戦が始まる……!!
ジソリアンは平和主義者側の連邦についているが、「準」加盟国なため、連邦に参戦義務は無い。
実質2対1。
国外の情勢に興味を失っているパカリ院は、
「ま、時々様子でも見ておくか」
とのん気なものであった。
パカリ的に今盛り上がっているのは、
前回発見した原始文明種族の啓蒙である。
ついこの間まで石の宮殿に済んでいた彼らを、宇宙に引っ張り出すという大成功だ。
新たな国、「ク・バブ」がパカ院の属国の一員として銀河に誕生。
ふむふむ、原始種族を啓蒙するとこういう形になるのか。
早速移民協定&その他もろもろを結ぶ。
砂漠の民なので、惑星の開拓&入植で活躍してくれる事だろう。
さて、そろそろ戦争がどうなってるか確認するか、と様子伺い。
防戦側、ジソリアン。
彼らはやや態度が柔らかく、距離が遠い事もあり、上手く揉めないでやって行けそうな間柄。
一方、攻撃側のスレパノーは…
もうずっと-200以上のまま揺らぐ事の無い、徹底して噛み合わない国家志向。
消えてもらいたいのは、彼らの方だし、ここでジソリアンを食って成長して欲しくはない。
で、どっちが勝っているかを見てみると……
喧嘩をふっかけた側のスレパノー、
まさかのフルボッコである。
スレパノー北の国境から本国方面に向けて、めちゃくちゃ切り込まれている。
敵は僅かな一個艦隊。それなのに、母星まであと三歩の距離まで迫られてしまっているではないか。
スレパノー南側、パカリ院ズの国境には、
いつか争いになった時のために、と建てておいた拠点が存在する。
結晶生命体退治を終えた自国艦隊が、丁度いい位置に着いている。
「これは…… チャンス、では……?」
この宙域に、他国からの請求権は出されていない。
他国にいいように切り取られて養分にされる前に、我が国からも領域を切り取ってしまった方がいいのでは?
南に陣取ったパカ院艦隊の背後からは、ウィジラキ艦隊が迫る。
この様子だと、北と南からの挟撃を受け、スレパノーは滅びる。既に命運は尽きたと見るべきだろう。
どうせ何をやっても仲良くなれない相手だ。
将来の不安の芽を詰むため、ここで我らも動いた方が……
「よし…… やるか」
パカリ研究院、初の戦争参戦である。
「これより、我がパカ院軍は宣戦布告と同時に、スレパノー南方の領域を切り取る!
敵はどうせ長く持たん! 戦いが終わる前にさっさと取れるだけ取って停戦するぞ!
全艦、前進せよ!」
「院長! 敵艦と接触したとの報告が!」
「は?! 早すぎやせんかね? 敵陣は無人だっただろう、どこに湧いて出た?!」
「それが、ですね……」
「あれ? あららら? 敵はウィニング……もとい、ウィジラキ軍???」
「院長、なぜ味方のはずの彼らが我が軍を……」
さあ、外交情勢に興味を失っていたパカリ院、ここでとうとうやらかした!
ウィジラキは味方、スレパノーは前からこっちにキレ続けてる敵、という認識だったため……
ウィジラキとスレパノーが防衛協定を結んでいた事を忘れていたのだ!!!!
「院長…… 北の国境から本国方面に向けて、敵ウィジラキ艦が迫ってます……」
「あちゃー~~ し、仕方ない、交易路パトロール艦隊を所定の位置に付けときなさい」
「あ、背後からパカリ学習院の艦隊が来ますよ」
「連邦組んでる我が分身だからな…… 当然参戦しているか」
「彼ら、敵に向かって突っ込んで行きますよ」
「あーーーもーーーー 仕方ないなぁも~~~~」
せっかくだからと、足並みを揃えてウィジラキ領に踏み込むパカ院タッグ。
戦後も仲良くして行きたいから、請求権は出さない。
「敵艦隊、後続! 戦力値2500!」
「こりゃいかん! こっちは2艦隊合わせて2000程度、拠点に戻っておけ!」
「学習院の艦隊も下がってくれましたね。これで勝てます!」
「学習院艦隊、さらに後退します……」
「あ、待って! だめ! ウチ単独じゃヤバイの!」
街道パトロールを急遽向かわせただけなので、こちらの戦力はこれだけしか無い。
拠点の防備で持ちこたえられるといいが……
・・・・・・・
あれ?
「敵艦隊主力、後退しました」
「敵さん、日和りおったな」
ここで日和ったのが敵の慢心。
時間的猶予のお陰でパトロール隊に戦力補充が進み、後退命令を出していた自軍艦隊も合流が間に合う。
「ククク、敵はさぞ驚いた事だろうな。
まさかさっき戦ったばかりの艦隊がここにいるとは思わなかっただろう」
「まあ、戻す時にルート指定間違えて結晶怪獣の本拠地に突っ込んで、デスルーラしただけですけどね」
「うん…… ちょっと被害デカすぎて凹む……」
そして、こちらがデスルーラしたという事は、
敵もしているという事。
偶発戦闘の際、2個艦隊をぶつけて倒した敵主力艦隊が、本国にデスルーラで飛ばされた後に復帰。
こちらに向かって進撃してくる。
いかんなぁ……
こちらは、基地+連邦艦隊4000+パトロール隊2000
敵は4000
こちらにそこそこの被害が出つつ、相手に甚大な被害がでてしまうだろう。
彼らとの戦いは本意ではない。
停戦までなあなあでやりすごし、軽傷で終わらせたいのだ。
だが、敵は守りを固めたパカリ陣に突っ込み……
双方の被害が軽微なまま、敵は撤退。
心配は杞憂に終わった。
一方その頃、スレパノー領内では……
「あちゃー、敵さん、もう星まで取られてますよ」
「むぅ、ジソリアンに国ごと吸収されるのは困る。もうちょっと早く決断すればよかったか?」
「いやー、その場合、もっと最悪のタイミング……ウチの母星周辺宙域でウィジラキ主力と戦う事になって、酷い事になってましたよ」
「あー、たまたま主力艦隊まとめて結晶生命体退治に行った所に丁度彼らがぶつかったんだったな」
「どうします? 我々も突入して、母星をとっちゃいます?」
「いやー こっちには陸軍がいないからなぁ」
「それでは……」
「うむ、丁度頃合いだ。もういいだろう」
「いやー、間に合ってよかったよかった」
「ウィジラキさんとの喧嘩も軽く済んでよかったですねぇ」
パカリ院、停戦。
我が方が停戦すると同時に、ジソリアンも停戦。
「院長、我々が停戦した後もジソリアンが母星まで攻め込む可能性もあったのでは?」
「・・・・・・・」
「考えてなかったんですね……」
このゲームの仕様がどうなっているのかよく分かっていないが、勝手に同時停戦に至ると思い込んでいた。
その通りになってくれて本当に良かった……
パカ院は余っていた影響値をありったけはたいて、5星系を獲得。
そして、大勝したジソリアンは……
なんと、切り取った部分を属国として独立させてしまった!
切り取ったスレパノ領を譲渡し、パカリ大学院の面積が一気に広がっているが、資源的には美味しくない田舎宙域で、大国に成長できたワケではない。
スレパノー領は、元々の「聖約スレパノー」と「スレパノー同盟」の二つに分裂。
致命傷である。
スレパノー同盟の方は、平和+排他+物質。
狂物質のウチと、平和主義の連中と、双方とそれなりの相性。
上手く緩衝地帯として機能してくれるだろうし、属国化したのだから、ダイレクトにジソリアンの養分になるワケでもない。
これは、ザル戦略で大慌てした割には、なかなか良い結果に終わってくれたのではなかろうか。
ホッと一安心したところで、次回に続く。