現代における至高の武具職人たる2人には、各方面からの注文が殺到。
最高品質の装備より、エッジ1、熟練等級で構わないから、とにかく数を用意してくれという依頼ばかりだった。
そんな彼女達がシェクからの超巨大案件を受け入れたのは、王国からの依頼が「時間と費用は問わない。全て傑作、全てエッジ2で」と言う職人魂を刺激する物だったからに他ならない。
 
彼女らの最高の仕事は、シェク王国を大いに満足させるものだった。
シェク王国はその功績に報いるため、彼女らの故郷、旧ホーリーネーション領の生家近くに工房を用意し、2人を一城の主として迎え入れた。
 
トレップは、喜んで転居を承諾。

「オクランの拳」を「オクランの剣」と改名。世界中の剣士達が彼女の鍛えた武器を求めてこの地を訪れる事となる。
無論、彼女がここに居を構えた最大の理由は、「オクラン原理主義者残党の殲滅」のためである。
 
今日もまた、亡き妹の名を刻印した刀が、世界のどこかで敵を討つ。
 
その殆どはフォグマン、カニバル、スキマーの殲滅に用いられているのだが……
(その中に、1人でもパラディンが含まれているのなら)
それが、彼女が武器に託した願い……いや、呪いだ。
 
 
ヒメがオクランの盾に転居したのは、トレップへの対抗心からだった。

本心では美しい衣服の縫製の方が趣味に合っているのだが、彼女が過去ついぞ得られなかった「贅沢な暮らし」を約束された事もあり、旧ホーリーネーション領へと移住する事を承諾。
彼女が古代の文献の中から復古させた「ドレス」なる服装は、世界中の女性達に愛され、トレップを越え、スペイドに勝るとも劣らぬ大富豪へと成り上がっていくのであった。
 
彼女は、その私財の多くを投じ、自身の故郷、そして、トレップの故郷の復興を進めていった。
尊敬を込め、『盾の女王』と呼ばれるようになった後も、「姫とお呼びなさい」と、その一点にはこだわり続けたという。
 
 
 
 
ある日、クロコがメガラプターを担いでガットに帰ってきた。
その日が、市長ジャンパー最後の日であり、最大の反逆の時であった。
 
未だ、最高権力者としての肩書きを持っているのはクロコであり、全責任は最終的に彼女の双肩に掛かっている。
からして、この都市に彼女が存在している今この時を除いて、チャンスは無い。
次の機会など、何年後になるかも分からないのだから。
 
ジャンパー、出奔。
ジャンパー、レイ、スゥ、カト、ミウ、は……
 
ギャリコに引っ越しの大荷物を積み、西へ旅立った。

一堂は一瞬の隙を突き、谷の都市メッメ堂座へと夜逃げしてしまったのだ。
 
カトが夜逃げに同行した理由は単純明快に本人から説明された。

「ダストウィッチ作るなら、やっぱ荒野じゃないとね」
 
料理長のこだわり、熱い職人魂が、彼女を突き動かしていたらしい。
 
が、実際の所…… 本当の目的は別にあったらしく、やがて彼女はスゥ、ミウと共に谷間の都市から姿を消していた。
 
 
再びのスワンプ動乱、姿を消していた友との再会、西方への補給路構築、と、彼女はその後も一貫して仲間達の胃袋を支え続けた。
 
仲間達は口を揃えて言う。
メッメ堂座の戦いを真の意味で根本から支えていたのは、彼女の料理であると。
 
と、同時に、必ず付け加えられる一言がある。
「味はともかく」、と……
 
 
 
スワンプへの旅を一番強く希望していたのは、スゥだった。

 
ズーの家族が見つかったと、キャットから知らせがあったからだ。
 
長い間ズーを相棒として谷で暮らしていたスゥや、仲の良い「同期」だったカトは、いてもたってもいられなくなり、ガットを出発し、スワンプへと旅立ったのだ。
 
それは、誰かさんがいかがわしい目的で人狩りに近い犯罪行為を行っていたが故の発見でもあり、キャットの股間に蹴りを入れに行くための旅でもあった。
 
結果、スワンプで今も続く裏社会の闇を知る事となり、人を斬る事に特化された彼女の刀は、大陸南方に正義の白刃を閃かせる事となるのであった。
 
戦いの後、誘拐組織の名簿を調べ、彼女はある人物が自分の父親である事を知る。
見た目に反し、意外と年を取っていなかった、そのスコーチランダー男性とは……
 
 
 
ミウもまた、スワンプへ戻った。

世界に平和をもたらした軍団の、非戦闘員とは言え、その1人なのだ。
からして、彼女には大きな使命感があった。
 
未だに数を減らす気配が見えない、ブラッドスパイダー、そして、スキンスパイダー、その駆逐である。
そのための前線基地構築のため、誰かが西への備えとしてスワンプに渡り、監督する必要があった。
 
大柄で、容姿がある女と似通っている彼女は、実にスワンプで受けが良かった。
その善人ぶりから「グッド・グリム」などと呼ばれる事さえあった。
 
その彼女が、熱弁を振るい、蜘蛛の根絶を訴えかける。
かつての仲間達の協力もあり、やがてラストスタンド砦への一大補給路が構築され、終わらないスパイダー地獄の真相へと近付いていく一端が開かれた。
 
その際、最もスワンパー達を突き動かす原動力となったのは、ミウの切なる願いではなく……
 
 
 
スワンプを斬った女達。最強のテックハンター。
ユキ&クロウ。
2人の傍らには常に一頭の傷痕だらけのブルがいたと言う。

世界を駆け抜けたこの猛牛には、並々ならぬ「凄み」があった。
 
グリムを貫きし者。
ホーリーネーションを突き崩した槍。
世界の真実を見た獣。
 
無数の異名がその勇猛を讃えている。
 
 
そして、その猛牛の飼い主もまた、有名だ。
ユキは、大戦の終結と同時にメッメ堂座を抜け、テックハンターとなった。

彼女は平和な国を築くより、冒険の旅を続けたかったのだ。
時にシノビとして要人を誅殺し、時に探検家として世界の秘密を暴き出す。
彼女の冒険心は、恩人であるクロコへの忠義を上回っていたのだ。
 
だが、そんな彼女も、クロコ達のピンチの際にはクロウと共にいずこともなく現れ、颯爽と戦場に助太刀に駆けつけたと言う。
 
クロコが王だとすれば、彼女は英雄。
民衆は書籍化された彼女の冒険譚に熱狂し、後の世に多くの物語となって語り継がれる事となる。
 
スワンプで「バグマスターの置き土産」を発見し、サザンハイブの「調律」を成功させ、蜘蛛根絶の目処も付き始めた頃、彼女は再び冒険に旅立ち、その後の消息は分かっていない。
 
 
 
そんなユキの傍らには、常にクロウの姿があった。

共に世界を駆け、命を預けあった相棒。
いや、それだけの言葉では言い表せない絆が、2人の間には存在した。
 
古代遺跡を巡る旅の中、ある太古の伝承を発見した2人は、同じデザインの指輪を常に身につけるようになったと言う。
 
生涯を共にし、風のうわさによると、ハイブに伝わる秘儀の解明に取り組んだ後、二人の間に「子供が生まれた」という話も伝わっている。
 
そのクロウがバーンの手紙を受け取った後、2人はサッドニールの後を追い、アッシュランドへと旅立っていった。
 
ブングルは、その2人の帰りを、今もガル喰湯の町で待ち続けている……
 
 
 
 
クロコは困っていた。
 
まるで身動きが取れない。
それほど、ガル喰湯の町の市長職は忙しく……
いや、それ以上に、国王としての責務が日々の暮らしを圧迫していった。
 
この地に残された仲間の数は少ない。
 
 
ルミは……

カニ談義を交わすと言う、クロコにとって貴重な、心の底から安らげる時間を提供してくれてはいるが……
正直な所、「仲間」と呼べるだけの絆が無く、宮廷の道化師のような役どころに留まっている。
 
いかんせん、クラブレイダーという者は政治にも軍事にも疎く、内政の実務にも向いていない。
彼女はもっぱらカニを使った観光新興に全力を注いでいる。
 
愛を立派に育て上げ……

 
ルミは、愛とメガクラブとの繁殖を成功させ、メガクラブ2世、「ラブクラブ」を誕生させるという功績を残した。
行く行くは、海岸をメガクラブ軍団が闊歩し、風景を一目見るだけで侵略者が戦意を喪失する浜辺を完成させてくれる事だろう。
 
そんな、夢のような光景を作る事が、クロコの精神的支えの1つだった事は間違いない。
 
が、明らかに、クロコはオーバーワークだった。
それが、後のあの選択へと繋がる事にもなった。
 
 
そんな彼女を最後まで支えたのは、セイントだった。

いわゆる「正規メンバー」の中では末期に仲間入りした自分を、実力不足の半端者を、最も大切な戦いに連れて行ってくれた……
その涙ぐんでしまうような感謝の想いが、胸を熱くする誇りが、彼女をずっと支え続けていた。
彼女はクロコに心酔している。敬愛と言ってもいい。
 
刑務所長として働きながらも、彼女はただひたすらに主の帰りを待ち、ジャンパーが職務を投げ出す時に備えていた。
有能美人秘書。 その肩書きが彼女には相応しい。
支え、励まし、叱咤し、時にナギナタを振るってクロコの尻を叩く。
そんな彼女の存在があったればこそ、ガル喰湯はその都市機能を維持出来たのだ。
 
 
キハク?

 
スキナー?

ダメダメ、あの2人は良くも悪くも互いの事しか見えちゃいない。
 

スキナー&キハクは2人で都市の守りを受け持っていたが……
なんでもかんでも2人で優劣を付けるための「勝負」とみなし、そのために過剰な程に犯罪が取り締まられているくらいだ。

「お揃いの足が欲しい」と、クロコに陳情して来た時など、一同で頭を抱えていたものだった。
お前は主君に部下の足を切断しろと言うのか、と、クロコにも呆れられていた。
 
だがしかし、彼女達「両将軍」の存在が、今では立派に国家の屋台骨となっているのは確かだ。
何せ、彼女達2人もまた、あのアッシュランドから生きて帰った英雄なのだから……
 
 
そして……
 
次々と仲間に旅立たれて行ったクロコは、精神的疲労を深めていった。
 
中でも、ルカの死の知らせは、何よりも重く響いていた。
 
あの日、荒野に投げ出され、目に映る物全てに怯えていた自分を……

互いに支え、守り、共に成長していった…… だからこそ、ここまで強くなれた……
 
 

 
そんな、掛け替えのない相棒、ルカ。
その彼女が、戦いに破れ、命を落とした。
 
だと言うのに、自分はこんな所で、日々の雑事に負われ、身動きが取れない……
 
バーンもまた余命幾ばくもなく、キャット達の知らせでは「新たな調律機」の存在は確実との事。
 
事態は急を要する可能性がある。
決断は、当然の結果だった。
 
いつぶりだろうか、剣を手に取るのは……
だのに、埃をかぶってもいなければ、鞘も全く朽ちていない。
気付けば、食料、医薬品、寝袋を詰め込んだ黒いバックパックが卓上に用意されていた。
 
セイントは、静かにただ一言、「ご一緒させて頂きます」と微笑む。
 
後の事は…… そうだな、植田修司にでも任せるか。
あいつと来たら、ユキを守るためパラディンに立ち向かった姿を浮浪忍者達に見初められ、それはそれはもう、四人の妻に囲まれ、毎日もみくちゃにされ、大変な日々を過ごしているらしい。
助けてくれ、ブリスターヒルから出たい、と手紙を寄越して来た程だ。
 
ロンゲンとの戦いでは、彼が野盗を率いて駆けつけてくれなければ、スラルの物量に押し負けていた可能性もあった。
国民受けもそう悪くは無かろう。
 
「飢えた野盗」が国王に……か。 面白いオチじゃないか。
 
 
クロコは旅立つ。 再び、アッシュランドへ。

 
あるいは、ルカが殺されたのは、そのせいかもしれない。
彼女の遺体からは、切り落とされていたらしいから。
 
……切り落としたヤツの片足、その責任を果たすため。
 
サッドニールからの最後の手紙……アッシュランドで待つと記された手紙の最後の一文。
 
「クロコ、お前は第四帝国皇帝となれ」という一文。
 
胸騒ぎがする。
 
ビープとアグヌの研究、そしてユキ達の西方探索から得られた、「虫を操る高周波」の存在。
それが、もし、蜘蛛を操るだけの力に留まらなかったとしたら……?
 
他者と一体化し、肉体を乗り換え、より完全な存在を目指すと言う、バグマスターの伝説。
あの、無数の「歯」の数だけ、英雄の魂があの男の体内に封じ込められているとしたら……?
 
奴が欲しているのは……
 
アッシュランドの奥地で、今何かが起ころうとしている。
 
バーンが、サッドニールが、ユキとクロウが、危ない。
俺が行かずに、誰が行く。
 
クロコは、再び第二帝国の遺跡、その最深部……
軌道エレベーター跡へと乗り込んでいく。
 
 
そして、轟音と閃光が大陸南東部から迸る。
 
眩い光球が、一条の光が、天高く登っていく。
 
バーンも、バグマスターも、クロコも、もう戻っては来ない。
永遠の別れだ。
 
 
サッドニールは、血まみれのユキとクロウを抱え、「世界の果て」のイヨを頼ろうと考える。
 
この2人もまた、知りすぎてしまった。
どこか、ここではないどこかで、2人で静かに暮らしてもらおう。
残してきたディスペンサーユニットの中で、小さな命が2人の帰りを待っている。
 
全ての秘密を背負い、サッドニールは旅立った。
この大陸に残る仲間達に、何も言えないまま……
 
ケルトンは腹の底で音を立てずに笑い、そして、泣く。
 
憂鬱すぎるから…… 大っぴらに笑ったりなんて、出来ない。
こんな世界、こんな時代を残してしまった我々が、未来に希望を託せる時が来るなんて……
そんな日が来るなんて、思ってもみなかった。
 
サッドニールは、笑い…… 泣いた。
 
生まれて初めて、心の底から。
想いを込め…… 大声で、叫んだ。
 
 
 
<完>