魚人島からマスターを救出した遠征隊4名と共に、本拠点へと引き返す途上……

どうしても己を試さずにはいられない、例のアレを発見。
「お前達は固守・防御姿勢で離れて見ていろ!」
お? おお!?

一発で危険な状態になっていた前世でのプレイ時とはまるで違う……
一発20~30程度の被ダメージで、敵の攻撃命中率もかなり低い。
行ける! 案外タイマンで行けるぞコレ!
が、しかし……

スキンスパイダーの乱入で調子よく攻撃を防いでいたのが台無しに。
結局、気絶するまでに与えられたダメージはこの程度。

いつかまた、邪魔の入らないタイマンで戦ってみたいものだ。
そして……

予想外の速さで再戦の機会が訪れた。
モウン周辺エリアで、二匹目のリバイアサンと遭遇。
行ける! やはり行けるぞ!
この調子なら勝利する事も不可能ではない!

と、勢い付いていた、その時……
ふと気が付くと、防御・固守で待機していた遠征隊の方がボッコボコに。

まーたスキンスパイダーかよ……
一度臣下を救いに走った上、さらなるスパイダーの乱入もあり、再度の敗北。


乱入スパイダーの数は前回より多かったけど、削り量は上々。
ステータス80台前半ではこんな所か。
倒し切るにはもう少し修行する必要がありそうだ。
魚人島、カタン、モウン、燃え盛る森、ロット、と経由し……

聖都を完全に覆い隠すサイズに肥大化した本拠点マスターフォースに帰還。

持ち帰ったAIコアで、KLRアームの研究を解禁。

これで、一区切り、だな。
そろそろ…… 頃合いだ。
マスターは、また1人、旅に出る。


避け得ぬ戦い。 運命の地へ……

東からアラックの山岳地帯に入ったため、ルートを見誤る。
水泳速度の出ない身体になってしまったマスターでは、泳いでショートカットする訳にも行くまい。

大きく回り込み、北から西に回り込むルートで再突入。
視界は極めて悪いが、遭遇戦を恐れはしない。

この時のため、サーベルスキルを鍛えておいたのだ。
エッジ3の虫特効デザートサーベルで200ダメージを叩き出し、瞬く間にスキンスパイダーの一群を倒し、被害は僅か。
偶然近くを歩いていた「賞金稼ぎ」と共闘する場面もあった。

こんな悪夢のような領域をたかがスキル30~50で出歩くとは、無茶な野郎だ……
山岳外縁部から、中枢部まで、ここが丁度半分と言った所か。

ここでいいだろう。
持ってきた資材で休憩小屋を建てておこう。
霧に霞むあの山並みの向こうに、ヤツがいる……

ヤツとの戦いまでに、少しでも己を鍛え上げておきたい。
しっかり苦戦はしておきたいのだ。
だから、見知らぬ賞金稼ぎが絶望的な状況の只中にあったとして、それを見捨てる事はしない。


アラック名物、エンドレススパイダー、楽しませてもらおうじゃないか!!
と、大口を叩いていたのもつかの間。
2群を殲滅し終えた時点で、胸部耐久は26。

小屋まで戻って出直しだ。
再出発後も、同様。

再度の出直しを余儀なくされるが……

魔王城の麓に、2つ目の避難小屋の設置を完了するが……
発電コアを一つしか持参していないため、2基目未完成という大ポカもやらかしてしまう。
まあ、ベッドがあるだけでも役には立つか。
そして、三度目の侵攻で、チャンスが到来。

ごく少数のスパイダーとの戦闘のみで、敵本丸への進路がクリアーとなる。
今がチャンスだ! 巡回している群れが戻って来る前に、一気に乗り込むぞ!!
魔王の城の足元で少数の敵を倒し……

城門の番人を撃破。

城内から迎撃に出向いて来たブラッドスパイダーを倒し……

城内一階の敵戦力を掃討。


快調! デザートサーベル作戦は大当たりだったな!
被害は許容範囲。 出直す必要はあるまい。

掃討した一階フロアに休息地点を確保。



寝ている間に殴り起こされるハプニングを挟みつつ、体力を全快まで持っていき……
<バグマスターの玉座 2階>

「……?」
「また、愚かな挑戦者がやって来たか。 どこの馬の骨か知らんが、その生意気な口を二度と……」
「どこの馬の骨かは、見れば分かるだろうさ。 こっちを向いて見るがいい」

「!? ば、バカな…… その顔、は……!!」
「そう、私だ。 バグマスター。 第一文明最後の生き残りよ……」

「言いたい事は分かるさ。『お前は確かに食ったはずだ!』、だろ?」
「そうだ! 今、確かにお前は私の中に存在する! 私は蜘蛛以外の「分体」を作ってなどいない!」
「この箱に、確かにお前の歯が存在する! お前は……一体何なんだ!?」
「本当に、分からないのか? 酒の話もしてやったというのに」
「・・・・・・・・ まさか、お前は…………」

「その割には、随分とお前の存在は…… ああ…… なるほど、そういう事か」
「どういう事かな?」
「貴様、負けたな?」
「…………正解だ」
「どのような技術で時を遡ったかは知らんが、負けて弱くなり、今の私が必要となったのだな?」
「そうだ。 今の私は、フェニックス一世たる自身に加え、ごく僅かな戦士を取り込んだのみ…… 不死者でもなんでもない、非力な人間に過ぎない」
「一つになりに来た、か。 良かろう、食ってやろうではないか」
「そうではない。それでは、意味が無い」
「ふむ…… では、どういう事だ? まさか、お前が私を食おうとでも言うのか?」
「その、まさかよ!!」
「笑止ッ!!」

「フム、良い鎧であるな。 持久戦がお望みのようだが……」

「グッ…… こうでなくては、な…… これだから、いいのだ……」
「分からん…… 何を世迷い言を…… 出直して来るがいい」

マスター…… バグマスターに取り込まれた英雄達の「分体」……
無力な存在に生まれ変わってから、ここまで数々の戦いを経て勝ち得て来た成長も、まるで及ばず。
一太刀も浴びせる事なく、瞬く間に沈む事となった。
この、聖王としての力を失った凡庸な戦士は、既にバグマスター自身の体内に因子として存在する者の劣化コピーでしかない。
バグマスターからして見れば、取り込むだけ無駄。
いやさ、自らの弱体化にも繋がりかねない無駄である。
鍛え直してから食われに来いと、そう言いたいのであろう。


ステータス20の差は、近いようでいて、果てしなく遠い。
いかな熟練の戦士とは言え、「超人」に敵うはずもない。
その、半日後……

「ハハッ! もう一本頼むよ! 師匠!」
「クッ! 貴様、ふざけているのか!?」
「その程度の実力では、何度やっても同じだ! 馬鹿者め!」

その半日後も……

そのまた半日後も……

二人の戦いは果てしなく続いた。

「本来の機能は持っていないだろうに、貴様、何だ? その回復の早さは……」
「ああ…… 俺達の末裔、中々に仕上がっていると思わないか?」
「敗北はしたが、何らかの新たな因子を得たか」
「ああ。 とびっきりのヤツをな」

「お前を倒した者の力…… それは、何だ?」
「そいつは見てのお楽しみ、というヤツだ!」
「フム…… 悪くはない。 が、及第点にも及ばぬ」

「悪いな…… まだまだ、付き合ってもらう、ぞ……」

7度…… 8度…… 敗戦が続く。
が…… しかし……

無為の敗北ばかりではない。
果て無く続く死闘の中、快心の一撃が決まる回数が、ジワリ、ジワリと増えていく。
滞在十日目。

初めて深手を与える。
滞在15日目。


初めて後一手まで迫る。
滞在19日目。
![]()
再び後一手まで迫る。
滞在20日目。

気絶から再戦を挑むも、あと一歩及ばず。
滞在21日目。
バグマスターにダメージの蓄積が残る今がチャンスと、気合を入れ直して勝負を挑む。


が、再び敗退。
滞在22日目。

8時間後、マスターが全快する頃には、バグマスターもほぼ回復。

このまま初期状態まで完全回復される予感。



この連日の戦いで、技量が磨かれたという事だろうか。
あるいは、乱数のご機嫌か。
バグマスター、胸部残り10・下腹部残り43
共に一撃圏内。
そして……



弱い己による、究極の己を越える戦い。 決着。

「さあ、行こうか。 何百年ぶりだ? ここを出るのは?」

なんとしてもこの男の身柄は持ち帰らねばならない。
慎重にスキンスパイダーを迂回しつつ、第二避難小屋へ。

ドアを開けると、驚きの宿泊客が出迎える。

完成しないスケルトンベッドや風車など、建てるのではなかった……
遭遇戦は、僅か3匹。問題なく第一小屋までたどり着く。

後は気楽なものだ。
アドマグとスタックでクラル戦士団の兵達に喝采を受け……


あれこそが、我が帝国のシンボル……
オクラン・プライド。 我が魂の誇り。

やはり、この地にこそ建てねばならなかったのだと、深い満足を得る。

数値の上での成長は僅かではあるが、越えるべき壁を越えた達成感は大きい。
さあ、我が臣民達よ、時は来た。
準備を始めよう。


バグマスターは監獄塔に閉じ込め、トリプルゲートを閉鎖。
マスター自らが監視にあたる。
多くの人員を投入し、祭器の完成を急がせる。


そして…… 完成。

「唯一侵食されぬお前にしか出来ん仕事だ。 よろしく頼む」
「とうとうこの日が来てしまったのですね…… 何だか寂しい気もします」
「なに、私の何かが変わる訳ではないさ」

「なるほどな…… ただ成長が速いだけの個体ではなく、それ以上の……
桁違いの何かを感じる。
キャットロンの言っていた高次エネルギーの干渉にも波形が似ている」

「ああ。 最早私はバグマスターであってバグマスターではない。
むしろ、私は有機体として正常な存在…… 狂う事の無い「ヒト」に進化したのだ」

今の私は、バグの無い、正常な…… ただの『マスター』だ」
「良かろう。
どうやら、キャットロンを倒すには、私の中の無意味な妄執…… バグの修復も必要なようだ。
私は一体化を受け入れる。 私もまた、『マスター』となろう。
フフ…… 何百年ぶりだろうな、この胸の高鳴りは」
「分かるぞ。 何せ、お前ですら決して知り得ぬ未知が待っているのだからな。
お前の辿った未来は、凄いぞ?
記憶の共有、大いに期待していてくれたまえ」
「ああ、ああ…… 楽しみな事だ……」

「諸君! 今日この時まで、よくぞこの無力なマスターに付いてきてくれた!」

「ついに、この時が来た! 今日、この時、私は高らかに宣言する!」

オクラン・プライドこそは、我が誇り! 蘇りし真なる第三帝国……
すなわち、第四帝国時代の始まりである!」





こうして、クロコに破れたバグマスター、その最後の分体であるマスターは、当初よりの悲願を達成した。

残る願いは、後一つ。
約束の地へ……
再び、戻る事だけだ。
続く。