「待ってろ爺さん! すぐに助けてやるからな!」
サッドニールは数え切れない数の敵に囲まれながら、今日もフラグメントアックスを振り回していた。
時を少し戻そう。
前回、死にものぐるいの戦いの果て、なんとか撤退する事に成功した男子チーム……
誰も救えなかった無念を胸に、彼らは再度戦いに向かう準備を始める。
あの時、ポールにくくりつけられていた犠牲者の解錠を試みず、順当に少しずつ敵を撃破して前進していれば、助けられたのだろうか?
各個撃破では前進に時間が掛かりすぎ、結局は食い殺されていただろうか?
結果は神のみぞ知る。
これからも当面、フォグマンを狩り、犠牲者を減らすための戦いを続ける決意を固める5人。
(アグヌ、よく見ると超デカいな……)
さあ、再挑戦だ。
前回の戦いで敵の巣の保有戦力はかなり減ったはず。
残敵を掃討し、全滅させる事を目標に戦っていこう。
と、モングレルの正門から出発した直後の事である。
「逃亡した召使い」の女性が、前方から駆けてくる。
致命傷では無いものの、負傷状況は結構酷く、胸部はマイナス。
早速辻治療で止血する事にするが……
!!
これは……!!
「救出したNPCが、一定確率で安全確保後に仲間に加わりたがる」という、加入イベント!
救出すべく真っ先に飛び込んだ、ポールに括り付けられていた人間は、確か男。
しかも、確かポールから助け出せてはいなかったはず。
では、この助成はいつ助けたのか……
スクショフォルダを確認してみると、確かに彼女らしき姿が確認出来た。
前回記事の画像の中にもしっかりそれらしき姿が映り込んでいるのだが……
死闘の最中、人を担いだフォグマンが通り掛かり、優先してそいつを狙った記憶は確かにある。
だがしかし、この場面、この画像は……
巻き戻す前、ビープが死んだ世界線での出来事のはずなのだ。
何らかの不具合で、巻き戻す前のフラグが、巻き戻した後の世界に受け継がれてしまったのだろうか?
このゲームには、リセットからのロードを挟むと、稀に拠点の状態を別データに引き継いでしまうという不具合もあるらしい。
別キャラ・別ゲームを並行プレイしていると、その影響で拠点が消滅してしまうケースまでもが発生している。
それと似たような事が、加入イベントで発生したのか……??
あの時、とても担いで帰る余裕もなく、諦めてそれっきりにしてしまっていた。
そんな彼女が自力で逃げ切り、運命さえも飛び越え、奇跡的に生き延びた……
こんなに嬉しいことはない。
仲間枠の残り2枠に誰を入れるかはもう決めているが……
(巻き戻しはしたが)ビープ君の犠牲に応えるためにも、これは断れない。
いずれ仲間から外す時が来るとしても…… これはしばらくの間面倒を見てやらねば。
救ったからには、ここで突き放すのも無責任と言うもの。
まさに「名もなきモブ」である彼女には、固有名詞が与えられていない。
霧の中で出会った彼女の名は……
29人目の仲間 「ミスト」 が仲間になった。
ちょっとだけ顔と体型を弄りつつ、せっかくだからと、前から使ってみたかったモブ野盗ヘアーに設定してみる。
酒場で仲間に加わるタイプと違い、救出イベントで仲間に加わるNPCは、一定のスキルを有している。(動画知識)
特に強いスキルを持っている訳ではないが、平均的に基礎能力を持っていて、どう扱うべきか悩ましい……
ひとまずモングレルの店で武装を買い与え、それなりの姿に整える。
モングレル正門前の鉄掘り現場で働かせていれば、敵に絡まれた時も門番が守ってくれるから大丈夫だろう。
ミストを残し、5人は改めてフォグマン狩りに出発する。
で……
敵を半壊させたという思い込みが間違いであったと、早速思い知らされる事になった。
なんだこの数は。
なるほど……
前回戦ったモングレル西の巣に向かう途中で戦闘になったが、襲いかかってくる敵は別の巣の集団だったか。
衛兵が語っていた通り、この町は大量の巣に包囲されているようだ。
見かけただけでも、西に1つ、北に1つ、東に2つ、南に2つ…… もっと存在するのだろうな。
こんな危険地帯を裸同然で歩き回ってないで、モングレルに向かってくれればいいのに……
こいつらは町に向かわず、一体どこに行こうと言うのか。
後を追ってみると……
なるほど、こういう事か。
彼らは仲間の救出に向かっていたのか。
サッドニールで殺気(攻撃タゲ)を飛ばしまくり、敵を引き剥がしつつ……
キャット爺さんで止血。
そのまま解錠し、担ぎ上げ……
よし! 全員引き上げ! 脱出するぞ!
だが、やはり敵の真っ只中ではそう簡単に逃げ切れはしない。
この数なら行けるか……? ここは、戦って切り抜ける!
もうこのまま武術を伸ばしてやるか…… 弓兵=軽装で、武術との相性は悪くない。
ここまでの戦いで、やはり帰還ルート周辺の敵は減っているようだ。
無事実力で切り抜け、モングレルに帰り着く。
うーん、派手にやり合ってますなぁ
モウンと違って、休み休み戦う態勢が整っている衛兵達は鉄壁。負けの目は無いようで一安心。
助け出した男は片足を失っている。
(両手はベッドのポリゴンに埋まっているだけ)
やれやれ、人助けも金が掛かるもんだな……
義足と食料を与え、武器もフォグマンから奪った、多少は性能がマシな棍棒と入れ替えておく。
しかし、これだけ色々やってても、未だに友好度は0のままか。
ここまでのプレイで度々彼らの治療をしてきたが……
衛兵達と違って、治療では数値が動かない勢力なのかなぁ
さあ、モングレル西の巣はほぼ壊滅状態。
戦いの傷を癒やし、もう一度突入だ。
既に周囲に敵はいない。 落ち着いて全員で犠牲者を救出し……
退路を切り開き、モングレルに帰還。
拠点ハウスに寝かせてやると、すぐに元気になり、仲間を求めて走って行った。
まったく、ここでゆっくりしていればいいだろうに、無茶しやがって。
しばらくすると義足の彼(彼女?)も目を覚まし、旅立っていった。
やれやれ、キリがないな、と思いつつも、パトロール&救出作戦を継続。
悲鳴の聞こえる方向へと走り、敵地に突入するが……
そうそう毎回間に合うとは限らない。
既に四肢を失い、死亡した後だった。
怒りをぶつけるように敵を壊滅させ、巣の状態を確認する。
149!? 長居すると危険だ! 今すぐ撤退だ、撤退!
だが、時既に遅し。大量の敵が集まり始めていた。
ビープが気絶。
敵に奪われるより早くキャットが担ぎ上げ、町に戻るべく駆け出して行く。
なんだこの数は……!
彼の健脚なら、また逃げ切ってくれるだろうと思っていたが、今回は運が無かった。
下腹部だけに攻撃が集中。道半ばで倒れてしまった。
拉致されそうになっていたビープをバーンが救出。 担いで走り出すが……
入れ替わりにキャット爺さんが連れて行かれてしまう。
キャットを連れ去った敵追うサッドニール…… その背後には、大量の敵。
敵に追いついた時には、更に大量の敵が加わっていた。
数が多すぎ、思うように動けない中、大剣を振り回しキャットの方へと近付いていくサッドニール。
担ぎ上げた敵をついに切り伏せる。
解放されると同時に、下腹部-8の状態のまま戦い始めるキャット爺さん。
が、この数の敵の中でそんな無茶を続けさせる訳には行かない。
「死にたくなければ走れ、爺さん」
「すまん! 恩に着るぞ!」
「まったく…… スケルトンは食われないとは言え、またこんな役回りか」
キャットを後方に逃し、サッドニールは三桁にもならんとする敵の大群の中に留まる事を選んだ。
ありがとうサッドニール…… また苦労を掛けてしまったなぁ……
拠点ハウスにたどり着き、急いで治療に入るキャットとビープ。
アグヌは敵地で倒れたまま。
残るバーンはビープを町に連れ帰った後、そのまま引き返し……
未だ倒れず戦い続けるサッドニールの元に戻っていた。
綺麗に敵を二分し、二人のスケルトンは無双を続けるが……
まずサッドニールが倒れ、続いてバーンも力尽きる。
このままでは永遠に敵地から動けないのではないか…… そんな心配さえしてしまいそうになる中、このゲームのある仕様に気付く。
以前、偶然グレートホワイトゴリロ戦の時にも発生していた「匍匐前進」のやり方に、ここでようやく気づいたのだ。
倒れた状態で隠密を発動すると、意識を取り戻した後、匍匐前進で倒れたまま移動する事が出来る。
死にかけた敵がズリズリ地面を這っているあの動きは、能動的に自分でも使用できたのか……!
幸い、連中は食うことに夢中だ。 巡回兵が戻ってくる前に、這ったまま少し距離を取ろう。
黄色警戒止まりでなんとか振り切り……
アグヌ、自力脱出に成功!
そうしてアグヌを操作している間に、倒れては起き上がり、延々戦い続けていたサッドニール&バーンの周囲から敵の姿が消えていた。
脱出したアグヌと合流し、モングレルへと撤退を開始する。
その帰り道、駆逐した後の巣に少数のフォグマンが戻っており、また人間が磔にされていたので、これを救出。
よし、彼を担いでモングレルに戻っ……
スケルトンはそう簡単には死なないし、食われる事もない。
だが…… だからと言って、人を守れるとは限らない。
ままならないものだ……
立て続けに重篤な損傷を受けているため、ベッド&スケベッドを追加。
拠点ハウスの機能改善を進める。
これで回転効率はUPするだろう。
また、捕らわれた人を救出すべく、戦いを続け……
生身のキャット&ビープは気絶する前に早めに撤退させつつ、敵を殲滅。
被害者の確保に成功。
……と思ったのも束の間。 この世界は無情である。
なんとか一人は確保できたが、残る一人の救助が難しい。
このまま見捨てるべきなのかと悩んでいると……
気絶していたアグヌが復帰。颯爽と残る一名を救出する。
バーンは先に逃した。 残るアグヌとサッドニールも撤退を開始。
重装のサッドニールと並走していてはいずれ追いつかれる。
アグヌを全力で先に走らせ、またサッドニールはしんがりを務める事になり……
力尽きはしたが、役目は果たした。
アグヌとバーンは無事要救助者をモングレルまで送り届ける事に成功した。
その次の日も……
時に彼らと共闘しながら、救出作戦は続いた。
敵を倒し続け、確実に数を減らしている。
だが、戦いの終わりは一向に見えてこない。
奴らの数は無限大なのだろうか……
救えた命、救えなかった命。 半々か、それ以下か……
時に、ベッドの上で死を迎える者もいた。
彼らは、救われた命を大切にしようとはしない。
必ず、仲間の下へと駆け出していった。
この戦いに、果たして意味はあったのだろうか……
この虚しい戦いに唯一希望があるとすれば、それは彼女……ミストの存在だろう。
って、
*いしのなかにいる*
正門前の鉱石現場で戦闘があったらしく、ミストさんは気絶状態で意思の中にめりこんでしまっていた。
かつぎあげ判定は届かない。
気絶者に反応して次々現れるフォグマンを切り倒し続け、鉄鉱床の前にはどんどん死体が増えていく。
これはこれでフォグマンホイホイ状態で便利ではあるが……
ミストさんは胸部がマイナス値のまま損傷にも回復にも動かない状態。
何をどうしても救助できないため、仕方なくロード時の座標リセット機能を使用する事に。
座標リセットは「セーブ時の画面中心点に全メンバーが集合した状態で始まる」という仕様。
モングレルの仮住まいに全員を転送する訳には行かない。
視点を本拠点の方に移した後、セーブ・ロードを行い……
こうして「奇跡の生還者」ミストは谷の拠点、メッメ堂座に居候する事となったのであった。
尚、ベッドで寝ている人間は座標移動の対象外と言う事を知らなかったため、ビープは一人モングレルに取り残されてしまうのであった……
これは、まだまだ霧の修行を続けろという天の声か……
慌てて男子チームを再びモングレルへと走らせつつ、次回へ続く。